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「わっ、本当だぁ!! スジ太郎君だ!」
「ふむ。間違いないようだね。しかし見世物とは……いささか猥褻過ぎる気もするが」
「ス、スジ太郎!! しっかりしぃや!! スジ……うわっ、乳が出とる……ぞわぞわっ」
チョンカは縛られもがき苦しむスジ太郎のもとへ駆け寄り、縄を解いてやろうとしたが、再会の感動の為であろうか、荒縄の隙間から細い白液の筋が継続的に飛び散っているのを見て距離を取った。
「もごーーー!! もっもっもひっひ!! もご」
「ひっ!! キモイけぇ乳を止めぇやっ!! 先生……こいつこのままでもええんじゃない? 助けようと思いよったけど、うち触りとうない……」
「ふむ、しかし苦しそうだよ?」
「僕には苦しそうには見えないけどなぁ」
「……チョンカ」
シャルロットが、チョンカ達から随分離れた場所から恐る恐るチョンカの名を呼んだ。新たな変態の出現に恐れおののいているのだ。
「シャル……あ、こ、こいつは変態じゃけど、悪い奴じゃないんよ? キモイだけじゃよ?」
「チョンカ……知り合いなのね……? あたしが見た中でもトップを争うほどキモイわ……」
「スジ太郎君はねぇ、チョンカちゃんのことが好きなんだよぉ!」
「ラ、ラブ公!! 余計なこと言わんでええって!!」
ラブ公の言葉を聞いてシャルロットの距離が三歩ほど遠くなった。
「チョンカ……あなた……」
「ちゃう!! ちゃうって!! うちは別になんとも思っとらんっていうか、こんな変態嫌じゃもん!! シャル、勘違いせんで? ね? ね?」
少し間をおいて、シャルロットの距離が三歩近くなる。
「もごごごごご!! もーーーご!! もっ、もっ、もひゃ!!」
「ん? チョンカ君、スジ太郎君が何か言いたそうだよ? サイコキネシスで猿ぐつわだけでもはずしてあげたらどうかな?」
「え!? えーーーーーーー!? ……うううぅぅぅ……はぁ~い……」
さすがのチョンカも西京に言われては従うしかない。見るからに嫌そうな顔をしながらサイコキネシスでスジ太郎の猿ぐつわを解いてやった。
「……ぷはっ! 空気がうまっひょ! ん! ん! あ、だめだ、チョンカ、俺に近寄ってくれっ!! 気を抜いたらまた……で、でるっ!! ひっひっひぎいいいぃぃぃ……oh yes……」
スジ太郎は久々の新鮮な空気を胸にいっぱい吸い込んだ為に気が緩み、痙攣をしながら寝そべる地面を大量の白液で濡らした。
シャルロットは、姿が豆粒ほどにしか見えないくらいに遠く距離をとっていた。
「……離れてくれの間違いじゃろ? ……先生、やっぱこいつ殺そう?」
「あ、あははー……どうやらー、お知り合いだったようだねぇー……ボ、ボクはこれで失礼しようかなぁー? そ、それじゃあ会場で会えたら会おうねぇーばいばーい」
それだけ言い残し、テクテクは急いで御者台に座ると、チョンカ達の返事を待たずに大慌てで馬に鞭をいれて猛スピードで去っていった。
「チョンカ! その女、悪いエスパーだぞ!! 俺のことをあ、あんっ! 俺のこと、あひっ、くっそ、縄で縛られてて思うように乳が出なおっほっ!! 俺のことをあっひっひ……いひいいぃぃぃぃぃっぃっっっ!! はぁはぁ、くっ、喋らさないつもりか!? 卑怯だぞ……んっっく……その女は、俺のことを後ろからあああっ…………んっんっんっ!! その女、俺のことを後ろから殴っ…………おぁ、おぁ! おおおおおお!! はぁ、はぁ!! チョンカ! 頼むっ! 縄を解いてくれぇぇぇ!! 爆発しそうなのに爆発できなぅほおおぉぉぉぉぉっぉぉぉおっおっおっ!! 頼む! チョンカ!! 俺を解き放ってくれっ! そうしないとおっはっ!! んぎぎぎぎぎ……た、頼む! チョンカ! 授乳させてくれっ!! あ、いや今のは違う、つい本音が……あ、あ、あっひーーーーーぃぃぃ!!」
