王の決断、最後の障壁
王城の中庭に静寂が訪れた。
リリアの身体が崩れ落ち、彼女の鮮血が白い石畳を染めていく。
戦いは終わった。
セレスティアは深く息を吐きながら、リリアの亡骸を見下ろした。
「……これで、一つ片付いたわね。」
彼女の声には、わずかな哀愁が混じっていた。
かつては共に聖女として讃えられた存在。
それが、今やこうして冷たく横たわるのみ。
「これが……運命だったのかしら。」
しかし、感傷に浸る暇はない。
彼女の復讐は、まだ終わっていないのだから。
ルードが静かに近づき、跪くように一礼した。
「セレスティア様、これよりどう動かれますか?」
「……王を討つわ。」
彼女は目を細め、王城の奥へと目を向ける。
「リリアを失った今、王は焦っているはず。ならば、今こそ仕掛ける時よ。」
「ですが、王の側にはまだ強力な護衛が控えているかと……。」
ルードの言葉に、セレスティアは微笑んだ。
「ええ。でも、それも関係ないわ。」
その時だった。
城の奥から重厚な足音が響く。
黄金の甲冑を身に纏い、王の親衛隊がゆっくりと姿を現した。
「……やはり来たか。」
セレスティアは冷静に彼らを見つめた。
「王の命により、貴様をこの場で討つ。」
親衛隊の隊長が剣を抜き放つ。
その背後には、王の姿があった。
「貴様がまだ生きているとは、実に不愉快だ。」
王は冷たく言い放つ。
「聖女リリアを殺し、今度は我を討とうというのか?」
「ええ、そのつもりよ。」
セレスティアは一歩前へ出た。
「あなたが私を処刑し、この国を好き勝手に操ろうとした報いを受けてもらうわ。」
「ふん、愚か者が。貴様ごときがこの王に刃向かうなど、身の程を知れ。」
王は手を掲げた。
「親衛隊よ、奴を抹殺せよ!」
一斉に動き出す黄金の戦士たち。
セレスティアはわずかに微笑んだ。
「……さあ、最終幕の始まりよ。」
黒炎が、夜空に燃え上がる。