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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第4章 次期城主

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2-22.眷属の仕事

「眷属たちに連れられながら、セイホラン様は街を歩きます。実際には、台車に乗せられて運ぶのですけれど。それは準備会の人たちがやります。他の眷属たちは、それを見守る女性たちを祝福します」

「祝福って、どうやるの?」

「木の枝を持って、それで軽く叩くんです。あと襲いかかりもします」

「襲いかかる!?」


 いきなり出てきた不穏な言葉に、アンリは声を上げた。他のみんなも内心では驚いている。説明するリーサの顔は穏やかなものだけれど。


「神様と子をなした伝説が元になっていますから。眷属である男性に迫られ追い回され抱きつかれると、それが女性への祝福になるんです。将来的には子宝に恵まれる。昔はそれこそ、女性に何をしても良い、みたいな感じだったようです。抱きついて体を触るくらいは平気でやる」

「昔はそうだったのね。今は?」

「さすがに、そんなことをするのは問題です。なので森の木の枝で触れるのを祝福にしています」


 時代に合わせて祭りの形式が変わっているんだな。


「けれど眷属に扮するのは街の男性ですから。恋人や妻には、そういうことをしても良いという慣習が残っています」

「まあ、元からそういう関係ならば構わないわよね」

「あとは、男性が意中の女性に近づいて、今夜ここに来てほしいって誘うこともあるそうです。顔を隠して逢瀬の約束を取り付け、そこで改めて愛を告げるみたいな」

「なんだかロマンチックね! そっか、そういうお祭りなのね! 素敵だわ!」


 素敵なのかなあ。でも、本人同士はドキドキするのかもね。後で会う時は、もちろん眷属の仮面は外すけれど、誘う時は顔を隠しているわけで。

 顔を見せなければ誘いやすいって気持ちもわかる気はする。


 なんとなく、男女がそういう仲になるのを助ける祭りなのはわかった。


「こうして女性への祝福を終えたセイホラン様と眷属たちは、森に戻っていきます。セイホラン様の像は解体されて、森に置かれます。雨風によって朽ちたそれは森に還り、これからの恵みの元になるというわけです」


 城壁の内側に森があるからこそ出来る祭りだな。


「興味深いわね。土着信仰がこういう形で残っている例があるのね」


 学者であるゾーラはさっきから、紙にメモしていた。いずれ研究結果としてまとめて学術院に報告するのだろう。


「お祭りですので、街では屋台がたくさん出ていたりして、盛り上がりますよ。眷属から市民に戻った男性たちも、夜は騒ぎます。愛する女性に会いに行ったりします。そういうお祭りです」

「素敵ね! いいお祭りだわ!」


 リーサがそう説明を締めくくれば、アンリはこれを随分と気に入ったらしい。僕の方を見た。


「ヨナも仮面を被って眷属になって!」

「え?」


 なんでそうなるのさ。


 アンリはなおも目を輝かせていて。


「わたしもヨナに祝福してほしいわ! 子作りとかは早いかもしれないけど! でもヨナなら襲いかかって抱きついてもいいわよ! ねえリーサ! 眷属って、他所から来た子供でもなれるのよね!?」

「ええ。もちろん。みんなのお祭りだから」

「ですって! ヨナ! やって!」

「えー」


 困ってティナたちの方を見る。みんな、ちょっと期待しているようだ。


「よ、良いのではないでしょうか。わたしも少しだけ、ほんの少しだけ、眷属のヨナ様に抱きつかれたいって思いました。少しだけですよ!」

「ヨナくん、あたしの子宝について祝ってくれるかしら? その後あたしを抱いてもいいのよ?」

「それは気が早いです!」


 こいつらは。


 でも、期待されてるなら仕方ない。


「……やってみるかも」

「やった!」

「ありがとうございます、ヨナ様! いっぱい抱きしめていいですよ! というか今からやっても!」

「気が早いわよ、ティナ。でも楽しみね。ヨナがあたしたち四人の中から、誰から抱きしめてくれるのか。楽しみね」

「アタシは別にどうでもいいからな! ……祭りで酒が飲めそうだから、そっちの方が気になる」

「あんたは、それしか考えてないのかしら」

「ふふっ。皆さん、お祭りでは女性も、眷属たちの目を惹くために服装やお化粧に気合いを入れると聞きますよ。皆さんも、おしゃれしてくださいね」

「ですって、キア」

「なんでアタシを見るんだよ」

「あんたのその布地少なすぎる格好、お祭りの時くらいは変えなさいよ」

「いいだろ別に! ちゃんとした服なんだから!」


 女の子たちがワイワイ話している。仲いいよね。


 祭り時は、順番に抱きしめてあげればいいのかな。あ、でも誰からなのが重要なんだっけ。

 最初を誰にするか。一人選ぶなら、それは決まっていた。



「リーサ! 聞いたよ、布と絵の具が届いたって!」

「ジェゾ! はい! さっそくみんなでセイホラン様を完成させましょう!」


 すると、倉庫に男がひとり駆け込んできた。リーサと同じくらいの歳かな。がっしりとした体格で、力が強そうだ。服装は庶民のもの。

 彼の後ろにも若い男女たちが何人もいる。運び出された顔料を溶かしてインクにしていたり、大きな布を広げたりしていた。


 セイホランの像の仕上げをするのだろうな。ジェゾと他の男たちが、像のパーツを外に運び出す。


 そして色とりどりのインクを大きな筆につけて、布やセイホランの顔に塗っていた。


 ジェゾたちはつまり、祭りの準備会の若手なのだろう。セイホラン像を作る主力部隊。


「楽しそう! ねえリーサ、わたしたちも手伝っていいかしら?」

「ええ! もちろん。みんなでやりましょう」

「やったあ! ヨナ行くわよ! そうだ! ヨナの仮面の色塗りもしないとね!」

「待って待って! わかったから!」


 アンリに手を引かれて、セイホランの顔の近くに行く。そして筆で色を乗せていった。


 色とりどりのまだら模様が出来上がっていく。具体的に何を描くとかではなくて、鮮やかな色合いがぐちゃぐちゃに混ざり合っているのがセイホランの姿らしい。像に着せる布も同じだ。

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