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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第3章 三男

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3-15.ジィネの演説

 そして今回も、小舟はいつもと変わらない量の食料と酒を持って帰った。出迎えたガルドは上機嫌だったが、話を聞くと顔を険しくした。

 買い出しの何かに失敗したことはわかったが、見たところ普段と何も変わらない。


「ガルド、どうしたの? なにがあったの?」

「いえ。ジィネ様が気にすることではありません」

「教えて。わたしは海賊団の長。知るべきよ」

「……あの三人は、港の酒場で少々飲みすぎたようです。そして他の客に絡んで、負けた。海賊として恥ずべき行為です」

「そうだったの。大変だったわね」


 ガルドの説明に、ジィネはあっさり納得してしまった。他に隠している事があるなどと、夢にも思わなかった。


「それは、勝てば良かったの?」

「勝ったとしても、店が兵士を呼んで捕まるだけでしょう。我々ジィネ海賊団のことも伝わる。この小島のことも。彼らは我々を捕まえるために大挙してやってくることでしょう」

「そう。つまり、喧嘩を売らなければ良かったのね」

「はい。酒場などに寄らず、まっすぐ帰るだけで良かったのです。船員たちに、それを行って聞かせなければ。街で面倒を起こすなと」


 ああ。ガルドも、海賊としての節度をちゃんと持っているんだ。人を殺すことを厭わない悪人だと思っていたけど、違った。


「わかったわ。そのことは、わたしから皆に伝えます」

「いいえジィネ様、それには及びません。そのような雑事は私が」

「わたしは船長です。皆の行動には責任があります。皆を集めてください」


 ガルドはなおも苦い顔をしていたが、ジィネが決めたことには逆らえなかった。


 少しすれば、海賊たちが全員集められる。総勢三十人ほど。全員が男で、若年から初老と呼ばれる範囲の年齢層。そして全員、よく鍛えられた体をしていた。


 この島に女はジィネひとりだけ。そして海賊団の長である彼女に手を出すことはできない。

 海賊たちが欲求不満を募らせていることを、ジィネは知らなかった。


 そんな彼らは地面に座り、木箱の上に立っているジィネに目を向けていた。いきなり何の用だと不満そうな顔を見せている。


 彼らの表情にも気づかないジィネは、海賊団長として演説を始めた。


「わたしたちは正義の海賊なの。狙うのは悪い商人だけ。奪ったものも、自分の物にするわけじゃない。わたしたちは、お金持ちになりたいわけじゃない。正義のために戦っているの。だから他の人の迷惑になることをしてはいけないのよ。わたしたちは正義なんだから。英雄なんだから」


 残念ながら、ジィネに演説の才はなかった。海賊たちは無表情で話を聞き流している。内容に耳を傾けることはない。ジィネは、暴力は駄目だとか自分たちが正義だとか同じ主張を繰り返しているだけ。

 こんな内容でも話すのに必死で、海賊たちの視線が自らの胸元や脚に向いていることに気づきもしなかった。


「そこの三人、立て。酒場で暴れたのはお前たちね。なんてことをしてくれた。正義の海賊に相応しい行為だと思っていたの?」


 演説ごっこの途中、ジィネは港で騒ぎを起こしたという買い出し組を立たせた。そして、お前たちにはジィネ海賊団としての自覚が足らないと叱責した。

 それも、長々と思いつく言葉を並べ立てての、冗長な説教だった。


 大勢の前で人を叱りつけることの意味を、ジィネは理解していなかった。

 恥をかかされることとなった男たちの顔は見る見るうちに険しくなっていき。


「ガタガタうるせぇぞ! 女のくせによ! 俺たちに指図するってのか!?」


怒鳴り声をあげた。


 その瞬間、ジィネの口が止まる。こっちの方が立場は上なのに。何も言い返せなかった。


「こんな島に閉じ込められて! たまにしか街に行けない! なのに酒も飲むなってのか!? 女も抱くなって、そう言いたいのかお前は!?」

「お、女……?」


 この人たちは何を言ってるの? 女って?


 立っていた男がズンズンと近づいてくる。本能的に身の危険を感じたが、恐怖で体が動かなかった。どうして彼は、こんなことを言うのだろう。どうして長であるわたしに怒鳴り散らすのだろう。

 男がジィネに接触する前に、ガルドが割り込んで両者の間に立った。


「気持ちはわからなくはない。だがジィネ様に手を出すことは許さん」


 強い口調で言う。よかった。ガルドが守ってくれた。


 男はそれで納得はしない様子だ。


「だが、この女は何も知らない」

「わかっている。それでも海賊の団長で、船長だ」

「ちっ」


 舌打ちしながら、彼は背を向けてどこかへ行ってしまった。


 脱力してへなへなと座り込んだジィネ。他の海賊たちも、演説は終わったと勝手に判断して解散していく。


「だから言ったのです。私に任せなさいと」


 ガルドに見下されて言われたけれど、何も返事ができなかった。


 その夜、昼間迫ってきた男がいなくなったと報告を受けた。小舟も無くなっていたそうだから、勝手に港まで行ったんだろう。戻ってくるとは思わなかった。



――――



 開店準備中のパン屋に戻る。キアはそろそろ復活してるかな。


「なんだよ。あげないからな。アタシが捕まえたんだからな」


 キアは裏庭で焚き火をしてトカゲを焼いていた。もふもふに見られながら話している。会話してるとは言えない。


「ちょっとキア! もふもふの前で何やってるのよ! 変なもの食べさせないで!」


 気づいたアンリが、即座に両者の間に立ちはだかる。もふもふは、食べようとはしてなかったけれどね。


「食べさせてないぞ! これはアタシが捕まえたんだよ。屋根裏部屋で! お前らにもあげないからな!」

「取らないけど、なんで外で食べるの?」

「家の中はやめてくれって、ティアに言われて。飲食店だから、衛生的にまずいとか、そんな感じで。なんだよまずいって、トカゲは美味いだろ」


 それはティアが正しい。

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― 新着の感想 ―
もうキアが可愛くて可愛くて仕方ない。すごく好きです。
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