リメイク第二章 滅ぼすは歪んだ友の意志
「っ・・・あ、あれ?」
何だ?なんで、全然痛くもなんとも無いんだ?俺は恐る恐る目を開けた。
そしてその瞬間に後悔した。零羅ちゃんだ、零羅ちゃんが俺の前に立ってナイフを受け止めていた。そして、ポタポタと血が垂れてしまっていた。
「あーあ、やっちまったな。桜蘭、こっからが正念場になるな。下手すりゃ俺もお前も死ぬぜ?なぁ零羅、お前は今どうしたい?」
「わたしは・・・」
この一人称は・・・あの時と同じ!!
「零羅!!」
「あぁ、桜蘭さんですか・・・」
零羅ちゃんは少し笑った表情で俺を見た。その次の瞬間には俺の身体は壁に激突していた。
「がはぁっ!!」
「あれ?イマイチおもしろみにかけますね・・・けど、いまのかおは、とてもすてきですよ?」
何が起きた・・・これ、胸を蹴飛ばされたのか?呼吸が、どうすれば肺に空気が入る・・・思考ができない・・・
「ははっ!!やるじゃんかよ!!その顔だ、その顔が俺は好きだ。俺と同じ顔、お前のその表情のおかげで俺は、俺のこの間違った癖を誇りだと思えた!さぁ、それで俺を殺してみろよ!そしてお前もこっちに来い!もう後戻り出来なくなるまで!!さぁ!」
「もう、あともどりは・・・できない。かんぜんにこわしたら、殺してしまえば・・・わたしは・・・」
零羅ちゃんはゆっくりと睡蓮の方へと歩いていく。止めなくちゃ、けど、この激痛が身体を動かそうとしない。
「それで良いんだ。癖って言うのはな個性なんだよ。個性を捨てたらそいつはもう人間じゃ無い、ただのゴミだ。何も残りはしない。押さえつけて、個性を押し殺したら、何も残らないんだ。そうだろ?何かを壊して殺すこと、それがお前の随一の個性だ。
自分を乗り越えるってのはな、自分を認める事だ、お前がその気なら手伝ってやる。さぁ、全てひけらかせ!!お前の今望む事をしろ!!」
「・・・殺したい。そのからだが、うごかなくなるまで、あなたを!!」
睡蓮の奴、本気で殺される気なのか?あの表情はそう言ってる。さっき言ってた事は嘘じゃない。あれは、零羅ちゃんに新たな自分を見出してるんだ。もし、零羅ちゃんが睡蓮を殺してしまえば・・・
「あぁ・・・良い感覚だ。俺みたいな奴が俺の意志をこの世界に残す事が出来るなんてな」
っ・・・残させるか、こんな意志をこんな覚悟を、この世界に残してたまるか。
俺はずっと何してたんだ?動けるだろ、止められただろ。なんでこんなとこで這いつくばってる?俺は睡蓮を大切な仲間だと思ってた。今でもそう思いたいさ。けど、こいつは今間違った事をしようとしてる。
間違った事をしてるのなら、止めなきゃ駄目だろ・・・だから動け。睡蓮を、零羅を止めろ・・・
いや・・・俺も覚悟しろ。睡蓮を殺せ。
『ズガンッ!!』
「零羅、そっちに行くな。いや、何がなんでも生かせないッスよ」
俺は零羅の足元に電撃の弾を撃った。零羅は足を止め俺を見た。
「中途半端にぶっ飛ばさないでよ、おかげで死に損ねたじゃないッスか。零羅は今何もかも殺したいんだろ?なら、まず俺からやるべきだろ」
まずは零羅を煽れ、目標を俺に変えるんだ。
「桜蘭、どうした急に?零羅を煽ってよ、ターゲットが移った所でお前死ぬぞ?それとも俺を助けたつもりか?」
「あぁ、助けるッスよ。絶対に助けて見せる・・・睡蓮、あんたには感謝しなきゃな。あんたのおかげで俺は、俺のやるべき事が分かった」
「するべき事?今やってるそれがか?」
