リメイク第二章 北の大地に待つは一人の巨人
『♪♪♪・・・ご案内します、後五分程で終点、北ヒミナに到着いたします』
ん・・・終点の案内?そろそろ起きるか・・・外はもう真っ暗だ。かなり長距離運行らしいからな、時間はもう夜の10時過ぎだ。
「あ、サクラ起きた?」
「おッス。エルメス、さてと、降りたらまた準備ッスね」
「それがなんだけどさ、車掌さんから聞いた話。ナターシャの奴、ずっと駅にいたらしいんだけど帰っちゃったらしくてさ・・・」
「か、帰った?どゆことよそれ?」
「うーん、ナターシャって結構細かい性格と言うか、あの一家全員、超時間厳守主義なのよ。前倒しも遅れも許さないって感じで、リーダーの仕事も夜の九時できっかり終わって駅から帰っちゃったらしいのね。そんで家からは明日の朝八時までは確実に出てこないんだってさ」
「え・・・時間ってもう一日とちょっとしか無いんスよ?」
「そうは言っても、ナターシャはどんな理由があろうとも時間は絶対だって出てこないんだって。かと言って潜入しようにもあそこは最新の防犯システム持ってるから下手に近づけないのよ」
どう言う奴だよ・・・って事は、明日の朝ならたった一日で3人倒すの?しかも、この世界折り紙付きの奴らを?しかも、中央のやつに至っては不明だし。
きっつー・・・
「で、今夜は駅の仮眠室貸してくれるらしいわ」
「そして!明日の朝、ナターシャ殿を駅で迎え撃つ算段でござる」
なんか麗沢が得意げに出て来た。
「・・・この話を車掌にしてくれたのは麗沢なのよ」
なーる、たまには気が効く奴って事ね。とりあえず心の中でサンキューって言っとく。
「北ヒミナ〜、北ヒミナ〜・・・この車は車庫に入ります・・・」
駅に着くと駅員さんがマイクも使わず案内放送してる。そして降りる客は俺たちしかいない、ここ相当な秘境駅か?
「なーんもねーなー・・・」
俺は駅から外を眺めるが、何も見えん。
「北ヒミナ駅はね、あっちにある高速鉄道の乗り換え駅利用か、アメジストセージ工業に来る従業員しか使わないのよ。で、あの会社夜勤は絶対無しの完全定時操業してるからもう誰もいないのよね。それに高速鉄道も終電出ちゃったなのよ」
近くに住宅街もないみたい。なんか黒く見える建物がその工場?なのかね。そんでまだ少し明るい小綺麗なのが高速鉄道の駅か・・・
「おう、車掌から話は聞いてる。仮眠室に布団は敷いておいたから使ってくれ。それと一応風呂も入れておいた、それも良ければ使ってくれ」
少し強面な駅員さんだなぁ。
「ありがとうございます」
俺は少し固く挨拶した。
「おう、俺ぁまだ、最終普通列車の仕事がある。すまねーがあとは自分たちでやってくれ。これが仮眠室の鍵だ」
この駅員さんは俺たちに鍵を渡すと窓口の方で何か書類を書き始めた。なんか様になるなぁ・・・
「とりあえず行くッスか」
仮眠室には綺麗に布団が敷かれていた、なんか昭和の雑魚寝部屋みたい。そして風呂場も、
「湯温、良しでござる!!さて、誰から入るでござる?」
「うーん、麗沢が入るとせっかくの湯が壊滅するからお前最後な?」
「のぅっ!!」
しゃーないだろ、こんなにぴたーってお湯張られたんじゃ一番表面積の大きいお前は最後だ。
「なら、グレイシアさんからどうぞッス。いつも早いッスからね」
グレイシアさんいつも風呂早いんだよな。ちゃんと洗えてるのかね、けど髪はサラサラしてるけど・・・
「そうね、それでその後私で良い?」
次はシィズさん。
「いいわよ、ならその後サクラ入りなさいよ。私は後でいいわ」
「で、最後に拙者でごさるか」
風呂の順番決定ー。この旅ずっとワンコインで使えるシャワーとかばっかりだったからなぁ、しかも毎日入れなかったし、浴槽が久しぶりな気がする。
「・・・面倒だね」
「うん?何がッスか?グレイシアさん?」
「お風呂あるなら、みんな一緒に入れば良いから・・・」
・・・・・・・
「はぁ・・・相変わらずだね、グレイシア・・・年頃の男の子の前で言う?サクラとレイサワ、顔真っ赤になって固まっちゃったじゃない」
