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四谷天窓の月  作者: 武上渓
3/10

ー2話



ー四谷2話


カメラや機材はビジネスホテルのフロントに預ける。服もチノパンとチェック柄のシャツから、公式の場に出る為に持っているスーツに着替える。

山手線の上野駅から内回りで行く。まだ4時なので慌てる必要もない。20分程度で高田馬場に着くはずなので、四谷天窓の場所を確認したらBIGBOXで時間を潰せば良い。



車窓は昭和で時間が止まっている。地方はどんどん立て替えが進んで、昭和の風景はほとんど消えかけている。密集と立て替え費用の問題なのか、東京に来ると懐かしさが倍増する。

とりあえず、さかえ通り商店街に入って場所を確認した。

高田馬場の早稲田口に戻る。駅前のBIGBOXに入るとエレベーターで6階に上がる。


タイトーステーションが有る。光治は戦場の絆のプレーヤーだ。日本にいるオフは、その街のゲームセンターでプレイする。ほとんどが、30代から50代の男性だ。オンライン対戦なので、どの街でやっても何も変わらない。筐体の状態はマチマチだが、ここの筐体は悪くなかった。


2ゲームが終わる毎に、筐体を出てターミナルにカードを通す。

「ミリチルさん?」

後ろでカード通しを待っていた30代くらいの男性が言った。

カードを通すとパイロットネームと言うゲーム内の名前が表示される。

「そうですが?君は?」 

男性は笑顔になって握手を求めてきた。

「ドメキリクソウです!先週リボーコロニーで助けて頂きました!」

「あぁ。軍曹だったドメキ?准将になっててビックリしたよ」

「あの頃から良く助けて頂きました」

「上手くなったな」

彼と組んで、6時までプレイして夕飯に9階まで上がった。

ドメキはそのままプレイを続ける。


エレベーターが来ない上に、来たら満員なので、階段を上がる。

サイゼリアで、ミートソーススパとコーンスープ シェフサラダを食べる。

隣の席には、空のコーヒーカップ2つを前に、40代くらいの男性がPCを打っている。


食べ終わっても打ち続けている。

会計して、大きい方のトイレに行きたくなった。

9階は開いておらず、6階のゲームセンターも開いていない。案内を見ると2階しかない。

階段を降り、2階で用を済ます。

柱の横でタブレットを取り出し、四谷天窓の経路を確認する。フト。戦場の絆のカードとトイカなどを入れている小銭入れのようなカードケースが、ズボンのポケットにない事に気付いた。 

数年分のプレイデータを呼び出すカードをなくした。これはまずい。

それよりも、元妻と赤ん坊の春菜と自分が写っている写真が入っていた。

離婚して出ていく時にアルバムから1枚だけ取り出して、紙に包み持っていた。1度も紙を開いた事は無い。だが、どんな戦場にも持って行った。

死ぬ時はそばにいて欲しかったのだ。 

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