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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第3章 三男

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3-11.大金はどこから?

 みんな思いは同じだ。だんだんイライラしてきた男を見ていないティナが、さらに僕に話しかけてきて。


「ヨナ様、こんな人と関わるのはやめましょう。馬鹿が伝染ります」

「そんなこと言うものじゃないよ」

「でも、馬鹿と話したくないですし」

「気持ちはわかるけど」


 その態度は、男の癪に触ったらしい。


「なんだと? おい、女ならもっと愛想よくしろ。男を立てろよ。礼儀ってやつを教えてやろうかおい」

「ティナ、横に」

「はい!」


 目の前に立っていたティナが移動したと同時に、僕は立ち上がって男の懐に潜り込み、腹を殴った。


「ごはっ!? てめぇクソガキがよ! おい! お前ら来い!」


 仲間ふたりに声をかけて加勢を要請した。それは受けられなかったけど。


「動けねぇ! これどうなってるんだ!?」

「駄目だ! 助けてくれ! ぎゃっ!?」


 ふたりは椅子に座ったまま動けないでいた。ガタガタと身をよじらせていると、椅子ごと倒れて悲鳴を上げた。まるで椅子が体に張り付いているみたいだ。

 ゾーラが集中してると返事したのは、こっちを見るのに夢中になってた男たちに、椅子から闇の蔓を生やして拘束していたから。


 僕はといえば、目の前の男を倒すべく向き直った。


 見たところ、男は武装していない。けれど戦い慣れているみたいで、拳を握り構えを取っていた。


「ふざけんなよクソガキ! 大人を怒らせたらどうなるか思い知らせてやる!」

「思い知るのはお前だ」


 さっきまで座っていた椅子を掴んで投げる。男は慌てて後ずさりながら両腕で頭を庇った。


 戦い慣れてはいるけど、そこまで強くはないな。想定外のことが起こると隙だらけになる。

 椅子を投げた直後から駆け出していた僕は、再度男の懐に潜って、腹を何度も殴った。くぐもった悲鳴が聞こえてきた。


「あっ。あがっ。ちくしょう……馬鹿にしやがって……」


 意外にタフだな。これだけ殴られても倒れないなんて。


 相手は既にフラフラだ。殴って失神させることは難しくない。けど、男が床にずっと倒れ続けるのは良くないな。店の迷惑だ。

 自主的に退却してもらおう。


 近くのテーブルに、木製のスプーンが置かれていた。手に取ると体が熱くなる感覚。聖剣と化したそれを握って、再度男へと接近した。

 短いスプーン故に扱いは難しい。けれど深く傷つけることもない。


 男の皮膚に届くか届かないかくらいの間合いで数度斬りつける。怪我を負ったとしても軽い切り傷だろう。

 それができるということは、皮膚の上にある服もすっぱりと切れているというわけで。


 酒場の床に、男の着ている服だったものが、はらはらと落ちていく。シャツもズボンも、その下のパンツも。


 裸同然のボロ布を纏ったような形になった男は明らかに動揺して。


「うわあああああ!」


 体を隠す布を求めて周りを見回し、見つからないと悟ると逃げ出した。周りは、なんで服がこんなに切れたのかわからないながらも、横柄な男が醜態を晒したことにクスクスと嘲笑を浴びせていたし。プライド最優先で生きているような男は、それに耐えられないのだろう。


 店から逃げた仲間を、椅子に縛りつけられたふたりは呆然と見ていた。


 僕はそちらにも近づいていく。スプーンは手放し、腰に差していた剣を抜く。直接的な暴力を予感させる動きに、ふたりともガタガタと震えて。

 ちょうどいいタイミングでゾーラが蔓を解除したものだから、解放された男たちは飛び跳ねるように立ち上がり、逃げようとして。


「あ、待って」


 片方の喉に剣を突きつけて、止めた。


「注文した分のお金は払ってから帰って」

「ひいぃっ!?」


 別に怖がらせようとしたわけじゃないけれど、男は悲鳴をあげ、そして服のポケットから金貨を何枚も落とすように出した。十分すぎる金額だ。


 僕が剣を戻せば、彼らは改めて逃げていく。


「うまくいったわね」

「さすがヨナ様です!」


 ゾーラとティナが駆け寄ってきた。落ちた金貨を拾って店員に手渡す。

 その途中、ふと首をかしげて。


「見たところ、そんなに身なりがいい連中じゃなかったわよね。着るものにお金をかけてないというか」

「はい。服装には無頓着ですね。かなり汚れてましたし」


 落ちているのは金貨だけではなく、男の服の切れ端もあった。それを見ても、確かに粗雑な服装だったとわかる。

 そういうものだろう。こういう大衆酒場の客層は、決して裕福な人たちってわけじゃない。


 わからないのが。


「なんでこんなに金貨を持ってたのかしら。しかも無造作にポケットに突っ込んでたわ」

「謎ですね。なんとなくですけれど、真っ当に稼いだお金ではないと思います」

「というと?」

「盗みとかの犯罪ですよ。それでまとまったお金ができたから、ぱーっと飲みに使った」

「そっか」


 具体的になんの犯罪行為かは知らない。推測もできない。


 服の切れ端から磯の香りがしたような気がしたけれど、港町なんだから珍しくもないか。


「追い出すだけじゃなくて、捕まえて兵士に突き出すべきだったかな?」

「そこまでしなくていいんじゃない? 犯罪者かもって思ったのは追い出した後だったし、あの時点ではただの面倒な酔っ払い」

「うん。それもそうだね」


 お店の迷惑になる客を追い払っただけでも、立派なことかな。店員には感謝されたし。それに。


「おーい。ゾーラ。もっと飲もうぜ。店がお礼に、アタシたちの飯代はタダにしてくれるってさ!」

「その分くらいの金貨を、奴ら落としていったからね。けど、飲みすぎは駄目よ?」

「大丈夫大丈夫。これくらいなら酔ったうちに入らないからな! あっはっは!」

「もう酔ってるわね。というかキアは何もしてないのに」

「このままじゃキアさんが迷惑客になってしまいますよ」

「迷惑かけそうになったら、キアの服も切り裂こうか?」

「いいですねヨナ様! 元から痴女みたいな格好ですし、着てても着てなくても変わりませんよ!」

「なんてこと言うんだよ!?」


 酔ってても聞こえていたのか、キアは慌てて自分の体を抱きしめるようにした。


 その感覚があるなら、酔って醜態を晒すことも避けられると思うんだけどなあ。

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