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夕霞たなびく街の噺屋さん  作者: 秋丸よう
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【閑話】大丈夫……大丈夫だから

お久しぶりです!

私自身も頭がこんがらがってきて、かけていませんでした!すみません!

不定期になると思いますが、投稿致しますので、よろしくお願いします!

(ん……ここは?)


 私は真っ暗な暗闇の中にいた。

 何も無い、どこを見ても、黒、黒、黒の世界。

 私はここがどこなのかすぐに理解した。


(うーん。夢の中ですね……早く覚めていただきたいものです)


 早く覚めろと思っていると、一点の光が見えた。何故かその光の方に勝手に体が動いていく。

 そこは見覚えのあるところだった。




***


――パタパタパタ

――ハッハッハッハッ


 お父さんに手を引かれて、私と兄さんは走っていた。


「お父さん、どこに行くの?」

「ん〜? 今よりもずっと自由で楽しいところに行くんだよ〜そこなら好きなものいっぱい食べられるよ」

「ほんと?! やった!」


 お父さんは笑顔だった。でも、目が真剣だった。幼かったころはその真剣な眼差しの中に必死さがあるのが分からなかった。


「見つけたぞ! あの男を捕まえろ! あの方たちには傷1つつけるなよ」


――バタバタバタ


 あっという間に大人たちに囲まれてしまった。じりじりと近づいてくる。

 お父さんは顔色を一切変えることなく、にこにこして答えた。


「あーあ、見つかっちゃったね。僕は逃げませんよ皆様方。でもね……」


 お父さんはポケットの中から護符を取り出し、空に投げた。すると、護符が破れて、私たちを避けるようにして火の粉が空から降り注いだ。


「今のうちに行くよ」


 私たちがお父さんに背中を押されて走り出したとき、


――ビュン


「ぐあっ、つぅ……」


 お父さんの足に矢が刺さっていた。どくどくと血が流れる。見ると、火で燃えながらも、物凄い形相で弓を構えている人がいた。


「お父さん……!」


私たちは進むのをやめて、お父さんに駆け寄ろうとすると、


「来るな! 行くんだ! お父さんは大丈夫だから……ね……お父さんの分まで幸せになってくれ」


 お父さんは痛みに耐えながら、精一杯の大声で叫んだ。兄さんは理解していたのか、涙ぐみながら「行こう」と言って、私の手を握り、走り出した。



 その後はあまり覚えていない。


 気づけば、知らないおばあさんに抱きしめられていた。


 あまり、あとのことは覚えていなかったが、目に焼き付いて離れない情景があった。


 お父さんがほかの大人に取り押さえられている情景だった。その後お父さんがどうなったかは知らない。





 『(さき)……お父さんを置いていかないで……戻っておいで……』


「いや……!」


 朝だった。

 凄い汗だった。

 カーテンの隙間から眩い陽光が差す。私は思わず、目が眩んでしまった。



 血みどろの黄色い目のお父さんが私の足を掴み、くらい水の底に引きずり込む夢。


 久しぶりに見た。最近は全く見なかったのに。

 本当のお父さんはそんなことはしない。そんなことは分かっていた。いや、本当にそうなのか? 本当はお父さんも助けてもらいたかったのでは無いのか? なんであっても私はあのお父さんの手を振り解けない。拒むことは許されないのだ。



 私は一生あの呪縛からは逃れられない。例え、あの場所から解放された今の私でも。


――ピコン!


 私が考え込んでいると、スマホの通知がなった。春翔(はると)さんからだった。


『今日もよろしくお願いします!』


 律儀にバイトのある日は毎日、朝に連絡を入れてくれる。

 春翔さんには言ったことがないが、この連絡は私に今日も頑張ろうという元気をくれる。普通の人は嫌がるかもしれないけど。


 私は春翔さんと奏多(かなた)くんのためなら頑張れる。たかが夢で何をくよくよしているのだろうか。私には守るものがあるではないか。


「春翔さん、ありがとう」


 私はカーテンを開けて、空に向かってそう言った。


「大丈夫……大丈夫だから、いつも通りの八月一日幸で頑張ろう」


 私は自分に言い聞かせるように呟いた。



***


「黄色の目……」


 思わず声に出してしまった。

 春翔さんが連れてきた久遠智也(くおん ともや)という少年……。私は一瞬で私と同じような存在だと気付いてしまった。

 春翔さんが不思議そうな顔でこちらを見る。気づいているのだろう。私が今日、何かおかしい事に。

 前は気付けなかった。私が警戒していると、智也という少年は私の異変に全く気にすることなく、明るく話しかけてきてくれた。そして、私は彼を弟子にする事にした。何故かって? 私と同じ感じがしたからだ。私と同じような体験はさせない。その為には強くならなければならない。


 私は春翔さん達が2階に上がったことを確認して、ぼそりと呟いた。


「大丈夫……大丈夫だから」

読んで頂きありがとうございます!

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