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13/ dact 《異機種模擬空戦》

 強引な引き起こし。視界が単色になる。グレイアウト。

「ンッぎ…………ぐ…ッ!」

 サーマル画像とEO画像が自動選択され、熱源が充分ではないと判断し光学系へ。

 自身の体がフレームごと消失したような視界。敵が後方から必殺位置に占位しようと迫る。

「あ゛あ゛ア゛ァッ!!」

 キネティックススラスターが爆轟を吐き、機体が鋭角的に何度も跳ねる。

 擦過音。エンジンの高音を貫く高速の装弾筒付きタングステン曳光徹甲弾の悲鳴。

 牽制の機関砲だ。

 背負ったジェネレータエンジンが出力を上げ、機体各所から突き出した電子対抗手段アンテナが指向性欺瞞電波を敵の照準波に被せる。

 FCSの狂いのせいで狙いがズレて弾幕が逸れる。

「くううう………!」

 アームドターミナルの翼面を最小抵抗状態にして姿勢を変更、予め最適効率姿勢を取ってから機動して速度を温存しつつ機体を振り回す。バレルロール。

 オーバーシュート、敵が眼前に踊る。


 ブーメランのような後退翌面が翼端で接続され二重になった複葉の機影。

 重厚で長大な脚部と前方に突き出す1対の太くて巨大なポッド型アームドターミナル。

 流線型で頑強そうな胴体とその先端のマスターフレームモジュール。

 その前端からこちらをはっきりと睨み据える装甲骨格姿の涼。

 モジュールの傍らには衝撃波発生用火薬カートリッジを装填した愛用のヴァリアブル・ブレードを積んでいる。

 傍目には完全に気狂いの類だが奴はアレを空戦中に『使う』

 迂闊に肉薄できない。


 射撃スタビライザ起動、50mm砲を照準。

 リヴォルバ弾倉に装填されたV T (装弾筒付き)D S - T (近接信管曳光榴)弾を3バースト。

 装弾筒で保持された高速近接信管弾頭が炸裂し、破片を撒き散らす。


 敵機が左スラストリバーサーを作動させ、同時に故意に左翼面気流を剥離・失効。

 ぐるり(・・・)とメテオールEよりも二回りも三回り以上も巨大な《サイレーン-Dash4》アビオフレームの巨躯がこじるように動く。

 全弾回避。そのままこちらの後方に潜り込む。

 キネティックススラスターも無しに、通常の戦術航空機ではあり得ない異常な機動。

 異常な高機動と高火力による決戦、それこそがアビオフレームの強みではあるものの、これほど薄気味悪い機動をする奴は見たことがない。


 信じがたいことに空戦を前提とした電子戦/突撃型フレームに戦闘爆撃型フレームで捻り込みを決めてきやがった。

 再び後ろを取られた。


 大口径砲の反動に耐えるため作動中の射撃スタビライザのせいで機動がほぼ直進状態のこちらは回避の余地が殆ど無い。

 ポッドのウェポンベイが開き、皇国軍の誇るAAM-7近距離高速空対空誘導弾のシーカーがぎょろりとこっちを向く。

 2、いや3発。

 スタビライザを強制停止させる。


 発射される、今。

 蹴り出された誘導弾が光弾と化し、剣閃のように伸びる光芒が迫る。

 最小射程ギリギリ、諸元上の必中円錐。

 咄嗟にフレアを大量投下しつつIRジャマーとレーザタレットでシーカを狙って灼く。

 1発は幻惑した瞬間に高速でスライドし回避、2発目はシーカーを灼かれて逸れる。

 3発目が迫る。


 キネティックススラスタをピッチング全開作動、リバースクルビット。

 速度を犠牲にして機体全体を空力失効させたストール機動。

 20mmGUN LADY レーダ格闘戦(DGFT)モード。ミサイルを捕捉。

 発砲。APDS-Tの煌めきが一条放たれ、ミサイルを撃墜。

 そのまま機を操り斜めにフラットスピンさせ気流を捉えマックスターン。

 射線から逃れアンロード加速姿勢を取りつつ推進方向のキネティックススラスタを吹かし無理矢理速度を回復。相対距離を確保しつつ再び首を振り回しセンサと肉眼をフル活用し索敵。


