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Magic & Dimension 14

●

 俺のステ振りはInt=Crt>Dexだから、この杖を使うにあたってステを振り直す必要はない。

 俺は今使っている杖のヘッドからオーブ『クリプト』を抜いて『悪魔の微笑み』のヘッドに挿した。人気オーブ『クリプト』は、豆さんもユウキちゃんもはるゆりも持っている。それはこのオーブが破格の性能だから。どのジョブでも使える。


「ん? もう挿し替えたの?」豆さんに聞かれた。

「はい。早く挿してみたくて」

「ゲーム内じゃ使えないけどね」豆さんは笑っていた。


 クリプトの能力は『杖性能2倍』。だからどのジョブでも引っぱりだこ。悪魔の微笑みにこのオーブを挿せば。俺はどんな数字になるのか確かめたかった。しかもこの杖には後二つオーブを挿せる。もしもクリプトがあと二つ手に入ったら? Crtはいったいどうなっちゃうんだ? ステータス表示不可になるんじゃないのか……。


「どう?」

「使ってみたいです。ボス戦したいけど……」

「死んじゃうだろね」

 俺は頷いた。分かっている。現実のビーストを相手にするまで『悪魔の微笑み』は封印。


 その後も俺たちは運テイマ狩りを続けた。ツェリジュの塔、ジャオウエ海岸、転々としながら狩った。午前五時を過ぎた頃。良オプ立て続けに出た。狙っていたスキルLv+。それが幾つも。しかもそれまでには『挑発』や『クリダメup』、『ステータス+5%』なども複数出ていた。

 『挑発』は豆さんが付ける。MOBのヘイトを集める効果がある。『クリダメ』系は俺が貰った。『ステ+』はジョブに合わせて分けた。幾ら集めても転移失敗すれば消えるから多くて悪いことはない。

 『部位破壊成功率up』はユウキちゃんに。『凍結時間+』ははるゆりに。『貫通率up』は俺が貰い、『クールタイム短縮』は全員で分けた。はるゆりは「私はクールタイム短縮要らない。凍結波動最速は確保出来てるから」と言った。俺もアロレ最短に調整していたから『クールタイム短縮』はそれほど必要としなかった。装備品のクールタイム短縮と違ってオプのクールタイム短縮は0.1秒とか0.2秒とか。オプで縮めるより装備品の性能で縮めた方が利口だ。

 『ヒール量20%up』『麻痺発動率15%up』『ギロチンLv+1』『焔属性30%up』など俺たちが必要としないものは全て店売りした。結構ふっかけたつもりだったが即売だった。

 『HPup』系『抵抗』系『属性耐性』系など、現実のビースト対策にならない物は全て捨てた。ブレス耐性や魔法回避率など。


 夜が明ける頃、俺たちはいったんゲームをログアウトして朝風呂に入った。豆さんと二人で大露天風呂に入ったけれど、朝日は見えなかった。太陽は昇ってきているはずなのに、空は暗いままで相変わらず玉虫色の稲光走っていた。


「凄い眺めだな」豆さんは言った。ずっとこの空の下車走らせてきた人が今更それを? と思ったけれど、この光景を眺めながら風呂に浸かっている不可思議さを言っていると分かったから「そうですね」と答えた。


「腹減ったなぁ」次いで豆さんの口から出たのは呑気な一言だった。

 俺が笑って頷くと、「風呂上がったらバイキングに行こう」と言った。


 風呂を上がって支度済ませるとちょうど七時だった。朝食バイキングが始まる時間だ。俺たちは全員でバイキングに行った。既に凄い人混みだった。こんなにプレイヤーが来てるのか、と思った。フロントで説明された通り、ここに泊まれるのは300レベル以上のプレイヤーのみだ。実際、300レベそこそこのプレイヤーが来ているとは考えづらい。ピグノズも思いとどまった。ここに居るのはレベルカンスト組に違いない。


 空いているテーブルに座り、目一杯皿を並べて、俺たちは朝食を取りながら、隣り合わせたテーブルの人達と話した。情報交換。取っつきにくい人もいたけれど、皆良い人だった。思った通り皆レベルカンストだった。皆強そうに感じた。昨夜風呂で会った人は見かけなかった。話の合った人とはフレンド登録した。


 悪魔の微笑み3スロ4オプのことを話すと皆驚いていた。そこから、少しの間杖談義に花咲いた。銘々、自分の杖の自慢話をした。見た目も年齢もバラバラでも、皆ゲームオタ。再認識した。


 とまあ、そんなことはともかく。女の子は少なかったから、と言うよりほぼいなかったから俺たちのグループは羨望の眼差しで見られていた。特にはるゆりは性格を知らなければ、十人が十人惚れるルックス。あまり褒めたくないけど。あちこちのテーブルからチラチラ見られていた。気づいてかどうか知らないけれど、はるゆりはずっとお澄まし顔作っていた。


 部屋に戻った俺たちが再びゲームにログインすると。やこたんとキノぽんからオーブが届いていた。


『オブ出たぜー。あと何がいる? なんでも言ってくれー』キノぽん。

『ポゴシケ2個取ったよー。寝るわ。ファイティーン』やこたん。


 届いたオーブの性能は以下。


チェクチェク→クールタイム減少1秒・Dexが高いほどMATK増加

ポゴシケ→詠唱時間短縮1秒・クールタイム減少1.5秒


「チェクチェクはよるおす。ポゴシケは俺とユウキちゃんで分けよう」豆さんは言った。妥当だと俺は思った。


●

 その後、俺たちはメインキャラでボス連戦。狙いは杖オプ。オプション転移は同部位からしか出来ない。体装備なら体装備から。指輪なら指輪から。杖に良オプ付けたければ良オプ付いた杖を泥するしかない。


