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サイコヒールとは。
クレアボヤンスで患部を透視し、サイコブーストで時間経過速度を速めて細胞を再生させ、サイコキネシスで再生の補助をする。この三つの能力の重ねがけをサイコヒールと呼んでいる。
サイコヒールは上記にあるように三つの能力を複合したものを言い、同時に使用しなければならないためかなり高度な能力となる。
ちなみに西京はサイコリバースを併用するので、さらに内容が異なってくる。
スジ太郎の乳を利用したサイコヒールはチョンカのものとも西京のものとも全く違うものである。西京は口には出さなかったが、その原理を究明し、新たなサイコヒールの開発に着手しようと考えていた。
「スジ太郎君、なかなか面白いことをするじゃないか。もう一度ラブ公に乳を飲ませてやってはくれないかい? 全身火傷をしているからね、ラブ公の体を回復させる気持ちでもう一度乳を出してごらん?」
スジ太郎は西京の言葉を聞き、鼻息を荒くした。
授乳とは乳児に乳を与えることをいう。
直接乳首に吸い付かれる刺激により搾乳されるのであるが、スジ太郎はこの「直接乳首に吸い付かれる刺激」に酔っていた。
もちろん初めての経験である。
乳が出るようになる以前からずっと憧れていたことでもあった。
スジ太郎は以前スジ子に授乳を頼み込んだこともあったが、そのときは泣きながらバールのようなもので殴打され手痛い目にあっていた。以降、誰かに授乳する機会に巡り合うこともなく悶々とした日々を送ることになる。そしてスジ太郎の中で授乳が特別なものに変化していった。
いつか好きな人が出来たらその人に初めての授乳をプレゼントしたい。
そんな風に考えるようになったスジ太郎を誰が責められるであろうか。
初めての授乳を、自分の意思に関係なく、さらに気付かない内に失ってしまった。
スジ太郎にとって授乳とは誰にでもして良いものではないない。
しかし今、スジ太郎の心を埋め尽くす感情は無力感や喪失感などではない。
まして、意中の相手に授乳できなかった悲しみでもない。
その心は、さらなる快楽を求める気持ちで満ち満ちていたのだ。
そして何よりも、授乳をすることと、その相手が特別な人ということはスジ太郎の中ではイコールなのだ。
「ラブ公……お、俺の乳を受け取ってくれるか……?」
鼻息を荒くし、一見して分かるほどに興奮しているスジ太郎が、火傷に倒れ満足に動くことの出来ないラブ公へ歩み寄る。
「ひっ!! え、な、なんで!? 僕もしかして、さっきスジ太郎君のお乳を……!? お、お、おえぇぇぇっ!!」
「クレアエンパシー」
西京の操るクレアエンパシーは、記憶の消去だけではない。記憶の改ざんも可能である。
「せ、先生……ラブ公、嫌がっとるけど、ほ、ほんまに自分から実験に協力したん?」
「騎士君……おえっ」
「ふむ、本当さ。快く引き受けてくれたよ? 本人に聞いてごらん」
頭を抱えながら蹲るラブ公が、チョンカ達の方へ視線をやった。
チョンカもシャルロットもラブ公と視線が合い、肩を震わせた。
「ぼ、僕……あれ? そ、そう……スジ太郎君がエスパーかどうか確かめてみたくて……あれ? えっと……それでお乳を吸ってみたんだぁ、え? ほ、本当に?」
「な、なんか本人も混乱しとるけど……だ、大丈夫なんじゃろうか?」
混乱し、自分を見失いかけているラブ公は、抵抗することもなくスジ太郎に抱き上げられた。
乳飲み子のように抱かれ、再び乳首が唇に押し付けられた。
「え? ちょ、ま、うっぷ……!! ……ちゅぱちゅぱ」
「もっほっ!! じゅ、授乳……いいっ!! いいーーーーーーーっっっ!! あはんっ」
「ぞわわわわわっ!! ラ、ラブ公!! き、きんも……おえ」
「あ、あ、あたしもう見ていられないわっ!!」
ラブ公の体が再び淡く光りだした。
乳を体に取り込むにつれ、火傷の痕が癒えていく。
「ふむ、ミルクヒールとでも言えばいいのか……不思議な現象だね」
「うわぁぁぁぁ……ラブ公、ほんまに回復しよるぅぅぅ……」
「チョンカ君、シャルロット君」
乙女二人はモザイクをかけたくなるような光景に、怯えながら抱き合って震えていた。
西京に声をかけられても二人とも両目をきつく閉じ現実逃避をしていた。
「これからスジ太郎君にも同行してもらおうかと思うよ。あの能力、きっと二人の更なるレベルアップにも役に立つと見た」
「え、え、え、えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっっっ!!!」
「い、い、いやぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっっっ!!!」
「スジ太郎君」
「んっほ、んっほ、んっほ……ご、極楽……はひぃ……い? は、はいっ!!」
ラブ公に授乳され桃源郷を彷徨い歩くが如く表情を浮かべていたスジ太郎も、西京の声に現実に戻ってきた。ラブ公を優しく地面に降ろしてやる。
