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Alternative/Warhead ―姉妹戦争―  作者: |日0TK
Practice Training
16/21

11/ duel 《決闘》

 海上の係船浮標に浮標係留するたいほうから岩礁を背に低く這い、島の影に入って更に行くこと暫し、やがて前方に灯火のない街が見えてきた。


 硫黄島射爆場地域。

 その中の一角、市街・基地爆撃標的訓練弾着地域の対爆格納庫。

 そこに、まるでいつかとは逆に、エレオノールが入る。



 ―――涼。


 まるでいつかとは逆に、そこでは、陽ノ皇国海軍少佐、出雲涼が佇んでいた。いつも通りに。

 自分でも、この東洋の魔女に対する執着は常軌を逸していると思う。

 異常な執着、何の裏返しなのか。


 何かが、澱のように記憶が堆積した心の内側から浮かび上がりかけ、振り払う。

 莫迦な。こいつはベアトリス少佐、センパイとは違う。

 冬、初めて逢った。


 自身もメカニカルな細身の甲冑のような装甲骨格を纏った涼が、振り向く。

 しかしその顔と頭だけは、装甲キャノピを装備していない。

 いつもの、通りに。


「来たか」

「うん、来たよ」


 いつもの一言、それに応える。

 このシ合いの、端まりの。


 腰にはいつも通り、兵装パイロン。右にアメリア人の特殊部隊員が好んで用いるHk45T拳銃が吊られている。

 涼がこちらを向く。左腰が見える―――メカニカルで異様にヒルトの長いヴァリアブル・ヒノ・ブレードが。

 こいつのメインウェポン。

 飽く迄左腰に佩いた可変大太刀、ブレードが、プライマリ。ハンドガンはセカンダリですらない。

 必要のあるときは、腰の後ろに装備した大量の大型両刃ナイフを恐るべき弾幕として投擲する。

 或いは左手で振るう。それが―――セカンダリ。


 あの銃は、将校である決意表明なのかもしれない。

 或いは、アメリア軍に国防を半ば委託するという現状に『甘んじている』とも取られることがある皇国軍に身を投じる、この國の守護者である、出雲としての。



 殊更に国産兵装を好む四方守護家の出雲の係累に珍しい、選択肢である。

 フレームも、カスタマイズは為されているとはいえ、アメリア製である。


 その腰に佩いた刀剣類は総て刃を潰した訓練刀ではない。

 出雲の誇る真なる魔剣の冷気を放っている。




 45勝、    62敗。


 今日までの戦跡だ。

 だが、これまでだ。


 エレオノールは、周囲を眺めた。

 そこここに叩き付けるような浅い弾痕と引き裂くような刀傷がある。

 しかし、その傷も、未だこの格納庫を倒壊させるには至っていない。

 皇国の対射爆シェルター構造さまさまである。


 この海域に着いてすぐに、挑んだ。鬱憤を叩きつけるように。

 当然のように実弾と真剣で。勝敗は、敵をどうあっても仕留められる所まで追い込んだら、勝ち。

 緒戦は負け続けた。

 この女は白兵戦、対魔導兵戦闘において、悪鬼のように異常に強い。

 まるで来たるべき時に備えるように。


 僕を打ち倒したときは、必ず、

 まだまだだな、小娘。精進するがよいぞ。


 そう呟く。


 眼を戻した。涼と正対する。距離は20メートル。

 眼をつぶっても中る距離だ。当然、奴の剣も瞬時に届く。


 別に、もう、帰れるとも思ってない。ここにも仲間が、姉妹達が出来てしまったから。



「さあ、来い」


 その 一言が、 引き金



 甲高いノイズ、燐光が舞う。

 インジケータが赤い光を放つ。

 フィジカル・アクセル。


 気分が高揚する。


「ほう、強化術式が安定しているな」


「アンタほどじゃない、涼」

「………………陣琉寺流の古代肉体躁術秘伝《陣流鳴神ノ霊子法》の亜種か。ふぅむ、あいつ、よく教える気になったものだ」

「ぱっと見でそこまで具体的に解るお前のほうが意味がわかんねえよ」

「ふん、それこそ、『私は出雲だから』、な」



 瞳が、闘争の予感に、爛々と金色の光輝を放つ。

 静寂。


 天井から、雫が垂れる。


 地面にブラックマークと亀裂を残し、疾走。

 弾丸のように前へ。この距離で撃っても、信じがたい事にあいつは斬り落とすか避ける。

 涼も、応えるように前へ。


 いつもは擦れて見えるあいつの動きがはっきりと知覚できる。


 スパイク起動。

 足元に装甲ブーツからパイルが打ち込まれ、火花を散らして鋭く蹴りつける。

 正面衝突する寸前、二人同時に各々右前へと鋭く方向を変換する。

 超高速で擦れ違う。


 左に、相手を見ながら。

 視線と視線が絡み合う。死線と、死線が。

 まだ、G11Kシステムはヴァリアブルパイロンの中。グリップに右手だけを添えて。