「そうッスよ、俺のすべき事。いや、しなきゃならなくなった事・・・俺さ、睡蓮の事、本当信用してたんだよ?優しくて、頼り甲斐があって・・・けど、その正体は殺人鬼。俺、怒って良いのか泣いて良いのかわかんないよ。けど、これだけははっきりしてる。睡蓮、さっきあんたは俺の事を友達だって言っただろ?俺もそう思ってる。だから、友として、俺はあんたを殺す!!天上 睡蓮!!」
俺は剣を抜き、睡蓮に突きつけた。
「殺す?殺すだと?いつも能天気にヘラヘラしてるあんたが?戦いになってもガクガクと震えてたあんたが?人を殺したいなんて、考えたこともないお前が、俺を殺すだと!?」
「・・・・・」
俺から今の睡蓮に言うべき事は何もない、もう決めたからな。
「零羅、どこからでもかかって来い」
「まず、桜蘭さんから殺していいの?」
「殺せるのならな・・・けど、それで良いのか?さっきの攻撃、つまらなかったんスよね?」
さてと、次はもう一度俺から狙いをはずさなきゃな。睡蓮に勝つ方法は一つ、今のこの零羅をどう扱えるかだ。
言葉は通じる、意識はある。ただ本能のみで動いているのが今の零羅だ。だから、言葉を上手く使って本能を刺激すれば、零羅の行動をある程度制御出来るかも。
「そういえば、そうでしたね。はんのうがいまいちでした・・・」
「睡蓮なら、零羅の見たい景色が見えるかもしれないッスよ?」
「っ・・・桜蘭、お前・・・お前がこんな卑怯じみた作戦に出るなんてな」
睡蓮は零羅の殺気が自身に向いた事を察した。
「俺を騙してたお返しッスよ、俺以外と咄嗟の国語力は高いんスから。口から出まかせは、俺の一つの武器だ。
零羅、睡蓮を殺したいんなら競争しないッスか?俺も睡蓮を殺したい。どっちが睡蓮を殺せるのか、勝負しよう」
自分でもドン引きするくらい酷い事言ったな。人の命で競争するなんて・・・でも、心を鬼にしろ。口から出まかせは良いが、口は災いの元とも言うからな。だからこの勝負、絶対に負けられない。そして、俺が睡蓮を殺しきる。
「殺しのしょうぶ・・・それは、とてもおもしろそうですね」
食いついた・・・
「これで完全に2対1か・・・桜蘭、少しみくびっていたな。けど、この程度の修羅場は何度も潜ってきた。これ以上のピンチもな。世界は思いの外広くてよ、この癖のせいかちょくちょく嫌な目にも遭うのさ。けど、それでも俺は平穏無事に生活してこれた。これからもそうさせてもらうぞ!!」
睡蓮の目がギラついた。今のこれは死を受け入れる目じゃない。生への執着、生きる事へと渇望、そして、生きる為に殺す感じの目だ。
「行くぞ!!睡蓮!!」
俺は剣で切りかかる。この重たい剣と俺の身体能力だ。睡蓮のナイフに軽くあしらわれる。けど、機動力が俺に無いわけじゃない。風の魔法を上手く駆使すれば振り下ろした直後に緊急回避のように飛べるし、攻撃の直前に撃って攻撃を加速させたりも出来る。
俺はその方法を駆使して、なんとか睡蓮のナイフ捌きに付いて行った。
「っ・・・お前、思ってたよりも使いこなせてるじゃねーか」
「褒めてもらえて嬉しいッスね!!なら!これならどうだ!!」
「お前の悪い癖だ!!調子に乗ってまた同じ技を使う!!もう見切った!!」
「同じかな!?」
「この技!麗沢の!?」
これは麗沢がやってた技の応用、攻撃をすると見せかけて相手のカウンターを狙い技と攻撃を手前で放つ。そしてその勢いのまま身体を転がらせる、それと同時に俺は引き金を引いて風の魔法で空へと舞い上がる。
そして、カウンターを放って無防備になった上から俺はかかと落としを喰らわせた。
「くっ!!まさかお前がこの俺に傷を!!」
「うおおおっ!!」
『ガギィィィッ!!!』
止まらないぞ俺は。そのまま剣を横に張った、睡蓮はナイフで塞いだが、俺のコレは重いから、捌き切れない!!
