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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第3章 三男

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3-2.復讐がしたい

 それからゾーラは、口を抑えてくるキアの手をどかせて、しゃがんで僕と目線を合わせた。僕はティナの膝に顔を埋めてるから、目は合わないのだけど。


「あたしの目的は一旦忘れるとしても、ヨナくんとしても今回の婚約に反対したい理由があるんでしょう?」

「理由?」

「ええ。公爵家と婚約を交わして、安全と身分を手に入れる代わりに自由を失う。それで出来なくなる目的があるから、気が乗らない。そうでしょ?」


 僕はもぞもぞと姿勢を変えて、寝転んだままゾーラの方を見る。

 みんなも、僕に視線を向けていた。


 僕の目的。それは一度も変わっていない。


「うん。その通り。僕は家族を殺したい。残りの王族をきっちり殺す。シャルロットの婚約者になれば、それはやりにくい」


 少しの間、時間が止まったように思えた。何を言うべきか迷っているみたいに。


 みんな僕の境遇は知っている。目的もわかっていたはず。

 けど、公爵家に入ることよりも優先することではないと考えているのかな。


 あるいは、止められるなら止めたいと思ってるのかも。不健全な願いなのは、僕もわかってる。


 はぁ、と、ゾーラがため息をついた。


「そうよね。あなたにとっては生まれてからずっと抱いていた憎悪。あなただけじゃない。生みの母も死ぬまで放置された恨みは相当なものよね」


 ゾーラの言葉を、目を閉じて聞く。


「気持ちはわかるわ。だから復讐は果たすべき。けど……ヨナくんがもし、それを忘れて穏やかに生きることを選んだとしても、それが間違いだとは思わないわ」

「うん……」

「公爵家に入ることは、間違いなく幸せなことよ。将来的に、選択肢に入れてもいいと思うわ。復讐をするにしても、その先に行き場があることは大事だから――」


 大事なことを話している。決して僕を否定せず、けれど(おもんばか)ってくれている。親切心から言っていることなのは、よくわかる。


 それは嬉しかったのだけど、途中から話が耳に入らなかった。頭を撫でてくれるティナの手が気持ちよくて、意識が遠のいていった。



――――



「え、ヨナくん寝ちゃった? こういう話しをしてる最中に!?」


 すやすやと寝息をたてたヨナに気づいて、ゾーラは驚きの声を上げる。


「ゾーラのお説教が退屈だったんだなー」

「お説教じゃないわよ! ただ、彼に進むべき道を決めてもらうための助言をしてただけ」

「それが、ヨナには余計なお世話だったんじゃないか? こいつ、復讐を絶対に忘れないぜ?」

「……余計なお世話なのは、あたしだってよくわかってるわよ。けどね、こんな子供が人を殺すことばかり考えてるなんて、そんなの不健全よ。ティナの言い方を真似れば、教育に悪い」

「ま、ゾーラの気持ちもわかるけどな。でもヨナは聞きたくなかった」

「いえ。聞きたくないわけではなかったと思いますよ」


 そう言ったティナは、慈悲深い笑みを浮かべながらヨナの頭を撫で続ける。

 聖母なるものが今の時代に現れれば、こんな姿なのだろうか。


「ヨナ様だって、ゾーラさんの助言はありがたく聞いているはずです。今は……ちょっと疲れていただけですよ。いきなり婚約だなんて、驚くに決まっています。ヨナ様なりに色々考えて、疲れたんでしょう」

「なるほどね。だったらなおさら、婚約の話は受けるべきよ」


 受けると決めてしまえば、あとは悩むことはない。


 常に復讐について考えていることが、ヨナを精神的に追い詰めているのはあるだろう。それも安定した地位を手に入れて、時間が忘れさせるのを待てばいい。

 公爵だって、ヨナが復讐を果たそうとしているのを知っている。そして快く思っていない。婿入りを勧めたのも、それが理由のひとつ。


 ヨナが容易に受け入れはしないことを、ゾーラが一番よくわかっているのだけど。


「なんだよ。ゾーラは公爵のやり方は気に入らないって言ってただろ?」

「ええ。ヨナくんの成長を止める方法については、あたしはしっかり探すわ。それはまた別問題よ。子供には、物騒な考えなんて抱かず、のびのびと過ごしてほしいのよ。出来れば永遠にね」


 ゾーラもまた手を伸ばし、ヨナの頭を撫でた。本当に、気持ちよさそうな寝顔だ。


「最後のがなければゾーラに賛成なんだけどな」

「ええ。ヨナがずっと子供のままなんて、わたしは嫌よ。一緒に旅して冒険しながら大人になりたいわ」


 仲間たちが冷たい目を向けてるけど、気にしないことにしよう。


 すると、ドアがノックされる音が聞こえた。


「失礼します。シャロンです。ヨナ様はいらっしゃいますか?」

「……誰だっけ?」

「シャロン・ガリエルよ。時期当主の嫁。シャルロットのお母さん」

「ああ。そうだった」


 公爵家の人間の名前をいまいち覚えきれてないらしいキアは、足音を立てない歩き方でドアの方へと行き、返事する。


「ごめんな。ヨナ、ちょっと寝てるんだ。疲れているらしくて。起こそうか?」

「まあ。そうなのですか。いいえ、ヨナ様にはお休みになっていただきましょう。ティナさんはいらっしゃいますか?」

「え?」


 まさか自分の名前が出てくるとは思ってなかったティナが驚きの声を上げて、すぐにヨナを起こさないように口を押さえた。

 みんなの注目もティナに集まっている。


「ティナならいるぜ。なんの用事だ?」

「ちょっとお話したくて。お茶会に誘おうかと」

「ティナを?」

「ええ。ヨナ様と一番親しそうだから」


 これは、あれだな。外堀を埋めに来ているってやつだ。


「いいわ。ティナ、行きなさい。あたしも同席するから」

「えー……」


 ティナは、状況がよくわかってなさそうだ。

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