 湯布院では一泊のつもりだったけれど、この調子じゃ何泊になるか分からない。俺たちは眠気覚ましドリンク飲みながら、おでこに熱さまシート貼って、時々気分転換にユーチューブ観て、延々ゲームした。はるゆりが豆さんに頼んだホットアイマスクは危険物だった。一撃で深睡眠ステージⅣまで持っていかれそうになる。

「はぁ、ちょっと疲れたんでこれ試してみるわ」と言ってアイマスク着けて横になったはるゆりは、

「ヤバっ」とアイマスクはね除けて跳ね起きた。「これは一瞬で持っていかれる」と。

「どれどれ」と言って試した俺たちも一斉に「これヤバっ」と跳ね起きることに。


「コレはこの限界作業ゲータイムが終わった後に使おう」

「ですね」


 そんな感じで俺たちは装備とオプションを揃えていった。昼食バイキングは抜いた。コンビニ飯で済ませた。三時頃一風呂浴びて、再びゲーム。夕食バイキングに顔出すと、朝居た人達とはだいぶ面子が変わっていた。多分多くが出立し、多くが到着したんだろう。情報交換もそこそこに部屋に戻ってゲーム。ギルメンもずっと手伝ってくれていた。入れ替わり立ち替わり。


「ちょっと違うゲームやりたくない?」

「うん……、いや、ゲームはもう……」

「ですねぇ……」

 泣き言言いながらもずっとゲームを続けた。


 そして午後九時。


 脳死寸前のこの状態でステ振りとかオプ転移とか装備強化とかやるのがどれほど危険か分かっている。特に鍛冶屋。オプ転移と装備強化。発狂してスマホを床に叩きつけてしまうかも知れない。


「一眠りしてからやった方が良くないか?」眉間じわに中指あてて、眠たそうに豆さんは提案したが。

「いや。やってしまいたい。これだけ揃えたんだもの。気になって眠れないわ」はるゆりは強行突破。

 俺もやってしまいたかった。「賛成。安心してグッスリ眠りたい。結果がどうあれ……」語尾は我ながら力ない感じになった。


「だったらやるか」豆さんが大きく息をついて。

「やりましょう」ユウキちゃんもガッツポーズを作った。随分眠そうなガッツポーズだった。ハムスターにやらせた方が強そうだと思った。


 まず俺とはるゆりはスキル振り直し。予定通り俺はスピア一直線でLv7取得し、余ったスキルポイントでウオール取得した。ウオールはLv5までしか取れなかった。スピア取得に必要な小魔法がいくつか使えるが、実際使う機会は無いと思っていい。俺のスキルはスピアとウオール。この二つだ。


「物理メイジの大スキルは必要sp鬼すぎ」はるゆりが言った。トップスキル到達に要するポイントが多職より多く必要という意味だ。


 そのはるゆりは凍結波動Lv7取得。白(はく)Lv7より少ないスキルポイントで済むので、パッシブスキルの属性強化Lv7取得した。それでもまだスキルポイントは余っていた。エンチャント(魔法付加)取得した。Lv5までしか取れなかったが、はるゆりの火力なら十分強力なエンチャになる。そして実はエンチャントLv+2オプを二つ拾っている。オプ転移成功すればエンチャントLv9。


 ユウキちゃんは座標移動と分身を捨てた。部位破壊(クラッシュ)Lv7、MP補填Lv5、ディメンショナルウオールLv5取得した。MP補填は自分のHPを犠牲にして対象ptメンバーのMPを補填する。なので。ステータスも振り直した。Vit=Luk>Dex。


 豆さんもステータスを振り直した。Vit振りを捨てた。IntとDexに全て振った。スキルはディバインブレスとリザを捨て、さらに唯一の攻撃呪文ブリータ(浄める)をLv1に留めて、余ったスキルポイントを支援スキルに振った。魔力増幅(アンプリファイア)Lv7、クールタイムカットLv1、種族値増強Lv4、ジョブ解放Lv4。そして勿論ヒールはLv7。クールタイムカットはどのビショップもレベル1で止める。使った途端に対象のクールタイムはカットされる。レベル7まで上げても意味はない。


 次は装備。変更は俺と豆さん。俺は前述の通り杖を悪魔の微笑みに変える。豆さんはチェインメイルを脱いでローブを着る。HP増装備を全て捨てた。対ビースト(現実世界)に有効な性能持つ装備を組み合わせた。


 変更した装備は強化しなければならない。+9まで。クソ鍛冶屋で。


 俺も豆さんも杖の件があったからモスカに全幅の信頼を置いた。しかしその信頼は見事に裏切られた。俺と豆さんは上がったり下がったりをジェットコースターみたいに繰り返しながらようやくの思いで+9まで持っていった。俺はともかく豆さんは装備四つ変更だからジェットコースター四回。


 毎度の事ながらこんな酷い目に遭いながらも+9になった時の達成感はハンパない。その過程で吐いた罵詈雑言の数々も忘れ、俺と豆さんは放心状態でスマホ床に置いてガックリとうなだれた。

「はあ……。もうこれ以上気力残ってないんですけど……」俺が言うと。

「俺もだ……」豆さんも同意した。


 けれど一番の大仕事が残っている。オプ転移。


 俺たち四人はギャーギャー言いながら失敗したり成功したりを繰り返して、装備に性能付加していった。結果。


 俺のスピアは合計でレベル13になった。

 豆さんのヒールはレベル12。

 はるゆりの凍結波動はレベル11。エンチャントはめでたくレベル9。

 ユウキちゃんの部位破壊はレベル9。ディメンショナルウオールはレベル7。

 その他のオプションも思い切り割り切った選択をしたので、俺たちは対現実ビースト向けに大幅強化された。と、思う。思いたい。



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