決戦の果て、闇の女王
王城の大広間は、光と闇の魔力が激しくぶつかり合い、かつての荘厳な雰囲気を完全に失っていた。
セレスティアと王。
互いに決定的な一撃を放つ瞬間を待ちながら、静かに睨み合う。
「貴様がどれほど足掻こうとも、この王を超えることなどできぬ!」
王は剣を掲げ、その刃にさらなる聖なる力を宿した。
「――《神威天衝》!」
黄金の光が爆発的に広がり、まるで空間ごとセレスティアを押し潰そうとする。
「そんなもの……私の闇の中では無力よ!」
セレスティアもまた手を掲げ、深淵より漆黒の魔力を引き出す。
「――《奈落の終焉》!」
彼女の周囲に無数の黒炎の刃が生まれ、嵐のように王へと向かっていく。
光と闇の魔力が衝突し、凄まじい轟音と共に大広間の床が砕け散った。
衝撃波が広がり、城の外壁にまで影響を与える。
王は全力で光の障壁を展開するが、黒炎の刃が次々とそれを打ち破っていく。
「ぐっ……!」
ついに、一閃が王の肩を深く裂いた。
「これは……馬鹿な……!」
王が膝をつき、息を荒くする。
彼の鎧は焼け焦げ、かつての威厳は失われていた。
「どうやら、決着がついたようね。」
セレスティアは王に近づきながら冷たく言い放つ。
「貴様……これが……運命だというのか……。」
「いいえ、これはあなたが積み重ねた罪の結果よ。」
彼女は静かに王の前に立ち、漆黒の剣を召喚する。
「これで終わりよ、王。」
刃が振り下ろされようとした、その瞬間。
「セレスティア様……!」
傷ついたルードが必死に立ち上がり、彼女に呼びかけた。
「……!」
セレスティアは動きを止め、ルードを見つめる。
「どうしたの?」
ルードは息を切らしながら、必死の表情で言った。
「このまま王を討てば、あなたは完全に“闇”に呑まれてしまうのではありませんか……?」
その言葉に、セレスティアの表情が揺らぐ。
彼女は今、自分がどこまで“闇”へと踏み込んでしまっているのかを自覚する。
(私は……本当に正しい道を歩んでいるのか?)
復讐のために力を求め、闇の魔術を極めた。
だが、それは本当に自分が望んだ結末なのか。
王はもはや戦う力を失っていた。
ここで殺すことに、どれほどの意味があるのか。
「……。」
セレスティアはゆっくりと刃を下ろした。
「貴様……なぜ止めた……。」
王が低く呻く。
「あなたを殺すことに、もはや意味はないわ。」
セレスティアは冷たく言い放つ。
「あなたは、すでに敗北した。王としての権威も、力も失った。ただの男よ。」
「……!」
王は悔しそうに歯を食いしばる。
「貴様……私は……!」
「もう終わりよ。」
セレスティアは王に背を向けた。
「この国の未来は、私が決める。」
そう言い残し、彼女は歩き出した。
王城の外では、革命を望む者たちが集まり、新たな時代の幕開けを待っていた。
そして、セレスティアはその中心に立つ。
「闇の聖女ではなく――これからは、闇の女王として。」
彼女の新たな戦いが、ここから始まるのだった。