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大きな瞳に戸惑いの色を浮かべる双子に、私はウデを組んで考えながら言葉を選ぶ。
「うーん。絶対いけないってこともないけど……。つまりね『良い素材』を使っている『値段相応の価値ある商品』だってことをお客様に伝えてほしいの」
「良い素材……?」
「たとえば『卵』と『牛乳』これは契約している牧場から毎日、届けられる新鮮な物をたっぷり使っているわ」
「おお!」
「毎日、新鮮な物を材料に……!」
新鮮な物というキーワードに、ルルとララは大きく反応し、食いついた。
「そう。新鮮で上質な材料のみを厳選して使っているの。これは事実だから、ぜひお客様に伝えてほしいわ」
「はい!」
「かしこまりました!」
「そして、ウチは当日作ったケーキを売り切るスタイルでやっていくつもりだから、どのケーキも当日の朝に作られた物。だからお客様には『今朝できたばかりですよ!』って言ってほしいの」
「ふむふむ……」
「なるほど……」
真剣な表情で何度もうなずく双子に、さらに他の提案もする。
「昼以降に作られた物なら『さっき出来たばかりの出来立てですよ!」とかね……」
「できたて!」
「ええ。出来立てって食欲そそるでしょう?」
「はい!」
古くなってしまった食べ物より、出来たての食べ物が新鮮で美味しいというのはごく一般的な認識だ。もちろん、中にはチーズのように熟成させたり、発酵させて食べるという食品もあるが、ケーキについては新しい方がいい。
「お客様の食欲をそそる。つまり、お客様の購買意欲も増す。これも販促よね」
「なるほど!」
「そういう風に『人気があって』『新鮮で厳選した上質な材料』を使っている『出来立て』の商品なら、買った時『得した』ってお客様に感じてもらえると思わない?」
「思います!」
「なるほど、これが販促!」
ルルとララは販促について完全に理解し、表情が明るくなった。
「うん。こんな感じで商品について説明して『販促』しつつ、接客してほしいの。お願いできるかしら?」
「はいっ!」
「がんばりますっ!」
元気よく返事をしてくれた双子に、私も笑顔でうなずく。ルルとララは接客について、私なりの考えをちゃんと理解してくれた。
笑顔がさわやかで商品についてきちんと説明できて、なおかつ販売促進ができる販売員がいれば店の売り上げは確実に伸びる。二人が店頭で接客対応する際にも、今日伝えたことはきっと役に立つだろう。