「睡蓮、今両手で防御してるッスよね」
「は?それがどうした?」
「こいつをどう避けるんスか?」
「っ!!桜蘭の後ろっ!!」
俺はわざと攻撃を止め、横に避けた。その直後、俺の真横を何かが通り過ぎた。
「わたしが、かれを殺すのですから・・・」
零羅が俺の後ろから迫ってきていた。俺は、わざとこの位置に立ってたんだ、睡蓮から見えないように。睡蓮はなんとかかわしたらしいけど、ほんの僅かだけ掠ったらしい。
「っ・・・!!くっ、たったこれだけの傷なのに・・・痛みが全身を駆け巡りやがる・・・桜蘭ぁぁっ!!」
睡蓮、この判断は駄目だろ。知ってるだろ?俺は睡蓮、お前より優れてる部分が一つだけある、それは視力だ。特に戦いともなれば集中するから動体視力も自ずと上がる。目で見て判断して、そしてかわす。絡め手の無い無理矢理振ったナイフの速度じゃ、俺に攻撃なんて当てられない。
右、左・・・からの突き、そして上から零羅。そこに合わせて俺は左から攻める。
「ぐっ!!!何だよ、これ・・・何でお前が、こんなにも強い!?」
慌ててる、今度は拳が飛んでくる・・・けど、
「うおおおっ!!」
俺はそれに合わせてカウンターを放つ。
「ぐっ!」
「睡蓮、左だ!」
零羅が睡蓮の左側から攻撃が来るが、何とか避けた。
「・・・・・桜蘭さん、いやがらせですか?さっきからあてられない・・・」
当てさせないようにしてるんだよ。零羅の攻撃は一撃必殺だ、当たったらおしまいなのよ。
「なんなんだお前はっ!?何故暴走してる零羅の動きが読める!?」
「言ったッスよ。俺が睡蓮、あんたを殺すんだ。誰にも殺させない・・・俺が殺すって覚悟したんスから。
零羅の暴走は止められない。なら、俺が零羅に合わせれば良いんだ。俺、ずっとみんなの戦い方は見てきてたんスよ。それで理解してたのは、零羅の攻撃は普段は滑らかに動く。けど、暴走した今はまるで確実に敵を殺す為に動きが一つ一つ区切った動き方をしてる。区切って敵を確かめて、また次へ、俺はその区切りの中に攻撃を仕掛けてるだけッスよ」
「その洞察力・・・桜蘭、お前・・・まさか、覚醒ってやつなのか・・・」
「さぁ、分かんないッスよ。けど、俺はお前を逃しはしない。それだけは事実だ!!」
俺は攻撃に転じる。睡蓮は徐々に俺の攻撃を避けられなくなってきた。
「俺が、負ける?嘘だろ・・・全て滅ぼして来たのに、そうやって俺は生きてきた。なのに、その俺が、お前1人を滅ぼせないのか!?させるか・・・俺が!ここで滅びるかよっ!!」
「っ!睡蓮!!よせっ!!」
睡蓮はあろう事か零羅の攻撃に特攻した。思考しろ!こう言う場合はどうすれば良い!!どれが最適解だっ!?
「っっっ!!!くっ!!!何とか、掴んだぜ!!零羅!!」
睡蓮は零羅の攻撃をモロに喰らいながら、それでも零羅の腕を掴んでいた。
「必死ですね・・・けど、おもしろいです。さぁ、そのナイフとわたしの拳、どちらがさきにつらぬくのでしょう」
最適解はこれだ!!!
「零羅っ!!」
「んっ・・・」
弱点はここだったのか・・・俺は零羅の背後に周り、首に当て身を放った。零羅は意識を失い、そのまま倒れた。
「な、零羅を・・・止めただと?」
『ガチャ!!』
俺は睡蓮の頭に銃を突きつけた。
「零羅の弱点は、区切られた動作ともう一つ、一つの相手に集中し過ぎる事ッス。ポンサンと同じ、ターゲットを絞ると零羅はそいつしか見えない。三上が零羅を一撃で倒したのも同じ理由だ。意識を逸らした瞬間に三上は最速の技を放った」
俺が話してる間に俺の銃には、睡蓮を一撃で殺せる程の力が溜まった。さぁ、後は引き金を引け・・・睡蓮の目線が刺さる。俺に殺されるのは嫌だ、そう言ってる。
「桜蘭、お前にそれが引けるのか?」
黙ってくれ・・・その声を聴かせるな、友の声。俺はこれからそれの息の根を止める。震えるなよ・・・引け、そうしなきゃ死ぬのは俺だ。躊躇ったら終わりなんだ!!だから!引けよっ!!
『ガサッ・・・』
「桜蘭!やっと見つけた!!全く、何処に行って・・・」
エルメス・・・何でこんなタイミングで来ちゃうんだ?
「桜蘭!どうやら天は俺に味方したらしい!!」
「エルメスッ!!伏せろッ!!」
「えっ!?」
突然、仲間だと思ってた奴からナイフを撃ち込まれるなんて、俺もエルメスの立場だったら同じように突っ立ってると思う。けど、今はエルメスの反射神経が俺より優れてる事を祈るしかない。頼む!!避けてくれ!!




