interval-05 《幕間》
「………ん」
エレオノールは、暖かな感覚を覚えて、ふと目を開けた。
そして、目の前にある暖かくて柔らかそうなものに自分が顔を埋めていたことを思い出し。
「……ん、にゅ」
それにより深く抱きついた。
気持ちいい………。
でもこれ、なんだろう。やけに身近な、というか毎日風呂で触るような感触の―――
「っは!?」
エレオノールはシーツを跳ね除け飛び起きた。
見回す。見慣れぬ部屋。
佐官級幹部居室。
………じゃあ、この、これは……まさか。
「む……起きたのか」「りょお?!」
「どっどどどどどええええちょええええええ!?」
記憶、無し。
服、無し。
身に着けてるのはやけに大きいワイシャツだけ。
下着すらない。シャツは多分涼の。
ちなみに体を起こした涼は全裸だった。
「ひああああああああああああああああ!なっなん!?ええええ!?」
目を瞑り身体を守るように両手が上がる。
「いちいち煩い小娘だ、昨日のことを憶えていないのか」
「えっちょ、ど」「落ち着け、言葉を忘れたか。深呼吸しろ」
「ふううぅううう、はぁあああぁぁ、ふううううう、はぁああああああ………」
「落ち着いたか」
「う、うん……しかしいったいナニが」
ベッドの端にズリズリ逃げてシーツを胸元まで引き上げて掻き抱く。
何だこの状況。どういうことなの………?
「憶えていないのか、あの燃え上がるような夜を」「ぜってぇうそだよね?!」
「む、本当なのに………」「えっ」
うそ。
「……ホントに……………?」
「うむ、お前が暴走して危うく試合が死合いとなるところであった」「まぎらわしいよ?!」
「そうか、まあ」「いやもういいからそれ」
しゅんとする涼であった。
出雲さんの貴重な落胆シーン。
………こほん。
「それ、どうしたんだ?」
涼は、左目に包帯を巻いていた。
「胸元を見てみろ」
「……あ」
いつものブレード・ガードがエレオノールの胸元にぶら下がっている。
「その霊験あらたかな出雲の封印鍔で貴様の暴走を止めている。まぁ、一両日も身に付けておけばよかろう」
回復したら、返しに来い。
涼はそう言った。
思い出した、途切れ途切れに。
「でも涼、お前その左目…」
「こんなこともあろうかと作っておいた六波羅封印のレプリカだ。なおゆくゆくはモノクルになる予定だ。」
「テストはどうしたんだよ!?」「莫迦者、そんな暇は無い!!!」
「そですか……」
テンプレートであった。
ん、何の………?
まあいいか、気にしちゃいけない。
「というわけで、帰るが良いぞ。私は、眼玉が起きていると封印が壊れかねんので寝ることとする」
「そんなんでいいんだ邪眼………」
「邪眼が開いていなければよいわけだからな」
「適当だぁ…………」
兎も角。
「それじゃあ、もうお暇しようかな」
「うむ、服は需品課が洗濯してお前の部屋に届けるそうだ」
「えっ」「む?」
───間
「なにそれこの格好で帰れって事?」
「ふむ、そうだな。まぁ、問題あるまい。細かいことを気にするな。」
「こまかくねぇだろ!!」
「嗚呼煩い………私は本気で眠いのだ、早く出て行ってくれないか……?」
「くうううぅ……!!」
本気で眠そうだ!この罪悪感が凄い!
「お、おぼえてろよ~このばか。オーガ、黒魔女、妖怪首置いてけ」控えめであった。
「…………前から思っていたのだが…………語彙が貧困だな…エリー…」
「なんッッ!?」
殆ど寝ている相手に言い負かされた……!
「…………Zzz…」
MERDE…、マジでこれで部屋まで帰るのかよ…………………フッ、いいだろう、僕の超絶スニーキング・テクニック、
見せてやろうじゃないか!
いや見せないけど!
―――かくして、半舷直の昼飯時で活気がある艦内を舞台にエレオノールの長く孤独な戦いの火蓋が切って落されたのだった―――
……………………すーすーする………
お後がよろしいようで