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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第3章 三男

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3-17.テナンドウス

 やがて兵士が来て男を連行し、僕たちからも事情が聞きたいと言われて施設まで同行した。


 事情聴取の担当となったのは、知り合いの隊長さんだった。彼にあったことを話す。今は公爵家の人間だと名乗りにくい状態だけど、隊長はこちらの立場を理解しているから、丁重な扱いを受けられた。


「お前たちは、よくよく事件に巻き込まれる性質らしいな」

「向こうが絡んできたんですよ。さっきのも、一昨日のも」

「そうか。とにかくご苦労だった。海賊に関しては、こちらもかなり手を焼いている。潜伏場所や、相手の規模を把握すればすぐにでも討伐隊を向かわせる」


 これで、この件はおしまい。街には平和が戻るだろう。


 そうなれば効果の薄い見回りをする意味もなく、パン屋に戻ることにした。開店準備に集中した方がいいだろうから。


 ところが。


「公爵から返事の手紙が来たぜ。さっさとコリングから出ていけってさ」


 ヒラヒラと紙を見せながら、キアが話す。その後ろのゾーラがため息をついた。


「正確には、そろそろテナンドウスが来るから逃げなさい、よ。まだ字が読めないキアじゃなくて、あたしが読んだんだから」

「読めはするぜ! 意味はわかんないけどな!」

「とにかく、そろそろ移動すべきよ」

「わかった。海賊のことは、もう心配いらなくなったから。明日の朝にでもメザクの街まで出発しよう」


 ティナの家族たちにもそのことを伝える。しばしのお別れは寂しいけれど、テナンドウスが王都に戻れば会える。

 彼らはここに残って開店の準備をする。テナンドウスが彼らの顔を把握しているはずがないが、万一のことを考えて視察団が来た時は宿屋なんかに隠れてもらうことにした。



 ささやかな宴を開いてもらった夜が明けた翌朝。僕たち五人はメザクの街に向かう。今まで通り、アンリが乗るもふもふが、四人が乗る荷台を引っ張るという形だ。


 コリングもメザクも沿岸都市で、それらを繋ぐ道も海沿いにある。潮風を感じながらの、ゆっくりした移動。カモメが飛んでる以外に変化に乏しく、少し退屈ではあった。


「公爵様は、うまくテナンドウスをやり過ごせるでしょうか」


 ふと、ティナがつぶやいた。


「大丈夫だと思うよ。王族としても、ガリエル領と本気で揉めるわけにはいかない。それに、僕の師匠だって抜け目のない人だ」

「そうですね。はい、今は公爵を信じましょう」


 途中、いくつかの村と小規模な町を経由してから、僕たちは無事にメザクの街に到着した。


 漁業を主要産業としているこの街は、当然食事も海産物がメイン。生の魚も手軽に楽しめる。


 同じ領内に憎い兄がいることは常に頭の片隅に引っかかるけれど、とりあえずは街で息を潜めることにした。



――――



 ポロソバル子爵による汚職事件の概要は、既に公爵の手によりまとめられて、王族の下に届けられている。


 公爵家の食客であるカルラが地元に一時的に帰った際、幽霊屋敷の件を噂に聞いて独自に調査したところ、地下水路に魔物がいる可能性に思い至った。

 "偶然仲良くなった旅人の冒険者パーティー"と共に子爵家に接触したところ、子爵令息とトラブルになり、和解の交渉のためにシャルロットを呼び出した。しかし子爵の暴走によりふたりは連れ去られてしまう。

 そして冒険者たちが独自に子爵の罪を暴き、屋敷に乗り込んで捕縛した。息子のエイナートは抵抗が激しく死んだ。


 嘘も多いが、概ね真実に基づいている。テナンドウスが信じるかは知らないが、疑う意味もないだろう。彼の興味は子爵家の汚職と、それに気づかなかったコリングの城主の家や公爵家の監督責任なのだから。


 ヨナを隠すための嘘にこだわるとも思えない。


 とにかく、ヨナの存在が露呈することだけは阻止しなければならない。



 テナンドウスたち視察団がやってきた。それをブロン・ガリエル以下公爵家の面々全員が出迎える。


 二十歳になったばかりの、公爵から見ればまだまだ子供だ。けれど幼い頃より利口な子として知られ、王都にある学校を首席で卒業する栄誉も得た。

 実際に頭が切れる男だ。将来的には長男グラドウスを支えることを期待されていたし、今でも次期国王になると見込まれている次男を支えると回りからは見られている。


 そんな彼は、鋭い目を公爵一家に向けた。公爵も臆することなく、にこやかに声をかける。


「ようこそお越しいただきました、テナンドウス殿下。旅でお疲れでしょう。城でもてなしますので、こちらへ」

「いいや。コリングの街に一刻も早く行きたい」

「……そうですか」


 予想をしていなかったわけではない。テナンドウスは、この街で歓待を受けて時間を浪費することを好まないだろう。


「なにか問題があるか? 事件も背任した貴族も、コリングの街のことだ。公爵、確かにあなたの監督責任はある。だがこの街にいても何もわからない」

「ええ。そうですな。では行きましょう」


 何もわからないわけではない。カルラとシャルロットはこの城にいる。ふたりから事情を聞くのは、この城で行うとの事前の取り決めがあった。それを飛ばすと言うなら、公爵家としても好都合だ。コリングには、彼女たちを連れて行かないのだから。

 幼いシャルロットに心労をかけさせるのを避けられる。それに、ヨナのことが露呈する危険がひとつ無くなる。


 離れたところで使用人に混ざって待機していたカルラに頷いて見せる。彼女はシャルロットを伴って城に戻っていった。シャルロットも、明らかにホッとした顔だった。

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