「なんで赤い?」
「だーめだこりゃ。ほら、まぁいいからさっさと入りなさい」
グレイシアさんはエルメスに連行されるように風呂場に連れて行かれた。
「効率良いのに・・・」
「全く、なんであの子あんなにも恥じらい的なのがないのかしらね。そう言えば高校の時もグレイシアの家遊びに行ったら全裸でウロウロしてて、ミカミの奴がバスタオルと着替え持って追いかけまわしてたっけ」
・・・高校にもなってグレイシアさんなんつー事してんだ、銭湯ではしゃいでる子供かよ。てか、三上の野郎羨ましいなくそ。
『ガチャ・・・』
駅員さんが仕事終えて帰って来た。
「ん?なんだ、順番に入ってんのか?てっきり一緒に入るもんだと思って満タンに湯張ったんだけどな」
あっれ〜・・・駅員さん、俺たち別に家族とかじゃないんだけどな。
「流石に恥ずかしいわよ」
「そう言うもんか、すまんな」
「出たから」
俺たちは今駅員とちょっと一言話しただけだぞ?なのにもうグレイシアさんは出て来た。
「はやっ!!グレイシアあんた、ちゃんと身体洗ったの!?」
・・・こ、こくり。
「・・・・・サクラ、ちょっと手伝え。グレイシアをもう一度湯船に突っ込むぞ」
あー成る程、めんどくさがってちゃんと洗わなかったな?三上が追いかけまわしてた理由が何となく分かった。グレイシアさんズボラだからなぁ。
「えー、これで大丈夫なのに・・・」
「そんなんじゃダメッスよ。特に女の人がそれってやばいって。そもそも俺はお風呂大好きサウナ大好き人間なんだ。せっかくの湯船をこんなちゃちゃっと済ますなんて!!お風呂への冒涜ッス!!」
「そうだそうだ!!行くぞサクラッ!!このグレイシアに風呂のなんたるかを教えてやるわよっ!!」
「おうっ!!」
「あー・・・」
「ん?何だ、結局一緒に入るのか・・・」
その先は泡まみれで何も見て無いので大丈夫です。
「スッキリ・・・」
グレイシアさんはツルーンとした顔で出て来た。
さてと、これでようやく俺1人でゆっくり入れる。あぁ゛〜・・・このちっちゃいステンレス浴槽だけど、肩まで湯に浸かれる事のなんと素晴らしい事か。
「おう、そこに瓶牛乳がある、良かったら飲んでけ。腹が減ってんならカップ麺も買っておいた。好きなの食ってけ」
この駅員さんぶっきらぼうな感じだけどすごく気が効くなぁ・・・このカップ麺もまたこの部屋の雰囲気かねぇ、あったか〜い。
「んじゃおやすみッス〜駅員さーん」
「おぅ、ゆっくり休みな。で、最後まで頑張れよ」
あ〜、さっき散々寝たけどこの布団もふっくらして良い感じだぁ。
そして翌朝、駅員は始発が始まってるからか外にいる。今は朝の7時40分。
「なんか、今まではずっと探してばっかりだったからか、待つってのは変に緊張するッスね」
「この感覚は、さながら18きっぷシーズンにおける乗り換え前の感覚でござるなぁ」
分かりにくいわ麗沢の例え。
ソワソワしながら8時までは後1分・・・3、2、1・・・時間だ・・・けど、あれ。
何処にもいないなぁ・・・
「麗沢、ナターシャって、ごっ!!」
俺は何かにぶつかった。これ、壁か・・・こんなとこにあったっけ。
「いてて、んで麗沢。ナターシャいた?」
「先輩?その・・・」
んあ?
「サカガミ サクラか・・・」
ん?誰の声だ?後ろから・・・俺はもう一度振り返ったらそこには
真っ黒な筒・・・これって・・・
「銃口ぅぅぅっ!?」
どっわーーーーっせーーーーーっ!!!
俺は驚きのあまり身体をのけぞらせても足りなくてそのままブリッジしてしまった。
『ドガンッ!!!』
そして銃口から火が吹いた。あっぶねー・・・マジで死ぬとこだった。
「今の避け方は五点、その体勢では次、避ける事は出来ぬな?」
ガッシャン!!この音、弾丸が装填された音だ。この音ってまさか・・・
「シャッガァァァンッ!?」
どうしよっ!?てか俺どうなってんの!?足はどれ?誰動かせば体勢元に戻せるんだ!?
俺はパニックになってた。
どかんっ!!
