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銀の城は心の奥に  作者: X


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27/28

27話

「そのお爺さんが優しかったのよ」


 セーレは、過去話を熱く語る。

 

「へぇ、そうだったのか」

 

 前のめり過ぎて、声が高くなっているのに気が付かなかった。マークとビィシャアも「王城の神器回収」という、パワーワード且つ敵陣の内通者が、聞き耳を立てて、いないか警戒した―――その警戒も取り越し苦労で終わる。目で辺りを見回すも客足が少ないからだ。

 

「居酒屋に入ったときも思ったが、客足が少ないな」

 

 居酒屋の配置は、四人掛けテーブルが八個。カウンターには、六脚の椅子が並ぶ。テーブルは、セーレ達の他に利用客もなく、カウンターには一人の男性客しかいない。

 

「はい、海鮮エビパスタ。お待ちどう」

 

 顎髭が三つ編みの五十代くらいの男性が、頼んだ料理を提供した。

 海鮮エビパスタ。ヒラ麺のパスタの上には、ホワイトベースソース。具材は、貝、イカ、エビが左右対称に盛り付けられていた。

 

「美味しそう」

「お客さん、美味しそうじゃない。美味しいんだ。さぁ召し上がれ」

 

 顎髭が特徴的な男が、テーブルへの配膳を終え、手際良く空の皿、グラスを片付ける。マークは、お店の人と世間話をした。

 

「店主さんですか?」

「はい、そうです」

「何で、こんなにお客さんが少ないんですか?」

「処刑だとか、物騒な話ばかりでね。おまけに自由な発言も禁止。上には文句の一つも言えん」

「店の経営も大変ですね」

「全く商売あがったりだよ」

 

 マークは、料理を一口食べて、感想を店主に伝える。美味しいのは、当然と豪語し片付けた食器を持って、バックヤードへ戻った。

 

「セーレの話は、聞かれていないようだ」

「私もヒヤヒヤしました」

「何よ、そんなの気にする……」

 

 テーブルの上で手枕し、セーレは眠りについた。その姿は、愛らしい子猫のようだ。

 

「寝ちゃいましたか」

「そのようだな、これ食べたらお会計だな」

 

 ビィシャアとマークは、テーブルのパスタ、酒のつまみ、サラダを二人で分け合い、完食した。

 マークは、お代の支払いのため、席を立った。ビィシャアは、ウエストポーチから青の四角い石を一つ取り出した。

 

「さて、お会計も終わった。ビィシャア、俺がセーレをおんぶするから、満月亭へ戻るぞ」―――二人の間に譲れない戦いが勃発。

「いえ、けっこうです」

「え…何が?」

「セーレのおんぶは、不要と言いました」

「いや、ここは男の俺がセーレを運ばないと」

 

 ビィシャアの左手が赤く光り、青い石を握り締める。石は、180cmくらいの人型の姿に変わる。それは、前屈みになりセーレの膝を両手で支え、背中へ引き寄せた。

 

「何してんのビィシャア。いいよ、ここは俺が運ぶから!」

 

 駄々をこねる子供のように、執拗に銀髪女性の体を触ろうとする。冷めた態度で切り返した。

 

「マーク…しつこいです……」

 

 少しガッカリした表情のマークをよそに、人型はセーレを安全に満月亭まで、運ぶ役目を達成するのであった。

 

◆◇◆◇


「ギィーギィー、キッキッキ」

 

 キツツキ科のコゲラが鳴く声で、セーレは目を覚ました。

 

「…頭痛い……」

 

 ベッドから起き上がる。目覚めて直ぐに、備え付けの冷蔵庫からペットボトルの水を半分くらい、イッキに飲み干した。冷蔵庫に戻した後に、寝巻きを脱ぎ捨て、全裸となりシャワー室へ直行した。

 

「うーん」

 

 シャワーの音で、目を覚ましたビィシャア。すぐに立ち上がり、セーレが脱ぎ散らかした寝巻きを綺麗にたたみ、洗濯された衣服をベッドの上へ置いた。

 セーレがシャワーを浴びている間に、髪型、爪、服の着替え等、身なりを整えた。

 

「あなた、しっかりしてるわね」

「おはようございます」

 

 生乾きの髪と大雑把に体を拭いたセーレが、シャワー室から出てきた。髪や体に滴る水は、床へ落ちカーペットを濡らす。ビィシャアはその姿を見て、慣れた手付きで彼女の背後を取った。

 

「いつもありがとう」

「私が好きでやってます。セーレは気にしないで」

 

 タオル、ドライヤー、顔や体の保湿ケアをする。ビィシャアは、彼女のスタイリストのようだ。流れ作業の間に、洗濯された衣服に袖を通した。

 一方その頃、マークは衣服の着替えを終えて、受付のソファに座っていた。何やら受付のお婆さんに「愚痴を聞いてもらっている」ようだ。

 

 一時間後。

 

 受付のエレベーターが開く。中から楽しそうに会話するセーレとビィシャアが姿を見せた。

 

「あら、早いわね」

「おはよう、セーレ。昨日は眠れたかい」

「えぇ、それはぐっすりと」

 

 マークは、ソファから立ち上がり、受付のお婆さんへお礼を言い、彼女達の側へ近寄った。

 

「どうしたの?」

「バイクは、今日一日なら預かってくれるそうだ」

「そうなの、マークやるわね」

 

 マークの世渡りの器量に、ビィシャアは感心した。


◆◇◆◇

 

 セーレ達は、満月亭のご厚意もあり、王城内の処刑が行われる広場へ移動した。満月亭は商業地区。そこから行政地区と王政地区をつなぐ広場が罪人の公開処刑場だ。

 

「テマと交戦した場所なのね」

「何、セーレ。何かいった?」

 

 広場の中心にいる裁判官の拡声器の声が大き過ぎて、会話が聞き取りづらい。その周囲には、罪人を取り囲むように、市民が大勢詰め掛けているが、皆暗い顔で罪人を見つめている。

 

「集まった皆の衆。前回公表した通り、この者を処刑する。さぁ、セーレ様の恋人を語る不届者よ、前に出ろ」

 

 ボロボロの衣服で、顔の形が凛々しい男が前に出てきた。セーレは、その男を見た瞬間。蓋がされた記憶が、ダムの水が決壊したかのように、放出された。

 

「え…そんな、嘘でしょう。まさか…お兄ちゃん……!?」

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