リメイク第二章 次に現れるは食事と二次元を愛する昔の友「昔の友とはなんでござるか!先輩は拙者の良き理解者で有り最大の友でうんたらかんたら・・・」「黙れ」
俺はコソっと定食屋の裏口から店の中へ入った。厨房を通り、店のカウンターへ向かう。
・・・その男はそこにいた。
そこで朝っぱらから大盛りのご飯と山盛りの唐揚げ定食を食べていた。うん、確かにここの定食は大盛りだったな・・・それがこいつ、どんだけだ?何人前だろう・・・
「お?先輩ではござらぬか、久しゅうございまする。先輩はここでバイトでござるか?」
んで、あー、俺、俺こいつ知ってるわ・・・
「何やってんだ?麗沢・・・」
この太った男の名前は麗沢 弾。前にチラッと言ったっけか?高校の時の漫画研究部にいたやたら熱心な後輩だ。太った体、度のきついメガネ。リュックサックに中に見えてるのはラノベとかタペストリー、そして推しか何かのグッズ。ここで使えるものは一切無さそうだ。
そしてより印象付けるのは「ござる」とかの変な言葉遣い。確か昔の特撮の影響かなんかで侍みたいな話し方をしてるらしい。つまりこの麗沢という男は、超が付くオタクって所だ。
「何と問われても、拙者この間から何も食べて無くて腹がぺこぺこなのでござるが?そもそもここは定食屋、頼まないのは無作法でござろう?」
いやそうだけどさ・・・麗沢はそう言うと黙々と食べ出した。唐揚げの山がみるみる消えてく・・・
「ふぅ。やはり朝、昼、夜三食をしっかり食べねば生命活動すらままならぬなぁ、ご馳走様でござる」
そうですか・・・麗沢は一気に朝から有り得ないだろと言うほどの山盛り唐揚げ定食を平らげた。
「で、あんたの変なこだわりはどーでもいいけどさ麗沢、本当なんでここにいんの?」
とりあえず話をしよう、こいつが何でここにいるのか全く見えてこない。
「お?拙者は普通に高校でラノベとアニメを照らし合わせながら見てたら急に吹っ飛ばされたのでござる」
あ、それは俺と同じ感じなのか。てか、アニメとラノベを照らし合わせ見るってなんだ?どう言うアニメ視聴の仕方してんだ?
「はぁ、サムさん・・・こいつ俺の知り合いでした。高校の時の後輩ッス」
「そ、そうらしいね・・・」
サムさんもこの麗沢ののーてんきに困惑してる。
「あ、それと先輩?聞き捨てならぬ事が一つ、朝ごはんをしっかり食べる事が変なこだわりとは聞き捨てならぬ。朝食とはまさに一日の活動を起こすための最も重要な要素であり・・・」
あー長い長い、スイッチ入ると説明が長い。
「あの、麗沢をここに連れてきたのって店長さんッスか?」
俺は麗沢が語ってる間にちょっと店長さんに質問した。
「まぁな、途中から俺が引き継いだって感じだ」
「麗沢の奴、この世界の事どれだけ知ってるんスか?あれどう見ても、ここを異世界と感じてないっぽいッスよ?」
「あぁ、そうなんだよ・・・サクラ君よ、あいつ何なんだ?俺、全部話したぞ?」
「ぜ、全部?」
反応したのはサムさんだ。
「あぁ。ミカミ国王の事、奴の圧政の事、今置かれてる状況、反逆者たちの事、なんならこれからサクラ君に教えようと思っていた事まで全部伝えたさ・・・だが、彼はそれを全部聞いた後『唐揚げ定食超大盛りで』と一言・・・」
「あ・・・あっ・・・」
言葉が出なかった、俺はあんなに混乱してみんな巻き込んでたのに、こいつは真っ先に食うことを選んだ。
「・・・と言う訳で、朝、昼、夜をしっかり食べて生活する事が拙者の生き方であり、誇りなのでござる。キリッ!!」
あ、ようやく終わった。
「さて、それはさておき先輩はここで生活してるのでござるか?拙者、異世界に飛ぶと言う展開を生で体験するのは初めて故、中々ラノベのように上手くいかなくてな?生活がままならぬのでござるよ」
あぁ・・・こいつ一応ここが異世界という認識はあるのか。
「いやはや、異世界とは言えども二次元感はサラサラ感じぬし、あまり現実と変わらぬ世界でござる。拙者の夢とは程遠いでござる。あ、で、先輩?つかぬことを聞くが、先輩は今どのような生活してるのでござるか?出来れば参考にしたいのでござる」
こいつ俺を慕ってんだか慕ってねーんだか、わかんねーな。
