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エンドレスフロンティア  作者: 紫音
二章 過去と悪意あるイベント
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第25話 夢

 目に映るのは白い天井だ。

 最初は見慣れなかった真っ白な天井、だけども毎日毎日見ていれば慣れて、厭きてくる。

 厭きたからと言ってなんとかなる物ではないし、どうしようとも思わない。すべてがどうでもいい。

 端的に言ってしまえば、すべてが煩わしかった。このまま消えてしまいたい。

 気づけば、もう何日も何も口にしていないし、そもそも口を開いていない。

 時折看護師さんが私の腕に繋がれている点滴の交換に来る。私はこれで生かされている。

 これを抜けば楽になれるのかな? でも私にはそんな勇気が無かった。

 ああ、臆病者だ。私は臆病者で卑怯者でどうしようもない最低な、━━だ。


「━━━━━━━━━━━━━━━━━━」


 勇気のお母さんは毎日私に会いに来る。とても忙しい筈なのに、それでも私に会いに来る。

 分からない。叔母さんが私に何かを言っている。とても必死そうだ。だけども私には叔母さんの言っている事が分からない。

 違うか、分かりたくない。それだけだ。

 だから私は今日も天井を見上げる。




 嫌な夢を見た。

 なんだろう。ゲーム内で寝ると悪夢を見る事が多い気がする。

 何時だったかの悪夢よりはマシだけど、それでも気持ちの良いものじゃない。

 ウィンドウを出して時間を確認すると朝の6時36分だった。

 朝食の準備もある事だし、皆を起こさないよういつもの装備に着替えて一階に下りると、既に一人起きていた。


「おはようゴードン」


「うむ。おはようなのであるメル」


 ゴードンは木の輪を鑢で削っていた。

 人を外見で判断しちゃいけないのは分かってはいるけど、鍛冶師と言われた方がしっくりくるような外見の彼が彫金師と言われても変な感じだ。


 ゴードンは此方を一瞥すると、なにやらアイテムを二つ出した。


「メル、昨日はご飯美味しかったのである」


「手抜きの物で申し訳なかったんだけどね。流石に材料やフライパンとかが無かったからね。軽く炒めるくらいしかできなかったよ」


「メル、これを」


 近寄ってきたゴードンに二つの物を手渡された。先程取り出した物みたい。


「食事の感謝と、十日間お世話になる事へのお詫び、後はお近づきの印なのである。受け取ってほしいのである」


「いいの?」


「うむ。リズから戦闘スタイルは聞き及んでいたので、それに合わせたのである」


「……ありがとう」


 手渡されたのは精緻な意匠の施されたネックレスとブレスレットだった。




アイテム名 剛腕の愛

等級 ☆6

品質 優良

スロット 7

残りスロット 0


腕力補正 5

頑強補正 3 

耐久値 100/100


発動スキル

【腕力強化 Ⅱ】【脚力強化 Ⅰ】【耐久値減少軽減 Ⅰ】


評価

ゴードンが銀から作り出したブレスレット。脳筋の脳筋による脳筋の為のブレスレットである。




アイテム名 克己のネックレス

等級 ☆7

品質 普通

スロット 7

残りスロット 0


精神補正 9

耐久値 100/100


発動スキル

【魔力回復力上昇 Ⅱ】


評価

ゴードンが銀から作り出したネックレス、MPを底上げする効果がある。




 克己、か。なんて言うか皮肉めいたものを感じるよ。勿論意図した事じゃないだろうけど、装備を貰ったのは嬉しいけど今の私は素直に喜べそうにない。


「ありがとう」


 だから私は完璧にいつもの私を演じてみせた。幸いブレイブは起きてないから気付かれる事もないだろう。


「ここじゃ武器作れないけど、イベント終わったら、武器をプレゼントするね」


 彫金と違って鍛冶は炉と鎚がなければ何もできない。

 すると、ゴードンはいぶかしむように首を捻る。


「もしや、メルは知らないのであるか?」


「?」


「第三の街に携帯用の生産セットが売っているのである。後、この家はリズの指示で炉がある建物を改修したのである」


 携帯用の生産セットって何それ、まったく知らなかった。

 いや、そもそも工房がある私からすれば携帯用のアイテムの必要性が無かったからノーマークだった。

 素材がないから装備を作る事は出来ないけど、リズのお陰で装備の補修は何とかなりそう。


「そうだったんだ。工房を持ってると必要性を感じないけど、イベントの時は有効かも、イベントが終わったら見に行ってみる」


「それがいいのである。武器の件はイベントが終わってから、改めてお願いするのである」


 今回は偶々、炉のある家を押さえてくれたから何とかなるけど、次に同じイベントがあった時に、また炉があるとは限らない。手段は幾つ持っていてもいいだろう。

 ゴードンと別れて台所へ向かうと昨日のドロップした猪の肉と茸の炒め物を作る。しかし十日間もこんな食事ではすぐに厭きてしまうだろうし、作り甲斐もない。穀物系の素材が欲しいところだ。米とは言わないけど、せめて小麦は欲しい。




