築年数
(どんたけ建物がボロなのか、調べてみっか)
そう思って、休みの日に何気なく百貨店の設備室に足を運んだ。
対応してくれたのは小太りの作業着を着た男。
「ちょっとお聞きしたいんですが……」
この建物の年数や、ガス管の老朽化具合、消防設備の不具合箇所など、色々聞き出した。
「この建物も古いですからねぇ…… 設備も全然更新してないですよ」
縦に走るガス管もいたる所錆びだらけで、直すなら壊した方が早い、とのことだ。
「今は近くに別なデパートもあるし、収益が良いとは限らないみたいです。 だから、オーナーが建て直してまでこの百貨店を残そうとするかは、ちょっと分からないですね」
更に、小声でこんなことも言われた。
「ここの火災報知器や防火戸はまともに作動しないらしいです」
「……それって、法令違反でしょ?」
「そうなんですが、多分、お金かけたくないんですよ」
オーナーは百貨店を取り潰す気満々だ
しかし、ここに入っているテナントは、個性的な味つけのアイスクリームショップ、メンコやベーゴマなど昔ながらの玩具を取り扱う店など、子供のたまり場でもある。
このビルを味気ないオフィスビルに立て直すのは、そういった場を奪うことにもなる。
そういう現状は設備員も分かっているらしい。
「実際、取り壊す話になって、住人と揉めてますからね。 そこから、話は進んでないらしいです」
「ありがとうございます。 助かりました」
色々教えてくれた設備員に礼を言うと、俺は6階の焼き鳥屋へと向かった。
「っつーことで、どっから火が出て燃え広がってもおかしくないらしい」
俺は、レバーと鶏皮を一本ずつ頼んで、運んできたハゲに説明する。
「マジっすか!? 俺はどうすればいいんスか?」
「とにかく、不審者や、最悪火災があったら俺ら3人の誰かがカバーするしかねぇ」
3人のシフトはうまい具合にバラけており、1週間の中で穴はない。
それだけ告げると、お代を払い、今度は駅前の俺はパチンコ屋へと向かった。
さっき連絡のあった、ある人物に会うために。