麗沢は基本ラノベの知識のみで生きている。ある程度の生活の基準は持ってるが、それ以外はラノベがベースだ。だから無駄に知識だけ持ってて、特に生活の基礎というのがズレてる。簡単に言えば米を炊くのに炊飯器使えばいいのに、わざわざ土鍋を使うって感じだ。
つまり、めんどくせー奴だ。
「あのな?俺と一緒に来るって意味を考えろよな?俺、一応はこの世界の王様と対立してるの、そいつと戦おうとしてるんス、三食寝床付きの生活なんてできねーッスよ?」
「ほー、レジスタンスと言うやつでござるか!そう言うパターンのストーリー。中々面白そうでござるな、ならば拙者も付き合おうぞ!」
だーめだこいつ、話が通じねー・・・でも
「あ、まぁ協力してくれるならありか。とりあえずサムさん、こいつ俺たちの味方でいいらしいッス」
「み、みたいだね・・・」
「皆!よろしゅう頼む!我が名は麗沢 弾!〇〇県立✖︎✖︎高校が生徒にして漫画研究部部長!そして絵師の事業も携わっている!その時の名は『レイダース』なりっ!!去年の即売会はオリジナル本で挑んだ次第でござる!」
確かそれ俺がコスプレやらされたやつだ、自分で言うのもアレだけど、結構クオリティ高いのが出来たんだよな。懐かしいわ。
「よ、よろしく・・・」
「しかーし!一つだけ条件があるでござる!」
なんかいやーな予感。
「1日5食の提供をお願いする!!キリッ!!」
ぶち・・・
「くぅぉんのテメェこらぁ!!!」
「お?」
俺はあまりの麗沢ののーてんきっぷりに怒りが爆発した。
「状況考えろや!!みんな命張って三上の野郎と戦おうって状況なのにテメェはなんスか!?食うことしか脳がねーんスか!?そもそも俺たちは異世界に飛んでんの!!それですら飲み込めねー状況なのにこの異世界じゃ、俺とおんなじような存在が世界を乗っ取っちまったんス!!最初は俺には関係ねーって思ったさ!!けど、お前俺より前にここに来たんだろ!?なら少しは責任っつーか、緊張感ぐらいは持てよ!!」
「お?だから拙者は食べてるのでござるが?腹が減っては戦はできぬ。三上だか三鷹だかよく分からぬが、それと相まみえる時、空腹では実力は出せぬでござる」
コノヤロー、一応は分かってんのか分かってねーんだか。いちいち腹が立つなぁ・・・
呆れた、と言うか俺の体力がもう限界だった。こいつに怒っても仕方がねーや。まぁ昔からこう言う奴だっけ、あらゆる事にのーてんき。
「まぁ、先輩がそこまで言うのなら拙者もあまり贅沢は言わぬが、せめて一日三食一汁三菜ぐらい有ればなんとか我慢出来るでござる」
麗沢はそこで妥協した。むしろ雨にも負けなさそうなそんなメニューで良いのかよ、とは言っても3食は絶対なのね。
「は、はは・・・サクラ君の知り合いは随分と個性的だね・・・君たちの世界ってこんな人多いの?」
「サムさん、それは偏見ッス。この馬鹿は俺たちの世界でもそうはいないッスよ」
「だ、たよね。でも、味方になってくれたのは有りがたい」
「よろしく頼みまする〜!で、店長殿一つ良いか?」
ん?麗沢の野郎・・・このパターンはまさか!?
「ん?何か質問か?」
「いや、このやりとりで少し疲れてしまってな?小腹を満たせる物を一つ欲しいのでござる」
「はぁ・・・」
店長さん・・・こいつの小腹満たしってのはな、ワンホールだ。
「マルゲリータピッツァをワンホール頼みたいのでござる」
かっちん!
「ごらぁぁぁっ!!てめ!さっき自分で言った事もう忘れたのか!?このデブが!!」
口が悪くなってきて申し訳ない、少しだけ待っててくれ、すぐ終わる。
「デブとは正に食事を愛して止まぬ者!最高の褒め言葉でござるな!」
「うららららっ!!だらららっ!!?」
俺はもう何言いたいのか分からなくなって来た。
「でも先輩、こんなとこで大声出してはその三上とやらに気づかれるのでは?」
このタイミングで正論言うかぁっ!?
「ここは落ち着くでござる。拙者のピザ1ピースあげるでござるから、と言う訳で店長殿、頼みまする!」
「だぁぁっ!!この!!デブでも食ってろピザァァァッ!!!」
「先輩、逆でござる」
俺の中で何かが弾けた気がする。けど、この時でも俺は多分心の底からブチ切れなかったんだろうな・・・
けど、俺はこの後このやりとりに感謝した。この世界ではこれくらいの異常さを当たり前のように感じなきゃ先に進むことなんか出来なかっただろう・・・




