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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第3章 三男

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3-23.正しい海賊であるために

 軍は三隻もの船を出して海賊の討伐を試みたが、返り討ちに遭ってしまい船は沈んだ。そして現状、隊長以外の生存者は見つかっていない。

 ここではない別の場所に流れついた者がいる可能性はあるけど、あまり期待できるものではない。


 多くは、重い鎧と共に海の底に沈んでしまった。そして息ができずに死んで、体が完全に朽ち果てるまでその場にとどまり続ける。


 隊長の口から出た海賊討伐の顛末を聞いて、僕たちはしばし無言になった。


「くそっ。なんてことだ。俺が事前に言っておけば。装備は軽くするようにって……」


 部下や仲間を多く失うこととなった隊長は、腹立たしげに己の膝を叩く。


「自分を責めないで。敵の異能が予想より強かっただけ。あなたは悪くない」

「だけど」

「まず、この街の治安管理部隊に報告をするの。同じように流れ着いて助かった仲間がいるかもしれない。その捜索をすること。それからあなたは、コリングの街に急いで戻りなさい。海賊たちは勢いづいている。軍を撃退したからね。それから焦りもしている。街に保管していた略奪品を奪われたことを知ったから、その分を取り返そうとするはず」

「ああ。だから、他の船をさらに襲うということか。活動が活発になる。学者さんの言うとおりだな。対処を急がないと」


 何事も前向きに。彼はそういう人だ。立ち上がり、しっかりとした足取りで街の兵士を探す。

 隊長の報告はすぐにメザクの街の上層部まで届け入れられ、沿岸部に流れ着いた兵がいないかの捜索と、海賊対策が行われることになった。コリングの軍が再度海賊討伐の船を出すならば、メザクが保有する船も戦力として出すという方針となった。


 そして隊長もまた、コリングの街に急いで戻る。軍が所有する馬を貰い、それを走らせた。それを見送った僕たちは、彼が立ち直れそうなことに安堵する。


「これから数日は、僕たちも海岸線を見回ることになるかな。兵士が流れ着いたら、早く見つけなきゃいけないし」

「はい! コリングの兵隊さんたちのために頑張りましょう!」


 それで、助かる命がひとつでもあれば幸いだ。



――――



 軍を撃退したジィネ海賊団は、そのまま拠点の小島へと戻る。そこも位置が把握されている以上、どこかへ移動しなければならないが、それよりも優先させることがある。


「ガルド。先程の件だけど。商人から奪った金品を保管していたというのは本当かしら?」


 船の進行方向とは逆向きに風を吹かせて止めながら、ジィネは尋ねた。ガルドは一瞬、あからさまに顔をしかめた。


「なんのことでしょうな、私も、兵士が言っていた意味がわかりません。不必要な金品は捨てています」

「ええ。ガルドが捨てさせているのよね? それは本当にやっているの?」

「ジィネ様は私の仕事を疑ってらっしゃるのですか?」

「信じたい。けれど、兵士が嘘をつくとは思わない」

「我らを動揺させるための嘘でしょう。海賊はみんな、そういうことをしている。嘘でも言っておけば士気が落ちると考えて、とりあえず言った」

「……そうかもしれないわね。でも、やっぱり疑いは残る。ガルド。次からは、略奪したものを捨てる時はわたしも同行する。自分の目で、ちゃんと海の底に捨てていると確かめたいの」

「それには及びません、船長。わたしが責任をもって廃棄しますので」

「いいえ。海賊団の団長はわたし。海賊団がやることは全て把握しなきゃいけない」

「しかし……」


 確信した。この男はジィネ海賊団を正義の海賊だとは思っていない。普通の海賊のように、私服を肥やすために海賊をやっている。そしてジィネを騙している。

 許せなかった。


 さっきの軍と同じだ。正義のために生かしてはおけない。


 軍が商人のために働いて死ぬのが当然ならば、意地汚いこの男が商人のように儲けていたのならば、やはり死ぬべきだ。


 近くにいた海賊が腰に差していた剣を、ジィネは不意に抜いて、ガルドに斬りかかる。ジィネは剣術においては素人で、ガルドは不意打ちながら咄嗟に一撃を避けた。

 その際に動いた隙を突くように、彼を突風が襲った。大きく体をよろめかせた彼は船の縁にまで追い詰められた。そしてジィネの攻撃が続く。


 踏み込みも浅く、斬撃も甘かったため、ガルドが胴に受けた傷は致命傷には程遠かったが、それでも彼は痛みを感じた。同時に、船の縁を掴む手が緩んだ。


 同時に吹いた風が、ガルドを船の向こうへ追いやった。


 落下の直前のガルドが驚愕の表情を浮かべているのが、ジィネの目に入った。

 突如こちらに斬りかかってきた上に、本気で殺しにかかった。攻撃してからは言葉を交わす暇すらなく、弁明の余地も与えなかった。


 ジィネが自分をそう殺すなど信じられない。そんな顔だった。


 水飛沫を上げて落ちたガルドはもがきながら、こちらに何か呼びかけようとしていた。ジィネは聞くことなく風を起こして船を進める。船にしがみつこうとしていたガルドは、急発進した船体に頭をぶつけて、それきり動かなくなった。海面に、頭と胴の傷から血が流れ出て薄まっていく。


 その様子を、海賊たちも見届けた。彼らにジィネが声を上げる。


「聞いて! ガルドはジィネ海賊団の決まりを破った! 正義の海賊でなきゃならないのに、彼は自分のために財産を蓄えようとした! 許されない行為よ! だから死んだの! あなたたちもよく覚えておいて! ガルドと同じことをしたら、彼と同じ目に遭う! これからは全員で、清く正しい海賊として商人たちと戦いましょう!」


 彼女の言葉を、誰も聞いていなかった。

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