「どっほぉぉっ!!」
その直後俺の身体は脇腹の激痛と共に宙を舞った。銃弾を喰らったんじゃない。これは・・・
「ごーる?で、あってるから?」
俺をサッカーボールみたいに蹴飛ばしたのはグレイシアさんだ。だから間一髪で避けれたんだけど、脇腹蹴る事ないでしょ・・・いててて。
「ふむ、中々にタフなのは評価しよう」
「起きれる?にしても、相変わらず急に時間になったら現れるわね。そしてその愛想のなさ、挨拶くらいしてから攻撃しなさいよナターシャ」
俺はエルメスに起こされた。そしてようやくナターシャの全貌を見た。
・・・ないないない、これは無しでしょ。麗沢見てみろよ、魂が抜けてるじゃん。
デカすぎだ、俺身長は170は超えてるんだぞ?なのに、首が痛くなるくらい見上げなきゃならないし、パッツンパッツンな軍のトレンチコートで余計に横にもデカい壁に見えちまうし。
「この鉛弾が挨拶のつもりだったのだが、少々伝わりにくかったかな?吾輩はナターシャ アメジストセージ。ここ、コールド地区のリーダーである。これで宜しかったかな?」
宜しいけどよろしくないよ・・・
「では、続きと行こう。もう時間は過ぎている、吾輩は待つのは嫌いなのだ」
ガシャンッ!!!
てか、ナターシャの武器・・・アレってアレじゃん。どっかの筋肉モリモリマッチョマンが出てる映画にあった、あのくるんって回すやつ。
それでナターシャは例に漏れず、普通に片手で回して装填してる。
「なぁ、ナターシャって人間?殺戮マシーンじゃないの?」
「サクラも失礼な事言うわね。けど、あー見えて人間よ。時間きっかりにしか動かないし、いつも仏頂面で、趣味は時間の許す限り己を鍛える事だけど、それでも人間名乗ってるわね」
「エルメス、あなたも失礼と思うが?」
「何が?」
エルメスは天然失礼なんだよ。
「まぁ構わないが。さて、自己紹介はこれで良いな。では、任務を遂行する」
マジで機械みたいに動き出した。こいつを相手にするなら、一番良いのは装置の破壊だ。防御の体勢を取らないのなら、俺の目でピンポイントで狙って撃てば行ける気がする。
『ドガンッ!!!』
3発目が撃たれた。俺は剣で防いだけど、これ痛いな・・・何発も捌ける威力じゃねーよ。
「ふむ、スラッグ弾を防いだか」
「スラッグ?」
「それなら拙者が説明しよう!!スラッグ弾とはショットガンに使われる銃弾の一瞬で、一般的に知られる細かい粒をばら撒く弾丸ではなく、大きな一つの塊を撃ち出すのがスラッグ弾なのでござる!!」
説明どーも、てか、もし今のが普通の散弾だったらやばかったか?
『ドガンッ!!!』
さっきは遅れをとったけど、ナターシャの動きは素早くない。俺の目で見切れる、そしてあのショットガンの装弾数は6・・・次撃ったら反撃だ!!
『ドガンッ!!!』
今だ!!!俺は銃弾を避けて、一気にナターシャの懐に潜り込んだ。至近距離での電撃だ、全身に喰らわせればそのついでに装置の破壊も出来る筈だ!!
「うおおっ!!」
ガシャガシャンッ!!!
え、ちょっ!!?リロード早っ!?ナターシャは一瞬で一発だけ銃弾を装填した。そして俺の銃口と直線上で向かい合った。なら!!このまま突っ切ってやる!!その銃ごとぶっ壊す!!
「サンダーバレット・・・」
「は?」
『バヂィィィンッ!!!』
銃と銃の間で激しいスパークが発生した。これって・・・これ、
「なんでナターシャが魔法使ってんだ?」
ナターシャの銃弾、これは確実に電撃の魔法だった。ナターシャって確か魔法使える一族じゃないだろ?
「敵の前で簡単に疑問文を使うのは宜しくないな、それは敵の攻撃手段が理解できませんでしたと、降伏宣言してるのと同義だ。知りたければ、理解しろ・・・決して疑問文を使うでない」
ナターシャは銃のレバーを下げ、ポケットからショットシェルを取り出して装填した。けど、あのシェル・・・一発、一発色が違う?
青、黄、水、茶、赤・・・入れた順番はこれだ。
「っ!!次は炎っ!?」
俺は剣を思い切り振って何とかその炎の弾を切り裂いた。
こいつ・・・何種類も魔法が使えるのか?いや、これ多分あの銃に秘密があるな・・・見極めてやる!!