 まだ、ヴァリアブルブレードはブレードパイロンの中。シースに左親指だけを添えて。


 背後に、廻る。

 ロンドを踊るように。

 背の低いエレオノールが女性側、涼が、エスコートするかのように。


 ここだ


 抜く     肩から見る    白刃の    煌き。


 低く身を倒し、躱す。

 跳ぶ。


 空中で、ウィーバー・スタンスを取る。

 デコード  スイッチ  ガンバレル  魔導加速、最大出力



 野砲のような爆音。

 デコード スイッチ フィジカルアクセル


 敵の動きを捉える。


 涼は 瞬時に可変刀を長巻から大太刀に変形  砲弾のようなそれを    斬り墜としていた。


 変態的絶技だ。笑いがこみ上げる。


「  HA!!   あはははは!!  ははははっ!!!あはははははは!!!」


 涼が左腰の航空複合材で出来たシースをパイロンから抜き取り、僕に投擲する

 すかさず蹴り飛ばす


 涼が再び可変刀を長巻に変形し、片手で振るって空中の僕に振り抜こうとし


 デコード スイッチ ガンバレル

 無造作に斜め横、左約45度、格納庫扉ギリギリの虚空を撃つ


 爆轟


 涼が即応し、剣閃と弾頭がぶつかり、衝撃力が散逸する。

 弾丸のように体が斜め後ろ、右へと弾き飛ばされる


 擦過したソニックブームが薄く壁を引き裂く 火花を散らして 首筋からぱっと人工筋肉循環液が跳ねる。


 実に実に変態的なことに、この戦鬼(オーガ)は剣を振りぬいた衝撃波である程度の距離のものを触れずして切り裂く。


 デコード スイッチ フィジカルアクセル


 壁の中程  床から5メートルの垂直面に着地する


 疾走  駆け上がる 内側天井近くのオーバーハングした屈曲面へ  剣気が壁を引き裂く


 天地を出鱈目にして走る それを追って 大型のナイフが次々に強化鉄筋コンクリートへ深々と突き刺さり火花を散らす。 


 笑う そのまま天を蹴って飛ぶ くるくると


 涼の後方斜め上へと 占位する フレームを操るかのように 


 ここだ


 デコード スイッチ ガンバレル


 涼の後頭部に銃口を突きつけ、これで―――

 涼が消えた。


 うそ、どこ―――






 気付くと、床から数メートル、壁の高い位置に背中から叩きつけられていた。

 そのまま、床に落ちた。壁に背を預ける様に。

 自分の両足が前に投げ出されているのが見える。視界が、上半身が、殆ど水平に、右に傾いで、止まる。


 がつり、と


 床にG11Kの無骨な銃身保持ビームがぶつかる音がやけに大きい。


 凡そ思いつく限りの警告が溢れる視界の中、涼がこっちへ歩いてくる。


「複数術式の解析、プールした………陣流寺流ならば、霊子か、それをマギウムに最適化されたベアトリス式統合軍標準魔導式への変換使用、発射反動を利用した『空(Air)戦(Combat)機動(Maneuver)』、素晴らしいな。見込みどおりだ、エリー」


 やけに声が遠い、体が動かない。


「私にこの封呪を外させたのはお前が三人目だ、誇るがよいぞ」


 左手に、ヒノ・ブレードのガードを持っている。

 貌を見た。いつもアイパッチのように当てられたブレード・ガードが無い。

 眼


「ひうぅ…………」


 童女のような怯えた声が咽から漏れた。


「邪眼だ、出雲の」


 左眼が、どく、どく、と拍動するような紅い光を放つ。

 横に割れた、動脈血の色の瞳。そして、頬から頸、胸元へと血の涙のような、ぬらぬら光る血路が浮かび出る。

 ただし、その眼は涙を流していなかった。


 魔力の根源、心臓から、血を啜る様に、上へと血が流れている。

 ずるずると、啜るように。


 どくん、どくん。


 心臓なのだ、二つの。


「私を仕留めたければこの眼も潰すことだ。エリー」

 魔導の力の根源。


「ずるい、よ………」


「疲れるのだぞ、莫迦者。これが起きている間、単純に魔苴素は最低二倍消費される。

 強制的に。それに、私はお前のように莫迦みたいな魔力は無い」



 力に代償は、  憑き物だろう。



 涼はそう、呟いた。


 やばい

 本能が、野生がけたたましく警鐘を鳴らす。

 身体が、勝手にアクセルされる。逃げろ、と。

 理性が、脆くくずれていく。

 恐怖を闘争が塗りつぶす。


 逃げ切れない、撃たなきゃ。


 スイッチしていては、ガンバレル展開時にやられる。

 同時に、使わなくちゃ。


 ズキ!


 チョーカーが激しく発光する。

 側頭部に痛み。構うものか。

 あれは、やばい。


 ズキ!


 ガンバレルが、手の裡に


KATANA イズ 強い


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