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第五章「淘汰されるは人か獣か」4

 レオンは、地下都市から都市間鉄道地下駅に戻ってきた。駅に併設された貨物の積載場に移動し、ライアンと合流した。トラックで来たあたり、頼んでいたものは用意できたみたいだ。


「地下鉄の通信ケーブルは切られていた。ちゃんと、調べないで入るからそうなる」


 死に物狂いで戻ってきた仲間に駆ける言葉じゃないだろうと思いつつもレオンは返す。


「偵察ドローンは異常を検知できなかった。嫌な予感がしていたから、急いだし仕方ないだろう」


「戦場では慎重さを欠いた奴も死にやすいんだぞ」


 まったく、返す言葉がない。その通りだと思う。


「ちなみに、昇降扉に侵入用の穴があけられていた。あの鉄板も、弾丸は全く通さねえが、フォトンブレードだと貫通させられる。まさか、機械獣がここまでしてくる時が来るとはな」


「ギガセンテは、生産工場としての機構を体内に備えている。しかも、組み上げる機械獣は、必要に応じて自由自在に変更が可能だった。最近のイレギュラー個体は全部奴の仕業だったんだ」


「まったく、厄介な奴だよな」


「それよりも、頼んでいたものは持ってきてくれたか?」


「ああ、持ってきたさ。お前がやろうとしていることに賛同はしないけどな」


 レオンはこれからエーデルに向かい起動前のギガセンテに乗り込む。グレゴリーに直接立案して、自らその役目を担ったのだ。


「なんで、お前は危険な役割ばかりやろうとするんだ。オレには全く理解できん」


「それでいいさ。あんたには、愛する人がいるんだ。パウロをしっかり守ってくれ」


「お前にもいるだろうが」


「確かにそうだな」


 ライアンは、輸送トラックの荷台を開ける。そこに載っているのは浮上式バイク。ボディーに装甲がいくつも貼られている。


 ライアンが昇降スロープを降ろす。


 レオンはスロープを渡って荷台の上にのぼった。


「倉庫の中でほこり被ってたけど、一応動きはした。燃料も入ってる。お前の整備士に感謝しろよ。この一大事に、動ける整備クルーがいなかったから専門外なのに、資料見ながらやってくれたんだ」


 レヴィンスが難しい顔して、四苦八苦しながら整備する姿が頭に浮かんだ。


「それと、こいつも持っていけ」


 ライアンが一丁の拳銃を差し出した。人が使うにしてはかなり大きいような気がする。


「飛び道具がワイヤーアンカーだけじゃ不便だろうと、開発したんだと」


「これも、レヴィンスが作ったってのか?」


「ああ。試験はこれからだったっていうから、どこまであてにできるか分らねえけどな」


 受け取ると、銃は体の重心が偏るほどの重さがあった。機械の腕でも握りやすいように、グリップは大き目だ。引き金も、押しやすいようにスイッチ式。そして銃身がとにかく大きかった。骨董品を思わせる流線形。ハンマーに近い部分はかなり太い。おそらく、中に制御装置が収納されているのだろう。銃口に向かって、銃身は細くなっていくが、拳銃にしてはかなり太い。銃口もかなり大きかった。


「対機械獣用フルオートピストル。対物ライフルの弾丸を装填可能で連射もできるらしい。ただ、携帯性を重視したせいで、あまり多くの弾を装填できない。普通の拳銃と同じで十発が限度らしい」


「名前は?」


「さあな。識別番号はL31と言っていたな。通称とかはこれから決めるんだろうよ。あとこれも持ってけ」


 ライアンはベルトを差し出した。ベルトには銃ホルダーが付いている。


 レオンは、ベルトを受け取ると、装甲の隙間に入れ込み、腰に巻き付ける。留め具で端同士をつないだが、随分と遊びができてしまった。しかも、調整できそうな構造をしていない。


「なんだこれ? どうやって使うんだ」


「留め具あたりにスイッチがあるだろ。それ押すと自動で締まる」


 スイッチを押すとベルトは収縮し、収まりが良いところで固定された。ベルトは装甲プレートの下に隠れているが、ホルダーだけが、外に出ている状態だ。動きも制限されないし、使いやすそうだ。


 レオンはホルダーに銃をしまった。


「レヴィンスに会ったら、伝えてくれ。感謝していると」


「ばーか。お前が言いに行け。幼馴染なんだからよ」


 予想外な返し方をされて、レオンはしばし唖然とした。だが、その理由もすぐ納得がいった。


「ああ、この戦いが終わったら言いに行くよ」




 ライアンは、レオンの語気の変化を聞き逃さなかった。帰ってくる自身のなさを滲みだしていた。


「お前、また死ぬつもりか」


「やすやす死ぬつもりはない。だが、死んでどうにかなる状態ならオレは死を選ぶと思う」


「お前は、本当に大バカ者なんだな。お前が死んだら、そのあとの都市防衛、どうするつもりなんだよ。まさか、オレに全部投げだすってんじゃねえだろうな。冗談じゃねえぞ。ギガセンテがいなくなっても、また新たな脅威が生まれる。アルテミアがある限り、機械獣は都市に侵攻してくるんだ」


「そのためのレフォルヒューマンだろ。大丈夫だ。俺が死んでも、誰かがオレの代わりになってくれる」


「お前の代わりなんてそう出て来ると思うな。死んだ頃の記憶を思い出しておいて、闘志を燃やして戦場に立てる奴なんて他に誰がいる」


「気づいていたのか」


「わかるに決まっているだろ。お前のことは、お前が人間だったころから知っているからな。いいか。お前が死んでいいのは、都市と一緒に滅ぶ時だ。それ以外で死ぬのは、オレが許さない」


「わかったさ。戻ってくるよ」


 まだ煮え切っていない。ライアンは、レオンの肩を掴もうとした。しかし、オープン回線で作戦の指示が飛んで、手を降ろした。


『作戦開始時刻となった。ギガセンテ討伐作戦を開始する。レオンファーベルクは、エーデルに向けて出発しろ。他の者は、それぞれの持ち場につき、ギガセンテの侵攻に備えろ』


「開始時刻だな。行ってくるよ」


「おまえ、死ぬなよ」


「ああ、わかってる」


 レオンが、浮上式バイクのエンジンをかけた。勢いよく、飛び出すとすぐにその姿は見えなくなった。

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