Magic & Dimension 8
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まずは俺たちの部屋に全員集まって作戦会議しようと言う俺の意見は、はるゆりに一蹴された。「まずは温泉でしょ」
ホントにこの女何しに来たんだ。まあ、こんな奴だとは分かっていたけれど。ところが豆さんも同意した。「うん。俺も風呂に浸かってゆっくり考えたいから」と。
というわけで。ホテルのてっぺんにある大露天風呂にゆったり浸かることに。浸かりながら、俺の焦りは誰にも理解してもらえない、と、ため息を吐いた。
大露天風呂は屋上プールみたいな感じだ。当然湯布院の街を展望できる。普段ならきっと街灯りが綺麗に違いないが、今はどこもかしこも真っ暗。逆に空に緑の稲光絶え間なく走り、その様は不気味さや恐ろしさを通り越して、幻想的で美しかった。光るたび、空の底に山の稜線浮かび上がる。
俺は広い湯船の中で身を伸ばした。走り回ったせいで筋肉痛。湯の中でほぐした。部屋にも小洒落た温泉があり、豆さんは「ちょっと一人で考え事したいから」と言って、そっちに入った。なので大露天風呂には俺一人。いや、他に泊まり客が数人いる。きっとマジック&ディメンションのプレイヤー。話しかけたいが、リアルはゲーム内チャットのようにはいかない。逡巡していると、一人が側に寄ってきて話しかけてくれた。
「君もマジック&ディメンションのプレイヤー?」
見た感じ二十代前半、けれど大学生じゃなくて社会人風の人。年代的に見て、きっと高校時代にマジック&ディメンションにハマったに違いない。俺とほぼ同じ。
「はい。そうです」と俺は答えた。ゲーム内チャットならもっと軽いノリで良いんだけれど、リアルはそうもいかない。最低限、礼儀は必要だと思う。
「何日目?」と聞かれた。
「今日来たばかりです」と答えた。
「そうなんだ。実は俺も昨日来たばかり。もうビーストと戦った?」
「あ、はい。九重で」
「ホントに? 凄いな。俺はまだなんだ」
「でも、凄くないです。もう少しで死ぬトコでした」
「いや。凄いよ。倒して生き延びたんだろ」
「なんとか……、ですけど」
「どのビーストと戦ったの?」
「あ、えっと。エリア5の降臨ボスで……、ジェルドゥルドゥ?」
「ジェルクッ・ドゥルドだ」
「あ、そうです。それです」
「やっぱり出現してるのは降臨ボスばかりってのは本当なんだ」
「そうみたいですね」
MOBには一般MOB、シナリオに登場するシナリオボス、各エリアに出現する降臨ボスがいる。一般MOBが所謂雑魚で、シナリオボスがシナリオに登場するボスで、倒すとエリアが解放される。そうやってシナリオを進めていく。強さ的にはシナリオボス<降臨ボス。シナリオボスはプレイヤーにシナリオを進めさせるため、ある程度弱めに設定されている。
「実はアロレが全然効かなくて」
「え! そうなんだ。ジェルクッ・ドゥルドって炎耐性高かったっけ?」相手はビックリしていた。
「いえ、高くないはずです。効かない、ってわけじゃないんですけど、体感的にゲーム内より効いてない感じで……」
「へぇ……」相手は本当に感心した様子だった。「そういう情報は本当に助かるよ。俺も実は物理メイジなんだ。メインスキルはギロチンだけど。俺のキャラ名教えとくから、後でフレンド登録しないか?」ギロチンは物理メイジ最高峰のスキルだ。この人きっと強い。
「是非。情報交換しましょう」
「うん。俺はフルボッキ」
最底な名前だった。
「俺、よるおすです」
「うん。検索するよ」
「俺も検索して申請送っときます」
「じゃあ。のぼせそうだから失礼するよ」相手はそう言って湯を上がっていった。
俺ものぼせそうだったから、湯船を出て、手早く体を洗って大露天風呂を後にした。
部屋に戻った俺は魂消た。




