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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第3章 三男

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3-22.海賊と軍

 いわく、街のシンボルと軍を示すシンボルそれぞれが描かれた旗を掲げた船が三隻、こちらに接近しているらしい。既にこちらを捕捉しているのか、真っ直ぐ向かっているという。


「ぐ、軍!?」

「我らも有名になったということです。だから討伐部隊が、この海域を探し回っていたのでしょう。そして見つかった」

「が、ガルド! なんで落ち着いてるの!?」

「ジィネ様。やることは変わりません。軍の船を撃退するのです。沈めてもいいでしょう」

「けど! 軍なんかと戦っても勝てるわけが!」

「いいえ。勝てます。あなたの異能があれば勝てる。さあ、覚悟を決めて!」

「そんな……いいえ、やらないといけないのね」


 このわたしはジィネ海賊団の長。軍がなんだ。商船の護衛だって何度も退けてきた。

 だからわたしだって。


 それに。


「ガルド。軍というのは、商人のために働いているのよね?」

「はい。意地汚い商人が損をしないようにするのが、彼らの仕事。考えてみれば当然です。軍の予算は、元はと言えば商人たちが納める税。軍が商人に逆らえないのは当然です」


 そうだ。奴らは商人の犬だ。その考えに至った途端、体が怒りに震えた。



 軍の船は、こちらとそう変わらない帆船だ。三隻は互いに衝突を避けるように間隔を開けて並んで航行している。既に目視でも見える距離だ。

 その船の周りに風を吹かせた。進行方向に対して、左右から挟み込むような強い風。


 左右の船が、徐々に真ん中の船へと接近していく。衝突を避けようと兵士たちは慌てて行動を取るが、無意味だ。帆船は風を受けて進むもの。それに船を押す風は帆ではなく船体の横面に直接吹かれているから。海面も荒れて大きく波打ち、水飛沫が上がる。


 なにより兵士たちの知識では、この状況に対処できるはずもなかった。

 こんな風が吹くなど自然ではありえないのだから


 船同士がぶつかり、音を立て船体が砕ける。航行が不可能になるほどのダメージには程遠いが、兵士たちは怯んだ様子。大きく揺れる船の上で、立っているのもままならない者が多い。


「その能力をやめろ! お前たちの拠点は把握している! 逃げ場はないぞ!」


 真ん中の船の船首で、兵士たちの指揮官らしき男が声を張り上げていた。


 あの小島のことがバレた? なぜ?


「あいつだ、街に行って、そしてヘマして捕まったんだ」


 ガルドが忌々しげに言い、それが脱走した男のことだとジィネにもすぐに理解できた。

 この場を切り抜けたとしても、場所がバレているなら、いずれそこに乗り込まれる。


「ガルド、どうするの!?」

「ジィネ様落ち着いてください。まずは目の前の敵に集中しないと、拠点は新しく探せばいいのです」

「そ、そうね! とにかくあいつらを倒さないと」


 新しく風を吹かせようとした。しかし向こうの指揮官はなおも続けて。


「略奪品を保管している倉庫も判明した! お前たちが溜め込んだ金も全て押収したぞ! 海賊で随分儲けたようだが、それも水の泡だな!」

「保管……?」


 彼の言っていることが、一瞬よくわからなかった。なのにガルドや他の海賊たちは、一様に悔しそうな顔をした。


 どういうこと? 略奪したものは、最低限の食料と酒に換える以外の分は捨てているとガルドは言ってたのに。海賊たちもそれで納得しているはずなのに。

 だって。ジィネ海賊団は正義の海賊なのに。意地汚い商人から物を奪って捨てる。奪ったもので稼いだら、それこそ商人たちと同じ悪人になってしまうのだから。


 どういうことなの?


「ジィネ様! 今は考えている時ではありません! 奴らを倒さなければ! 捕縛されると縛り首になります!」

「そ、それはそうだけど!」

「考えないで!」


 何が正しくてわからなくなっている。何も考えずにガルドの言うとおりにしていれば安全なのかな? でも、それって正しいのかな?


 考えが乱れて風が弱まった。軍の兵士たちも落ち着きを取り戻し、姿勢を正して背負っていた弓を手に取る。


「構え! 放て!」


 そして海賊船に向けて数十の矢が放たれた。


「っ!」


 考えていれば死ぬ。本能でそう悟ったジィネは矢に向けて風を吹かせる。煽られて空中で失速した矢がボトボトと海に落ちる。


 ジィネは海賊船に追い風を吹かせて突進させた。軍の船はさっきと同じように左右から挟むように波を吹かせて、お互いに側面をぶつけさせる。波がうねり軍の船は大きく揺れて、次の矢を放つ余裕はない様子。

 海賊船が相手の船に激突した。鉄板で補強されている海賊船にダメージはほとんどないが、軍の船の方は船体が大きく砕けた。そのまま、三つ並んだ船の隙間をこじ開けるように海賊船は進む。


 隣接することとなった船同士。兵士と海賊たちの白兵戦が始まった。数的には兵士の方が有利だが、関係ない。


 ジィネが上から吹き下ろすような強風を吹かせる。兵士たちが密集している所へ吹かせれば、彼らは煽られてバランスを崩し倒れてしまう。そこに海賊が襲いかかった。

 隊列を乱された兵士は次々に海賊に斬られていく。助からないだろうなって傷の者も見受けられる。


 不思議と、ジィネは嫌悪感を抱かなかった。死んでしまったけど仕方ない。必要な死なんだ。この場を切り抜けるには殺すしかないんだ。


 そうだ。必要ならば殺していい。それで自分の理想が叶うなら。ジーグンドのようになれるなら。多少の犠牲は仕方ない。


 海賊船から最も離れている敵の船の縁に向けて、風を吹き下ろさせた。その影響で船体が大きく傾く。転覆の恐れすら出てきて、既にしがみつくのに失敗した兵士が海に落ちていくのが見えた。

 鎧を着込んだ兵士は、落ちてしまえば沈むだけ。必死にもがくも無意味で、すぐに海中深くに消えてしまう。


「まずい! 離脱しろ! 退却だ!」


 指揮官である男が指示を出して逃げようとする。逃がすつもりはないけれど。


 海賊船もまた、軍の船から離れていく。そうした方が風に巻き込まれないから。彼らが勝つには、異能者の海賊に必死に食らいついて、犠牲をものともせずに討ち取ろる他になかった。

 逃げていく船たちに向けて風を吹かせた。海は波打ち、風に煽られてて船は大きく傾いていく。三隻とも転覆するのは時間の問題だった。


 兵士たちは必死に何かにしがみついている。その中でひとりだけ、指揮官らしき男は身につけた鎧を急いで脱ぎ捨てていた。


 そうでなければ落ちた瞬間に死が確定するから。まだ冷静な判断だな。直後に彼も海に転落した。


 彼が生き延びられるかはわからない。船は全て転覆して、海賊たちは歓声を上げた。それを聞きながら、ジィネは次の行動について考えていた。


 ガルドの裏切りを忘れたわけではなかった。

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