第66話:『おばちゃん、怒りの影の咆哮を聞く』
沈黙の谷を後にし、
トモエたちは北の大地をさらに進んでいた。
空気は次第に乾き、
地面は黒い岩肌へと変わっていく。
ユウトが汗を拭いながら言う。
「おばちゃん……
なんか、急に暑なってきたな……」
カイルも額に汗を浮かべながら頷いた。
「火山地帯が近い証拠です。
この辺りは“怒りの影”が生まれやすい土地……」
リリアは胸に手を当てた。
「怒りの影……
沈黙とは違う……
もっと激しい影……」
セイルは険しい表情で言った。
「怒りは、心の中で最も爆発しやすい影。
沈黙の影とは比べ物にならないほど危険です」
トモエは拳を握った。
(怒りの影……
誰かの心が、炎みたいに燃えとるんやろな)
(せやけど……
うちはその怒りを否定せぇへん)
(怒りは、心の叫びや)
「よっしゃ。
火山地帯、行くで!」
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◆ ◆ ◆
◆ 火山地帯 ―― 赤い大地
火山地帯に入ると、
地面は赤く染まり、
熱気が肌を刺した。
ユウトが息を呑む。
「うわぁ……
地面が……光ってる……!」
カイルは地面に手をかざしながら言った。
「マグマが地表近くまで上がっています。
この熱……普通じゃありません」
リリアは震える声で言った。
「怒りの影が……
この土地全体を刺激している……」
セイルは静かに言った。
「怒りは“連鎖”する影。
一人の怒りが、周囲の怒りを呼び起こす。
この地帯は、怒りの影に飲まれかけています」
そのとき――
――ドォォォォン!!
地面が大きく揺れた。
ユウトが叫ぶ。
「おばちゃん!!
地震や!!」
カイルは首を振った。
「違う……
これは“怒りの波動”……!」
リリアは顔を青くした。
「怒りの影が……
近くにいる……!」
トモエは前に出た。
「みんな、構え!」
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◆ ◆ ◆
◆ 怒りの影、現る
赤い地面の裂け目から、
黒い霧が噴き出した。
霧は渦を巻き、
やがて巨大な“獣の形”を作り始めた。
ユウトが震える声で言う。
「おばちゃん……
なんか……でっかい……!」
カイルは杖を構えた。
「これは……
怒りの影の“外殻”……!」
リリアは息を呑んだ。
「怒りが……
獣の形になって……!」
セイルは静かに言った。
「怒りの影は、
“形を持つ影”の中でも最も暴れやすい。
刺激すれば、一気に爆発します」
怒りの影は咆哮した。
『アアアアアアアアアアアアアアアッ!!』
その声は、
怒り、悲しみ、憎しみ、悔しさ……
あらゆる負の感情が混ざった叫びだった。
ユウトが耳を塞ぐ。
「おばちゃん!!
これ……
怒りの声や……!」
カイルは震える声で言った。
「こんな……
こんな強い影……
どうやって……!」
リリアは涙をこらえた。
「怒りの影は……
誰かの心の叫び……
でも……
こんなに苦しんで……!」
トモエは影に向かって歩き出した。
「怒りの影。
あんた……
何に怒っとるんや?」
怒りの影は、
トモエの言葉に反応したように震えた。
『……許せない……
許せない……
許せない……!!』
ユウトが息を呑む。
「誰か……
誰かを許せへんのや……!」
カイルは影の波動を読み取る。
「これは……
“裏切り”の怒り……!」
リリアは涙を流した。
「誰かに裏切られた……
その怒りが……
影になって……!」
セイルは静かに言った。
「怒りの影の核は、
“裏切られた心”です」
トモエは影に近づいた。
「怒りは悪やない。
怒ってええんや。
怒りは……
心が傷ついた証拠や」
怒りの影は揺れた。
『……痛い……
痛い……
痛い……!!』
トモエは影に手を伸ばした。
「痛いんやろ?
せやったら……
うちが受け止めたる」
怒りの影は、
トモエの光に触れた瞬間――
――ドォォォォン!!
爆発するように暴れ出した。
ユウトが叫ぶ。
「おばちゃん!!
危ない!!」
カイルは杖を構えた。
「怒りの影が……
暴走した!!」
リリアは涙をこらえた。
「怒りが……
大きすぎる……!」
セイルは静かに言った。
「怒りの影は、
“核”を見つけなければ癒せません。
この獣は外殻……
本体は別にいます」
トモエは拳を握った。
(怒りの影の核……
どこかにおる)
(うちは……
その心を救ったる)
「よっしゃ!
怒りの影の核、探しに行くで!!」
虎柄シャツが熱風に揺れ、
おばちゃんは怒りの影の中心へと走り出した。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。
第66話では、
火山地帯に潜む“怒りの影”の外殻との遭遇
が描かれました。
怒りの影は、
沈黙の影とは違い、
“爆発する影”。
その正体は、
“裏切られた心の怒り”。
しかし今回現れたのはあくまで“外殻”。
本当の怒りの核は、
まだ姿を見せていません。
次回、第67話では
怒りの影の核――裏切られた心の本体との対峙
が描かれます。
これからも、おばちゃんの物語を
どうぞよろしくお願いいたします。




