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銀の城は心の奥に  作者: X


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29/29

29話

 アーネスは剣を地面に投げ捨て、両手を上げて降伏のポーズを取った。

 

「拘束しろ!」

 

 兵士の一人がアーネスに手枷を掛け、他の兵士二人が彼の腰を掴み、ゆっくりと王城内部へ連行していく。

 

「…アーネス……」

 

 セーレはその様子を「ちらり」と確認したが、大量の兵士を前に「何もできない」と諦める。そして、気を取り直して前を見据え、公園の噴水へと向かった。

 そこには二人の人影が立っていた。

 

「セーレ、どうしたんだ?」

「セーレ、何があったんですか?」

 

 マークとビィシャアが近づこうとする。

 

「ごめんなさい。貴方たちを巻き込むわけにはいかない。今こそ自由を。Follow me, pig!」

 

 セーレは二人に洗脳を掛け、「満月亭の宿泊所へ戻れ」と指示した。二人は意志とは無関係に足を進め始める。

 

「どうしてだよ……」

「足が勝手に……」

 

 二人は商業地区の「満月亭」へ向かう道を進んでいった。

 

「お兄ちゃん!」

 

 噴水のそばには、腰を強打して動けなくなっている兄ニースの姿があった。

 

 (この様子では、自発的に歩くのは無理かもしれない。でも時間がないの。ごめんね、お兄ちゃん)

 

 セーレは気絶する兄に自分の黒マントを被せ、さらにその端を破って自身の髪を隠した。そして洗脳の力を使い、兄を操ることで移動を始めた。

 

「行こう、あの場所へ」


◆◇◆◇


 セーレは兄を連れ、行政地区から商業地区にある「下水の排水口」へ向かった。

 そこは王城で神器を奪取した際にも使った場所で、人の寄りつかない隠れ場所だった。

 

「この場所なら見つからない」

 

 排水口は直径5mほどで、中心に幅1mの水路があり、水が「ちょろちょろ」と流れている。高さはおよそ2.5mで、この暗い空間が2kmほど続いていた。セーレはその通路に兄を寝かせ、身を寄せ合うように座った。

 

「お兄ちゃん、こんなに痩せているなんて……」

 

 セーレの脳裏に、兄との思い出が蘇る。


◆◇◆◇


「どこに行くの、お兄ちゃん?」

「学問所の図書館だよ」

 

 セーレはソファに寝そべりながら兄に問いかけた。

 

「何を調べに行くの?」

「人体の変化についてだ。昨日、セーレが突然苦しみ出したかと思ったら、髪が黒から白に変わった。それで父さんと母さんも心配してたぞ」

「ふーん、別に死んでないし、いいんじゃない」

 

 能天気な妹に、ニースは頭を抱えた。

 セーレの家族構成は父、母、兄、妹の四人家族。父と母は発掘調査員として働き、兄は優秀な者が集まる学問所に通い、地区内でもトップの成績を誇る。セーレ自身は普通の学問所を卒業し、食材販売のバイヤーとして働く予定だった。

 

「まぁ、生きていればなんとかなるでしょう」

「全く、図太いのか無頓着なのか……」

 

 その時、チャイムが鳴った。

 ニースは階段を下りて玄関に向かった。インターホン越しに確認すると、そこには優男が立っていた。

 

「突然の訪問、申し訳ありません。私は財団法人の責任者、アーネスと申します」

「財団法人? 父さんや母さんの知り合いですか?」

「いえ、違います」

 

 ニースは怪訝そうな表情を浮かべながら尋ねる。

 

「ならどんなご用件ですか?」

「妹さん、セーレさんの話です」

 

 突然の名前に驚きつつも、ニースは追い返そうとする。

 

「妹さんの髪が昨日白くなった。そして、今から学問所に向かうところですね」

「なぜそれを知っている? まさか、家に盗聴器を仕掛けているのか?」

「いえ、違います。明日また伺います。もし気が向いたら、ご家族全員でこの場所に来てください」

 

 アーネスはその言葉を告げ、立ち去った。ポストには一枚のメモが残されていた。


 兄との過去を冷静に思い出し、涙が少し零れ落ちた。

 

「そうだよね。お兄ちゃんが父さんと母さん、そして私を説得してアーネスとの対談が始まったのよね……」

 

 セーレは兄を膝枕し、その痩せた顔を見つめながら瞳に涙を滲ませる。

 

「父さん、母さんも私が刑務所に収監されている間に亡くなってしまって……唯一の肉親はお兄ちゃんだけなの。だからお願い、死なないで…私を一人にしないでよ……」

 

 セーレの涙がニースの顔に落ちる。その時、下水道の奥から大きな音と声が響いた。

 

「ハハハ、これはいい場面だな!」

 

 セーレは驚き、すぐに身構える。

 

「やっと出てきたかよ、セーレ! 三年近く待たせやがって……さぁ始めようぜ、命のやり取りの続きをよぅ!」

 

現れたのはテマだった。彼女は槍を構え、セーレに突進してきた―――。

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