「君はテクテク君に背後から襲われ、無理矢理ここまで連れてこられてきたと言ったね?」
「そ、そうです。あの生活から抜け出せたのは感謝だけどんはっーーーーーーー!! ん、ん……そ、それとこれは別です。あの女、許せないっす!」
「ふむ、君もエスパーの素養がある。とは言っても普通のエスパーとは少し違う才能を持っているようだけどね。しばらくは我々に同行しその能力を少しでも自分のものにしなさい。そしてテクテク君に授乳してあげたらどうかな?」
「授乳!? そ、それは……俺はもうラブ公以外の人に授乳するつもりは……」
スジ太郎はチラリと足元で口を拭っているラブ公を見る。その視線は少し熱を帯びたものであった。
「えーー!? い、いいよ!! 僕もなんでスジ太郎君のお乳を吸ったのか良く分からないもんっ! スジ太郎君、僕以外の人にもどんどん授乳して? ね? ぼ、僕はもういいからっ!!」
「え……ラ、ラブ公!! それは酷いぞ!! 俺の授乳は特別な……」
「いいよっ!! 僕は西京の実験に協力しただけだもんっ!! これ以上は吸いたくないよ!!」
「スジ太郎君、私から提案があるのだが?」
自ら乳を搾りながらラブ公に迫るスジ太郎であったが、西京の提案と言う言葉に動きを止めた。スジ太郎にとっても西京は逆らい難い人物である。
「て、提案……あっはぁん!!」
「そうさ。私が君をおそろ……立派なエスパーにしてあげよう。君にとって魅力的な提案だと思うが?」
「お、俺が……エスパぁっっはぁぁぁぁん!!」
「先生、や、やめようや?」
「あたしもこの変態と一緒にいることが耐えられないわ」
「ミーティア君のために我慢しなさい」
西京にきっぱりと言われては、チョンカとシャルロットも弱い。
そしてようやく実験から開放され、てちてちとラブ公がチョンカ達のもとへ歩み寄ってくるが、二人ともどことなくよそよそしくラブ公のことを避けている。
「え……チョンカちゃん!? シャルちゃん!?」
「………………」
「………………」
子供達の間に溝が出来てしまった。変態が増えたかもしれないという乙女達の気持ちから言えば当然のことであったが、この溝はこれから数日間、元に戻らなかったという。
「(笑)」
「そ、それで、西京さん……俺はどうしたら……」
「ミルクテンプテーション……そう名付けたい能力を開発しよう」
「テンプ……テーショんっほっほ!! っほーーーーーーーーーーーーっっっ!!」
「そうさ。飲んだ相手を魅了し絶対服従させる効果のあるミルクさ。恐らくだがスジ太郎君なら出来るはずさ。そうなれば相手に授乳し放題だよ?」
「ぜ……絶対ふくじゅんあっはぁーーーーーーーー!! んっんっ!!」
「も、もう普通の会話がキモイんじゃけど……」
「あたしも吐き気が……うっぷ……」
スジ太郎の瞳は輝いていた。
授乳したからには一生をラブ公に捧げる覚悟を決めたものの、やはり思春期特有の快楽を求める衝動には勝てないのだ。
授乳し放題。
スジ太郎にとって、この言葉の魔力は常人が思うよりも遥かに魅力的に聞こえていた。
「ふふ、やる気が出たようだね。さぁ、ウラメシ山へ向かおうじゃないか。まだまだ先は長い。スジ太郎君、道中訓練に励みなさい」
「う、うちらが先に歩くけぇ、スジ太郎は一番後ろっ!! これだけは譲れんっ!!」
「そうね、チョンカの言うとおりだわ!! 訓練もあたし達とは別よっ!!」
「チョンカ! シャルロットさん!!」
スジ太郎は襟をただし、チョンカとシャルロットの前に正座をし始める。
顔を赤くしている。乳が出るのを我慢しているのだ。
「お、俺が気持ち悪いのは分かります!! で、でも……お願いします!! 同行を許可して下さい!!」
西京に言われたとはいえ、乙女達の気持ちは同行拒否である。それはスジ太郎も分かっている。しかしこれから旅を一緒にするとなれば、スジ太郎としても二人の気持ちを無視するわけにはいかなかったのだ。
「乳は俺の意思に反して出るんだけど、なるべく乳を出すのも我慢します!! お願いします!!」
「え……あ、う、うん……別に……ええけど……」
「そう……ね、そこまで言われちゃうと……確かにかわいそうだものね」
スジ太郎は真剣に頭を下げた。土下座である。
さすがのチョンカ達もここまでされてしまっては一方的に拒絶することも出来ない。
スジ太郎はチョンカ達の言葉を待った。待つ間、頭をあげようとはしない。
それほどまでにスジ太郎はこの旅に同行をしたかったのだ。
「ス、スジ太郎、もうええけぇ頭あげぇや……うちらに乳をかけんのならついて来てもええけぇ……ね? シャル」
「え、ええ。あたしたちの後ろを歩くなら構わないわ……だからもう頭をあげて? そ、そんなことをされると落ち着かないわ」
二人の許しが得られ、スジ太郎は満面の笑みを浮かべながら顔を上げた。
「あ! ありがとぅッふっあっはーーーーーーーーーーっっひぎいいいぃぃぃぃぃ、あ、あかん、嬉しすぎて、いぎいいぃぃぃとま、とま、止まってぇぇあああひぃぃぃ!!」
シビビビビビビと、白液の地面を穿つ音があたりに響き渡った。