噴水のように噴き出る自らの白液によってその身を濡らしながらも、スジ太郎は何かを伝えようと一生懸命喋るが、痙攣し、快感を得ながら話をしようとするので一向に話が進まなかった。聞いてるほうも内容がまるで理解できない。
「うわわわわぁ……きん……も……ぶちきんも……」
さすがのチョンカもこれには堪らず、すっぱそうな顔をしてスジ太郎を見ていた。
「ねぇねぇ、チョンカちゃん、何で縛られてるのに気持ちよさそうなのぉ?」
「何が言いたいのか全く分からないね。テクテク君のことを言っているのかな? どれ、縄を解いてやろうか」
「えっ!! 先生、それはそれでどうなん!?」
「しかし話が進まないよ? 見ているだけでも不愉快だがクレアエンパシーを使うのも気が引けるからね。解いてしまった方が良くはないかな?」
「も、もうこの際ラブ公でもいい!! 早く、早くしてくれっ早くぅぅぅああああああいぎぃぃぃぃ!! ビッグバンが起きそうなのに起きない! もう気が変になりそうだ……早くこの締め付けからあぱぱぱぱっっ!! ふおっ、ふぉおおおぉぉぉぉ……だ、だめだぁ!! ラブ公ぉぉぉ!!」
「えええーーー!! ぼ、僕……?」
スジ太郎は身をよじって涙を流しながらラブ公に懇願した。荒縄の隙間からは相変わらず噴水のように白液が飛び散っていた。勢いよく噴射されているように見えるが本人にとってはそれほどでもないのであろう。チョンカとラブ公はスジ太郎から大きく距離をとった。縄を解けばスジ太郎の言うビッグバンが起こるからだ。
「な……!! なんでだ!? ラブ公!! いや、チョンカ! 二人とも!! んっっほっ!! は、早く……はやぐぢでっ! じゃないともう正気をたもっほぃ!! んっんっ、早くしぼ……じゃない、ほど……いて……!!」
「僕やだっ! 絶対嫌だよぅ!!」
「うちもヤダ!! こいつ絶対隙を見て絞らせる気じゃもん!!」
ふぅと西京はため息を吐いた。そういえばワカメシティでため息ばかり吐いてことを思い出す。
「仕方がないね……それ、サイコブレード」
西京のマフラーがなびき、スジ太郎の荒縄が鋭利な刃物で切りつけられたようにバラバラになった。
そして仰向けで大の字になっているスジ太郎の体が露になった。
血管の浮いた乳がパンパンに張り詰めている。
「あおっ! お……お……おお……」
「ひゃ! 爆発しよる!! サイコガード!!」
「あ、チョンカちゃんずるい!! 入れて! 僕も入れて! いれ……あっ!!」
「AHAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA──────!!」
空気を詰めた大きな紙袋を勢いよく割ったような音が、大量の白液と共にスジ太郎から放たれた。
あたり一面、スジ太郎の白液に沈む。
白液の爆心地であるスジ太郎本人も当然白液に濡れ、真っ白である。
スジ太郎は目の前に火花が飛んでいるかのように、焦点の合わない目を何度も瞬きさせていた。
「おほ……おお……お……oh……Majestic……」
チョンカと西京のサイコガードもまた、スジ太郎の白液をかぶり真っ白に濡れていた。
「こ、こいつ……先生やっぱ殺そう? ここで殺さんとうちの気が狂いそうじゃ……それにうちの正義にも反しとる気がしよるもん……」
「まぁまぁ、チョンカ君。何か言いたそうだったからそれを聞いてから考えても遅くはないよ?」
肩で息をし、殺気を漲らせるチョンカのサイコガードをノックする音が響いた。
生身で白液を浴び真っ白になったラブ公である。
「チョンカちゃんずるいよ……チョンカちゃんずるいよ……チョンカちゃんずるいよ……」
「あ……ラ、ラブ……公……にへへ、ごめん」
「にへへ……じゃないよっっっっ!! チョンカちゃん自分だけずるいよ!! ミーティアちゃんも嫌がって守ってくれなかったんだからねっ!!」
「ラブ公、ごめんって~。ゆ、許してや? ね?」
「チョンカちゃんなんてもう知らないっ!!」
その頃、遠く離れた場所からこっそりクレアボヤンスで様子を伺っていたシャルロットは、あまりの衝撃的な映像に吐き気を催し、道端でうずくまっていた。