帝都内観光
「おーい?あんたら2人の事だぞ?見ない顔だし、何か書いていたのを見る限り今日登録したんだろ?なんでそれがいきなりギルドマスターに呼び出されるなんて事態になってるんだ?」
そう声をかけてくるのは先ほど隣の受付で依頼の受注処理をしていた冒険者達のようだ。
凶悪な目付きで顔には大きく傷が付き、身長も180を超えていて、初めてあった者は皆萎縮してしまいそうな見た目をしている。
(うわ、すっげえ凶悪フェイスだな…というかやっぱり目立ってたか。ヴィヴィアンさんも美人だからそういう面でも目立ってたのかな…)
「なんでもありませんよ?ちょっとアレですよ…言伝をですね?伝えたんですよ」
「言伝を伝えるのがなんで新人冒険者なんだよ?」
「確かに新人ですがそこそこの実力をとある方に認められまして。推薦状を書いてもらったんですよ。その推薦状を書いてもらった方に言伝を頼まれていたので…」
「へぇ、推薦状か!どのランクなんだ?」
「Dランクですね。」
「いきなりDか。こりゃすげえな、期待の新人ってやつか。その推薦状を書いてくれた人ってのは誰なんだ?」
「えーっと…ですね。」
なんて返そうか悩み、ヴィヴィアンが助け舟を出そうとした瞬間であった。
目の前の男の後頭部に握られた拳が落とされる。
「コラ!ジル!この子達困ってるじゃない!興味を持つのはいいけど新人の子を困らせるんじゃないよ!二人ともごめんなさいね?」
「いってぇっ!なんだよミラ!」
「なんだよじゃないわ!貴方いつもそうやって新人の子に絡んで怯えさせてるじゃない!自分の顔を考えなさいよ!…ごめんなさいね?大丈夫だったかしら?こいつ見た目はこんなだけど、中身は一応普通だから心配しないでね?」
「こらこら、一応ってなんだ、一応って」
「うるさいわね。今この子と喋ってるのよ?ちょっとあっちいってなさい」
しっしっ、とまるで犬を追い払うかのような仕草にため息を吐きながらジルと呼ばれた男性は酒場のコーナーへと向かう。
「えーっと…」
「ごめんなさい、うちのジルが突然話しかけちゃって。私の名前はミラ、そんであっちがヴィルジールよ。私や皆はジルって呼んでいるけどね。これでもBランク冒険者としてPTを組んでいるのよ?後二人ほどいるんだけど…今日はちょっと居ないわね」
自己紹介してきた彼女は深い紫色の髪をボブ程度までに伸ばしており、顔立ちや雰囲気からはBランクらしい、頼れるお姉さんといった感じだ。
「これはご丁寧にありがとうございます。私の名前はイーリスと言います。それにしてもBランクなんて凄いですね。」
「ヴィヴィアンと申します。イーリス様の御付です。」
「ありがと!イーリスちゃんにヴィヴィアンちゃんね…それにしてもこんな美人な従士が居るなんてイーリスちゃんは貴族のご令嬢さん?そのフードで顔を隠しているのはそのせいかしら?」
「いえ、ただの旅の冒険者です。ヴィヴィアンさんには今回この帝都の案内をしてもらってます。フードで顔を隠しているのは…えっと、まぁ。こういう外見でして…」
そう呟き、そっと軽くフードを上げて顔を見せる。
「あら…あらあら…こんなに美人な子は初めてみたわ。ヴィヴィアンちゃんも凄く美人さんだなって思って見てたけど、イーリスちゃんはそれ以上ね…本当に旅の冒険者かしら…」
「あ、ありがとうございます…」
(フフフ…そうだろうそうだろう!もっと褒め称えたまえ…いやぁ、この世界に来てホントよかったぜ)
「…っと!ごめんなさい、止めにきた私も根掘り葉掘り聞いちゃって。ジルの影響かしら…」
「いえいえ、大丈夫ですよ。今回は登録をしにきただけなのでこれで失礼します。」
