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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第3章 三男

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3-16.彼が海賊

 買ってきたらしい酒を片手に、焼いたトカゲをムシャムシャ食べるキアは、幸せそうだった。本人が満足だったらいいんだけどね。飲み過ぎだけはやめてね。

 そんなキアに、今日も犯罪者を捕まえたことを話す。まだ治安は維持されているけれど、たぶん今後どんどん悪化していくことも。


「そうか。大通りの周りはにぎやかで、悪いことする奴も見当たらなかったけどなー」

「人が多いと悪事はできないからね。今後はどうなるかわからないけど」

「そういうものか。それでどうするんだ? 明日も見回りするのか? そろそろヨナの兄貴が来るんじゃねえか?」

「まだ来ないよ。少なくとも明日は。パン屋の開店準備を手伝いながら、見回りもするべきじゃないかな」

「街の平和にアタシたちで出来ることは、あんまりない気がするけどな。でもまあ、困ってる奴がいれば放っておけないか。わかった。明日は手伝ってやる。ここの掃除も飽きてきたしな」


 トカゲを捕まえたのは、ここを隅々まで掃除した成果物だったのか。二日酔いで一日倒れていたわけじゃないのは立派だ。



 というわけで、翌日もパン屋のために働く。長年幽霊屋敷として放置された結果の汚れや壊れた箇所は、ほぼ綺麗にすることができた。外壁も塗装し直して清潔感ある感じにして、内装も整えた。


 パン窯も注文していたのが届いたらしい。大きなもので大量に焼けて、窯の内部で温度ムラがあまりないものを、お父さんが製造業者の工房まで行って選んだらしい。

 美味しいパンはそういうこだわりから作られるんだな。


 パン屋としての形が出来てきたから、オープンする日も決まってきた。次は宣伝に力を入れるべく、僕とティナとアンリとで街に出る。


 アンリはこの街の住民と、すっかり仲良くなっていた。大通りのお店の前を歩くと、店の人に声をかけられる。返事をしながらパン屋の開店日を伝えると、一気に認知されていく。


「アンリさんのこれ、才能ですね」

「うん。いつ見てもすごいと思う」


 老若男女と一瞬にして友達になれるんだから。


 キアの言ってた通り、街の真ん中を通る大通りには犯罪の影はなかった。街の治安を守ることも忘れてはいない。

もっと人通りの少ない所に行くべきかな。


「スラム街とかでしょうか」

「この街にもあるだろうけど」


 貧民たちが集まるスラム街は、大都市ならばどこにでもあるもの。


 冒険者という職業に就くこともできない人間たち。異国からこの街に来て、なにかの事情で仕事を失い言葉も通じないから何もできなくなった。そんな人もいるらしい。


「そっちは怖いので、避けましょう」

「治安が悪い場所なのは間違いないよ?」

「それはそうなんですけど。悪いのが当たり前な場所にわざわざ行かなくていいじゃないですか。犯罪が起こらない場所で起こるのが良くないわけです。それにヨナ様が危険なのはよくありません。あと怖いので! 怖いので!」

「そっか。わかった」


 ティナが怖がってるなら、無理に行くことはないよね。それに、今はパン屋の宣伝の方が大事だしね。


 代わりに、一昨日行った酒場の辺りへと向かった。朝だから、酒場のほとんどは開いてない。労働者たちは仕事をする時間だから、朝から飲もうなんて考える人間は少ない。

 ゼロではないから、朝呑みを考える人のために開いてる店もなくはない。が、全体的に人通りが少なくて寂しい印象があり、いかにも犯罪が起こりそうな雰囲気があって。


「あ……」


 開いてる酒場を探している様子の男を見つけた。向こうもこちらに気づいて、険しい顔をした。

 一昨日、酒場でやり合った男だ。服は買い直したらしい。今日はひとりのようだ。


「てめぇ! お前のせいで恥かいたぞ!」

「そっか。でも、酒場で暴れたお前が悪い」


 恥っていうのは、服を切られたことだろうか。たぶんそうだと思う。


 それで怒るなら、逆恨みもいいところ。けれど奴は本気で仕返しを考えたらしい。

 今日は腰に剣を差していた。それを抜く。


「許さねぇ許さねぇ許さねぇ! なにが正義の海賊だ! 気に入らない奴ら全員ぶっ殺して金を奪うのが海賊だろうが!」

「海賊?」


 怒りに任せて喚き散らした言葉の内容は聞き捨てならなかった。こいつは何を言ってる?


「ヨナ! あいつ海賊なのよ! なにかの犯罪者だって話してたけど、あいつこそが海賊だったの!」


 アンリが声を上げながら背負っていた弓を手にして構える。僕とティナも剣を抜いた。


「ふたりとも、下がってて。僕が相手するから、隙を見て援護して」

「あの。わたし近衛兵なので、主人を前に出すのはあんまり気が乗らないと言いますか。わたしが前に出た方が」

「いいから。ティナの助けがほしいんだ」

「は、はい!」


 素直に身を引いたティナを見てから、男に向き直る。


「この前、僕にやられたのは覚えてるよね? なのに戦うの? その剣があればそんなに強いの?」

「黙れガキが! 女子供が何人いても関係ねぇ! ぶっ殺してやる! 男には勝てないって教えてやるよ!」


 彼は剣を掲げて襲いかかってきた。僕に直撃する軌道で振り下ろした刃を冷静に見極め、回避する。

 続けて来る攻撃を、真正面からは受けずに自分の剣を当てて軌道を逸らす。そして構えがガラ空きになった瞬間に。


「くらえー!」


 アンリが至近距離から矢を放つ。それは男の肩にぐさりと刺さり、悲鳴をあげさせた。

 男は剣を取り落とし、すかさずティナがそれを蹴って遠くへやり、それを見ながら僕は踏み込んで男の股間を思いっきり蹴り上げた。


「ぎゃっ」


 再びの悲鳴と共に、彼は仰向けに倒れた。彼の喉元に剣を突きつける。


「詳しく教えてくれる? 海賊がどうとか。お前が、最近海を荒らしている海賊なの? 風を操る異能を持ってるって本当? それで船が沈んだって話も聞いたから、重罪だよ。死罪は免れない」

「お、俺じゃない! 風を使うのは船長だ! 俺は言われてやっただけだ! 殺さないでくれ!」


 本当に、風使いの海賊の一員だったんだ。ひとりで街に出て飲もうとしていた理由は不明だけど、街を揺るがしている海賊の手がかりが見つかるなんて。

 これは僥倖だ。治安の悪化を阻止できる。テナンドウスが公爵を追求する材料をひとつ潰せる。


「ヨナ。街の人が兵士を呼んでくれるって」

「わかった。それまでにこいつを縛ろう」


 周りを見れば、街の人たちが何事かとこちらを見つめていた。表通りからは外れているとはいえ、街中で剣を抜いて戦ったわけで。そりゃ目立つし怯える人もいるよな。


 公爵のためにも、僕たちは目立っちゃいけないんだっけ。

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