 いた。

 ぴたりと斜め後方に付けてきている。

 とはいえ大型機で高機動を連続させ、速度と高度を使い切ったのかその動きは鈍い。


 ───冷静に考えれば突撃型であるこちらと戦闘爆撃型で張り合う時点で頭がおかしいが。


 好機だ。

 前方を改めて見るとうまい具合に少し濃い目の雲がある。

 電子的に撹乱しつつ並走型ジャマードローンを射出。

「今度こそ喰ってやる………ッ!」

 そのまま加速し雲中へと突入。

 サイレーンDash4の強大極まるエンジンパワーは突撃機であるこちらのダッシュに付き合いきれるだけの推力がある。

 彼我の距離はむしろ直線飛行だった分縮んでさえいる。

「GAAAaaahhhhh!!」

 ソーサリーアンプ全力稼働。ジェネレータ、オルタネータ、メインエンジンマキシマム。

 電子戦装置が強制励起され超電導サーキット内で最大限圧搾された電磁パルスが放たれ、雲中で絶縁破壊を起こし空間に雷光が走る。

 瞬時に雷雲と化した雲の一部がプラズマ化し、オゾン臭を放つ。

 キネティックススラスタ作動。

 最大旋回率で維持旋回を放棄し回頭、そのまま空中を爆風で蹴りつけ敵機予測位置の斜め上方に占位し50mmガンをリロード。

 空中に3個のテレスコープ薬莢が蹴り出され、再びVTDS-Tがリボルバー弾倉に装填される。

 刹那、待つ。


 ───基本的に、キルゾーンを使う待ち撃ちが優位だ。機動的な戦いで罠を張れた方が勝つ。


 雲を破り、曳光弾(・・・)が現れる。

「なぁッ?!」

 揚力失効。モーター全力作動。ガンの反動も使って自機を叩き落とす。

 衝撃音。

 喰らった、視界の隅にダメージコントロール情報。

 機体背面、ジェネレータエンジンナセル微細破損、燃料カット、オートキル(自動停止)、

 左動翼系、小破、異常振動抑制で機動制限。

 キネティックススラスタ制御系、左キネティックスモーター・ブラストノズル破損の恐れあり。使用非推奨。

 アジマス機動性46%低下。

 統合戦闘支援AIの判断は《限定的戦闘続行可能、後退を推奨》


 MERDE(くそったれ)


 ───罠を(・・)、食い破られなければ(・・・・・・・・・)。


「あああ゛あ゛あ゛あ゛あああああッ!!」

 左スピン、加速。バレルロールからジンキング。43G回避機動

 自機を追って次々に誘導弾が慣性無誘導で叩きこまれ、自爆指令《・・・・》で破片を撒き散らす。

 普通ならGロックに陥って当然な過剰G、ナノマシンが脳神経回路を一部補完しつつ加速。

 脳に無理矢理酸素を叩き込み、千切れた毛細血管を応急修復、連動するストアコントロールが肺に酸素を無理矢理送り込み、全身を装甲骨格が支え、電磁筋がぎしぎしと躯を締め付ける。

 全身に眠気と鋭い痛みと倦怠感と疼痛をぶちまけたような苦痛。

 気絶もさせてくれない。せめて鎮痛しろと呪詛を吐く。


 くそったれ!くそったれ!くそったれッ!

 EMP環境下で戦闘機動するアビオフレームに視界ゼロで当てやがった!


 接近警報。

 はっとする。


 正面で、火薬ブラストカートリッジを装填した長巻をトリガーを絞りながら振り抜く涼の姿。


 交錯。異音。剣閃の起こす爆轟でエンジンがフレームアウト、堕ちる。

「~~~~~~~~ッッッ!」

 再始動よりも優先してヒドラジン非常動力装置を作動。動翼を叩き起こし回避運動を取る。

 急降下し高度を速度に変換、動翼で風を───



 ビープ音。

『状況終了、エクスレイ1、Gnome(エレオノール機)はブーマ1、Dukes(涼機)によりガンキル』

 ヘレーナ=ヴィルヘルミーネ・シュニッツラー少佐の声。

 機体の機能が状況評価装置の制約から開放されAR損害から復帰、瞬時に再始動し総ての機能を取り戻す。

「ッかは………は……はっ…!」

 息を吐く。

 口の中に血の味。

 が、すぐ止まる。


「ひゅー………ひゅー………」

 引き起こす、水平飛行。

『エリー、生きてるか』

 並走する涼のフレーム。

「おかげさまでな、くそったれめ」

『うん、そこまで大口を叩ければ重畳、だな』

 再び管制から通信。

『両機は進路を275に取り、たいほう管制区へ向かってください。高度そのまま、進路上の天候は快晴。到着後、当該管制の指揮下へ』

「Wilco」

『了解だ、ヘルミーナ』


 今日も負けた。

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