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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第3章 三男

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3-7.故郷の服

 おとなしくなった男は、そのまま街の治安管理の兵士に連行されていった。男を取り押さえていた市民たちも、それぞれの生活に戻る。

 鞄を奪われたらしい女も取り返すことができて、アンリに丁寧にお礼を言ってくれた。


 それから。


「あんたも、あの人と同じ国の生まれかい?」


 こちらにそう声をかける、中年くらいの女がいた。


「いえ。僕も彼女も、この国の生まれです」

「だけど、その格好は」

「そこのお店の店員と仲良くなって買っただけです」

「そうかい。けどあの男は、故郷の服を見ておとなしくなったんだろうねぇ。自分の間違いを恥じた。故郷に残してきた家族を思い出したりしてね」


 ああ。アンリが買った服の国の人だったんだ。


「あの人のこと、知っているんですか?」

「まあね。うちの店の常連だった。若い割には、やり手の商人だったよ。立派な船を持っていて、ここと故郷を行ったり来たりしていた」

「全部過去形ですね」

「それがね。海賊に船を壊されてしまってね」

「海賊……」

「聞いた話だけれど、海が急に荒れだして、船員たちが必死に耐えていた時に海賊船に襲われて、乗り込まれたんだってさ。それだけじゃなくて、風が強くなったせいで船が転覆したらしくて。あの人はなんとか他の船に助けられたけど、他の船員はみんな死んでしまった」

「海賊は?」

「さあ。荷物を奪った後はどこかに行ってしまったらしい。船が転覆したのは、その後だからね」


 あの男はすべて失ってしまった。そして精神的に追い詰められた結果、衝動的に盗みを働いたのだろう。


 こんな人通りの多い場所で他人の鞄を奪っても、すぐに誰かに取り押さえられる。アンリがいなくても、彼は捕まっていたはずだ。

 それほどまでに、冷静な判断ができなくなっていた。


 船が転覆したのは天候のせいだけど、海賊に襲われたために対処が遅れたのなら、やりきれないだろうな。


「最近多いらしんだよ。海賊」

「そうなんですか?」


 まだ話し足りないといった様子で、女は続けた。たぶん、こういう噂が好きな人なんだろう。


「その海賊が来る時は、決まって海が荒れる。波が高くなって空も曇る。天気を操れる海賊だって噂になってるよ」

「天気を操る?」

「だからここ最近は、船も護衛を増やしているってさ。あんたら冒険者だろ。ギルトに行けば、いい仕事見つかるかもさ」


 喋るのに満足したのか、女は行ってしまった。


 天気を操る海賊か。

 そういう異能持ちなのだとしたら、海賊は向いてるだろうな。農家とかの、もっと適している仕事はあるだろうし、都市の統治をしてる貴族たちにも重宝されるだろうから、海賊なんかやってる場合じゃないとも言えるけど。


「海賊って、本当にいるのね」


 港の一角、海と向かい合うように座れるベンチに腰掛けながら、アンリが静かに言った。


 本にもなっているように、海賊は実在する。人が船を作り海に出るようになったのとほぼ同時に、他人の船から略奪を行う悪人たちは登場した。船の歴史と海賊の歴史は殆ど同じ歩みをしている。

 最初は、漁師の成果である魚を奪って自分の成果にしようとするならず者だったらしい。

 やがて船が他の都市や国との交易に使われるようになると、そこに乗っている金品を狙うようになった。


 城で見つけた本みたいに、英雄として伝えられる海賊もいるけど、あれは特殊なケースだ。殆どの海賊は悲劇しか生まない。さっきの男みたいに。


「ねえヨナ。海賊ってどんな人なのかしら。倒すことってできない? それも英雄の役目だと思うの」

「できなくはない、かな。商船に護衛として乗り込んで返り討ちにするとかは、ある」


 運良くというか、運悪く海賊に襲われるとは限らないけど。


「みんな対策はしてるんだよ。街だって、船を用意して兵士を使って近海の警備はしているらしい。けど、あまり沿岸まで行くとさすがに手が回らない。海は広いから」

「わたしたちにできることは?」

「今はない、かな」


 大きな問題になっているらしいことは承知しているとして、僕たちで対処することではない。

 自分たちの問題で手一杯だし、目立つことをするべきではないし。


 結局、僕は英雄ではないから。悪を許さず人々を守るために率先して戦う、ジェイザックみたいにはなれない。


 自分が英雄だと疑いなく信じているアンリが、ちょっと眩しく思えた。


「そっか。そうよね……よし!」


 こんなことでアンリは落ち込んだりはしない。


「とりあえず海賊について勉強するわ! そうしたら、いつか海賊退治に役立つことを知れるかもしれない。今のわたしでも出来ることが見つかるかもしれない」

「うん。そうだね」


 前向きな性格なのはいいことだ。とはいえ、勉強するための方法は。


「ヨナ! 海賊についてもっと教えて!」


 僕に丸投げになってしまうのだけど。学び方を知らないのだから仕方ない。


「いいよ。僕もそこまで詳しくはないけどね。えっと、お城の本にあった海賊の話からしようか。英雄と呼ばれた彼でも、本質は悪人の海賊と同じだから。彼の名前はジーグンドといって――」

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