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菰宮牡丹は100倍可愛い。  作者: ジンボヤスヒデ@ぼんじー
23/30

23.0 エピローグ

放課後、高校の屋上へと上ると、浮瀬雲母(うきせうんも)は目をつむり、屋上の縁に立っていた。


「あらためて、退院おめでとう。もう身体は大丈夫みたいだね。」


 僕は夕日に目を細め、彼の傍へ歩く。


 校庭では、野球部やサッカー部が掛け声を出し、足元の校舎の中からは、吹奏楽部の各パートの、ばらばらに別れた演奏が聞こえる。


 屋上からは、羽津病院は見えなかった。


「うん。おかげさまで。」


 そのまま僕は数分、沈みゆく夕日を眺め続けた。


「浮瀬、君は…。」


それより後の言葉は出てこなかった。


「言ってごらん。」


 浮瀬はまだ、目をつむっている。


 僕は、校庭に響く生徒たちの声と、校舎を駆ける音楽と、建物の背に沈んでいく光を、ゆっくりと吸い込んだ。


「浮瀬、君は、『W』の一人なんじゃないか?」


 渋谷事変を引き起こし、その現場にWの文字を書き残した集団。


 ただ、その事件を如何に引き起こしたのか、そもそも、なんの為に起こしたのかが分からない。


被害の全体像も、世の中にはっきりとは把握されていない。


 その、自然現象の様な所業を行った犯人を、世間はいつからかWizards(魔法使い)の頭文字を合わせ、「W(ダブリュー)」と呼び始めた。


「いいね、おしい。と、言いたいところだけど。」


 すべて間違っている。


と、浮瀬は続ける。


「僕以外にはいない。僕一人で『W』。」


そうか、やはり菰宮先輩はWではなかった。


「僕の、いや。」


そこで彼は目を開き、こちらを見る。



「私の本名は浮瀬うらら- Ukise URARA - 。UU(ダブルユー)Witch(魔女)のWだ。」


 僕が瞬きをする前、浮瀬雲母が立っていた場所。


 僕の手の届く場所。そこに、下之宮高校の制服を着た少女が立っていた。


「隠していてごめんね。実は女なんだ。そこそこ可愛いだろう?」


 確かに、僕のタイプの美少女だ。



 けれど、これだけは言わないといけない。




「菰宮牡丹は、百倍可愛い。」






(24.0)



 例え1つの、同じ物語であったとしても、その物語が、どこで終わるのかによって、それは、ハッピーエンドにも、バッドエンドにもなり得る。


 人の人生は、「物語のエンディング」では終わらない。あとがきを迎えようが、スタッフロールが流れようが、主人公が死んでしまおうが、その物語に関わる人が、物が、生き物が、残っている限り、その物語には続きがある。


 物語に続きがあるということは、その物語がハッピーエンドで終わろうが、バッドエンドで終わろうが、その喜びや悲しみは、そのとき限りのものということだ。


 授業の退屈さも、放課後には解放感に変わる。


それでは次回予告。



「次回。小石井頼と、アフタートーク」

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