 朝食を作り終えた私は一人で森へと出た。

 昨日は西の方へ行ったので今日は南の方へと足を伸ばしてみる。

 朝早いとはいえ、ちらほらプレイヤーの姿が見えるのでドゥーガを出す事はせず、自分の足で木々を飛び移って移動していく。

 全力で一時間程走っただろうか、一際大きな大樹の下でプレイヤー達が言い争い、いや、片方の集団がもう片方の集団に文句を言っている感じだ。


 あら、よく見たら文句を言われている方の集団にシェスカの姿があった。

 流石に遠すぎて何を言っているのか分からない。もう少し近付いてみるか。

 茂みの裏に隠れて事の行方を見守る。


「だから、ふざけるなって言ってるんだよ。ここのボスは俺達【ラグナロク】が目をつけてたんだぞ!! それを横から掠め取りやがって!!」


「ふざけてるのはそっちでしょう。私達がここに来た時には貴方達はいなかったじゃない。横取りもくそもないでしょう!!」


 あ、うん。今のやり取りだけでおおよそは分かった。

 しかし、リズが言ってた気を付けなくちゃいけない三大ギルドの一つを目にするとは思わなかった。

 さて、シェスカはどうする気なのかな?


 名前の知られてるシェスカが黙っているのを良い事に調子づいていく【ラグナロク】の連中。

 ドロップアイテムを渡せ等と要求を出してくる。

 そこでようやくため息をもらすと、シェスカは一本の木の前に行くと、手甲に包まれた左の裏拳で木を薙ぎ倒した。


「私少々疲れているのかもしれませんわね、お話にもならない事が聞こえた気がしたのですが……、今、なんて仰ったのかもう一度言って頂いても?」


 満面の笑みを浮かべてはいるけど、目は笑っていなかった。

 一度目は見逃してやる、だけども次同じような事を言ってみろ? 挽き肉にすんぞコラァ!! 彼女の目はそう語っている。


 並々ならぬ迫力を感じたのだろう。先程までキャンキャンと囀ずっていた連中はすっかりと勢いを削がれ、覚えていろと捨てゼリフを残して逃げていった。

 あの連中の根性の無さに呆れればいいのか、一回の行動と一睨みでやる気を削いだシェスカに感心すればいいのか、どっちなのかね?

 ま、もう隠れてる意味もないし出ていくとしようか。


「あ、メルさん!!」


「お疲れ様シェスカ」


 いち早く私に気付いた彼女は私の方へと駆け、いや、抱き付いて、いや、抱き締めてきた。


「見てらしたんですね?」


「偶々通り掛かってね。何かあれば助けようと隠れてた」


 そう言うとシェスカは嬉しそうに笑った。


 その後、開放してもらってから何があったのか聞くと、やっぱり予想通り、ボスを倒したら難癖をつけられていたらしい。


「メルさんは廃都に転移したんですね。私達は川辺に出ましたわ」


「そうだったんだ。この後どうするの?」


「廃都に向かうつもりですわ。【アマデウス】は各自の自由で行動するようにザックさんから通信が来てますから、各々自由にやっているでしょう」


 ここにいる三人はシェスカについていく事を選んだメンバーのようだ。


「メルさんはこの後どうするおつもりで?」


「うーん。出来るだけ探索して小麦とか見付けたいところかな」


 あんな簡単なものしか作れないのも、ストレスが溜まる。どうせ作るなら少しはちゃんとしたものを作りたい。

 その為には小麦は欲しいんだけど、こう木々が多い中では小麦は見つからないだろう。

 そう思っていたんだけど、意外なところで朗報が聞けた。


「メルさん。これでよろしいですか?」


 シェスカが取り出したのは金色の穂がついた小麦だ。


「シェスカ!! これどこにあったの!?」


 彼女の肩を掴んで問い詰めると。


「え、あの、こ、この森の入口に沢山なっていましたわ」


 こうしちゃいられない、さっそく小麦を取りに行って、ブレイブに製粉させてる間に私はフライパンを作らなきゃ。

 すぐさま駆け出そうとした私の手をシェスカが掴む。


「メルさん待ってくださいまし、私が案内しますわ」


「私は助かるけど、いいの?」


 シェスカではなく、他の三人に向かって聞くと、三人は一様に首肯く。


「皆さんは食べられそうなものを取りつつ、廃都に向かってくださいまし、私もメルさんを案内した後廃都に向いますわ」


「了解」


「わかりました」


「ヤー」


 彼女達を見送ってから私達も小麦もくてきちへと向かった。


この物語で最強の人は勇気の母親ですので、タグに主人公最強はつけません。


次の更新は明後日以降になります。

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