「それではミラ様、失礼いたします。」
「はーい、もし何かあったら私達はだいたいここにいるから良かったら声かけてね!」
「わかりました、それでは!」
その後、別れを告げたイーリス達はヴィヴィアンに頼んで帝都の観光をすることになる。
「ここがアズラ教会…」
そう呟き見上げるその建物は先ほどみたギルド本部とはまた違った迫力を持つ建物であった。
建物の様式はゴシック様式で巨大な尖塔が2つ、教会の建物から大きく聳え立ち、神々しさを建物から感じる。
(うおおおお…いったい何年かけてこんな大聖堂を作ったんだろう…。何かもう感動しすぎて声もでねえな。圧巻だ…)
「す、凄い建物ですね…」
「このホルノス大聖堂は建国と同時に建築が開始された聖堂です、マヤミルの中でも自慢の建築物ですよ」
「は~…ここで祀られているのは?」
「勿論アズラ神ですよ。クレイ帝国では広く知られた宗教ですね。」
「なるほど、ここがアズラ神教の総本山なんですね。」
「そうですね。」
アズラ神教は食物も、大地も、空気も、全てアズラ神によって創造されているので、常にアズラ神への感謝を忘れてはなりません。という教えがもっとも広くしられている。
つまり日本で言う所の「いただきます」などの習慣はこの宗教によるものだろう。
「クレイ帝国の国民全員がアズラ神教に信仰深いというわけではありませんが、食事の礼は幼い頃から教えられる事の一つなので、体に染み付いている方がほとんどですよ」
「なるほど、なんだか少し故郷と似ていますね」
(このゲームを作ったのは海外のゲーム会社だけど、会社名がGAIZINって付けるくらい日本が好きな事で有名だからなぁ…その辺は似せてきてるんだろう)
「そうなんですか?」
「えぇ、私達の国でも別にその宗教信者というわけでもないけれど、その宗教上のイベント事は皆やったりするんですよ。」
「庶民レベルにまで教えを浸透させるというのは難しいんですが、すでにやられていたなんてイーリス様の故郷は本当に凄いんですね」
「そうなるんですかね?ありがとうございます」
「よかったら中をみていきませんか?」
「それなら是非お願いします!」
さっそく案内されたホノルス大聖堂へと入ると、そこはまさに別世界。
壁面や天井に描かれた絵画や、時代背景が中世とは思えないほどの美しきステンドグラス、そしてその巨大な講堂内には、大きな女神の像が立っている。
「もしかしてあれが…?」
「はい、アズラ神です。」
女神像の足には大地のようなデコボコした場所に着いており、右手には水の水滴を象ったと思われる物が。左手には、空気の流れのような流線の像がそれぞれの手の平に存在している、
そしてその女神像に向かって、微動だにせず立ちっぱなしのまま祈りを続ける神官らしき人物達が何人か見える。
「おや…、参拝者の方でしょうか?」
そう話しかけてきた人物はそこそこの高官なのだろうか?服装は地味めではあるが、他の物に比べて上等そうな服で身を包んでいる。
「ここに来たのは初めてなのでどのような物なのかな?と思いまして」
「なるほど、それなら一度祈りを捧げていってはどうでしょうか?旅の無事を祈れば効果は必ず現れますよ」
どうやらローブの格好から旅の者と思われたようだ。
「それじゃあ、そうさせてもらいますね」
奥へと入り、神官達らしき人物と一緒に見様見真似で祈りのポーズをとり、トラブルの無い旅になりますように。と祈りを捧げた後はその聖堂を出て行くのだった。
ホルノス大聖堂のモデルはドイツのケルン大聖堂をモデルにしています。
そのケルン大聖堂を画像としてみながら今回の話を読むと少しは入り込めるかなって思ってます。




