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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第3章 三男

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3-12.治安の悪化

 結局その後、キアは飲み続けた。酔って騒ぐようなことはなく、ただただ酔い潰れてテーブルに突っ伏して眠った。


「これ、連れて帰るの大変ね」

「もふもふを連れてくるわ。乗せて帰りましょう」

「往復するのも手間でしょ。あたしが運ぶ。よっと」

「よろけてるじゃない。わたしも手伝うから!」


 ゾーラが背負ってアンリが後ろから支える。ちょうどキアのお尻を掴んで押し上げてる感じだ。

 僕とティナも横から手伝う。四人で、駄目な酔っ払いを運んでいる形だ。


「あの建物の修理を頑張ったのは認めるけどね。やっぱりこの子、お酒を与えちゃ駄目だと思うのよ」

「酔って暴れたりはしなかったけどね」

「暴れなくても、あたしたちが苦労しているんだから」

「うん。それは良くない」


 さっきいた酒場は、街の大通りからは少し外れた場所に建っている。しかし周りにも似たような酒場が立ち並んでいるから賑わっている。酔っ払いたちが、この後は娼館に行こうかとかを遠慮なく話していて。


「治安が悪いですね」

「犯罪がされてないなら、治安はいいのよ」

「それはそうですけれど。さっきの男たちみたいな犯罪者は、この中にもいるかもしれないんですよね?」

「いないかもしれないけどね。大半は、毎日真面目に働いて、こういう時だけ気を緩める、普通の市民だ」


 権力闘争に明け暮れて、自分以外の誰もを見下し、隙あらば蹴落そうとする王族や貴族たちと比べれば、随分と品の良い人たち。


「ティナは何を心配しているのかしら?」

「ヨナ様の安全です! ……それから、公爵家のこと。王族の視察団のことです」

「視察団には、こういう光景は見せられないわよね」


 奴らは、公爵領の治安が悪い方が都合がいいから。


「ま、気にすることはないわ。テナンドウスも、こんな夜の光景は見ないでしょう。夜はお城で晩餐会よ」

「あ。それもそうですね」

「犯罪者を見つけて退治すること自体は、ありだと思うけどね。治安が良くなれば、テナンドウスが指摘することも少なくなる」


 公爵領はまともで、責められるいわれはない。


 それは、公爵家に婿入りする可能性が出てきた僕にも利点があること。


「とりあえず、明日はさっきの犯罪者を探してみない? それで街の治安が良くなれば、少しは公爵家の手伝いができるかも」

「いいですね! やってみましょう!」


 僕たちがこの街に数日間滞在するのは、パン屋の開店準備のためなんだけど。まあいいか。

 街の治安の向上はパン屋の商売繁盛にも繋がる。




 というわけで、翌朝。


「あー。なんだ。頭が痛い……あとなぜか、尻も痛い」


 とても動けそうにないキアを住居部分に置いて、四人で街に出た。ちなみにキアのお尻が痛いのは、昨夜運ぶ際にアンリが強く握るように持ったから。


 普段の褐色からちょっとだけ赤くなった尻をさすりながら、飲むキアは水を飲んでいる。彼女は放置して、まずはギルドに向かった。海賊の増加と、それによる治安悪化の懸念を公爵に手紙で伝えるため。

 馬を持っていてナーズルの街に行ってくれる冒険者はすぐに見つかった。ギルト経由で依頼を出して、行ってもらう。


 それから街に出て、昨日の男たちを探したのだけど。


「いませんね」

「そうだね」

「大きな街だし、簡単に見つかるものではないわ。ゆっくり探しましょう」


 あの三人組は見つからない。そう都合よく出てくるものでもないか。


 ところが、探し続けると成果は出た。


「あそこ! そっちに逃げたわ!」

「任せなさい」


 ゾーラが杖を振れば、逃げている男の足に蔓が絡まって足止め。走っていた勢いは止まらないから、盛大に転んだ。

 この男は空き巣である。昼間、無人になった家に忍び込み、金目のものを盗んで逃げる。買い物に出た奥さんが財布を忘れたとかですぐに戻ってきた所を鉢合わせしたらしい。


 突き飛ばされた奥さんが助けを求めるのを、僕たちが偶然通りかかったというわけ。それで魔法の力で楽々と犯人確保だ。


「この人も、昨日のひったくりと似たような物かしら?」

「商人が海賊に襲われて破産して、盗賊に身をやつしたって? どうかな」


 そんな人間が、そう何人も現れるものだろうか。

 どうやらアンリの方が正しかったらしい。


「本当にすまない。俺を雇っていた船が海賊に襲われて破産して。他に俺を雇うところも見つからず、食うに困ってしまって」

「本当にそうだったんだ」

「あの。船員さん。似たような境遇の方は多いのですか?」

「今は少ない。けどこのまま、海賊が派手に暴れまわるようだったら、増えるだろうな。みんな海に出るのを恐がって、船員に暇を出す船主も出てきたって聞いた」


 これは深刻かもしれない。手を打たなければ、この街の治安はどんどん悪化する。


 海賊を恐れて商人たちが船を出すのをやめれば、船員たちへの給料が払われず、街にも金が入らない。そうなれば船員向けのお店が立ち並ぶこの街の景気にも影響が出る。

 お金が使われないことで、人々は皆貧しくなり、貧困が犯罪を誘発する。


 まずい状況じゃないだろうか。


 昨日のひったくりや、この男は、始まりにすぎない。


「お願いだ……見逃してくれ……病気の母がいるんだ。薬代が必要なんだ!」


 涙ながらに訴える彼に、僕たちは顔を見合わせた。

 残念だけど、見逃すことはできない。


「お兄さん。まずは罪を償って、正々堂々と生きなさい。お母さんのためにもね。事情を話せば兵士たちも優しくしてくれるはずよ」


 男の肩に手を置いてゾーラが声をかければ、彼は泣き崩れた。

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