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やはり、その道に詳しい人に尋ねて良かったと思いながら、グレイさんにお礼を言って私と双子はグレイ不動産を後にした。グレイさんから教えてもらったリフォーム業者の地図を片手に石畳の道を歩いているとルルとララが、おずおずと私の顔をのぞき込んできた。
「セリナ様、あの空き店舗に引っ越すんですね」
「うん、ちょっと迷ってたんだけど……。グレイさんと話をしながら、やっぱり今の邸宅を早めに出た方が良いって思ったの」
「そうなんですね」
「あの空き店舗で商売を始めるなら今、住んでる郊外の邸宅からだと通勤に時間がかかるし、せっかく二階のスペースがあるんだから寝泊まりするには充分だし……」
「そうですね。屋根裏部屋もありますもんね!」
「屋根裏部屋どうしようかしらね……。とりあえず、あの店舗全体を居住可能なようにリフォームをお願いするつもりなんだけど」
リフォーム業者さんに相談すれば良いアイデアを提案してくれるかも。という漠然としたイメージだったのだが、双子はキョトンとした顔をした。
「え、屋根裏部屋には私たちが住むんですよね?」
「へ? いや、そういうつもりで見せたんじゃないんだけど……」
「セリナ様があの店舗に住むなら、私たちも一緒ですよね?」
「基本的に召使いは屋根裏部屋に住むものですから、何の問題もありませんが?」
双子たちは、自分たちが屋根裏部屋に住むのが当然と思っていたようで私は驚く。
「大きなお屋敷なら、そうかも知れないけど。あの屋根裏部屋は……」
「私たちは全然かまいませんよ?」
確かに、今まで住んでいた邸宅と違って部屋数に余裕があるわけでは無い。屋根裏部屋のスペースをルルとララのの部屋とすることで、有効活用できる双子の提案は正直ありがたかった。
「うーん、そうね……。じゃあ、お言葉に甘えて、そうさせてもらおうかな」
「はい!」
こうして空き店舗の屋根裏部屋は双子の寝室兼、個室となることが決定した。
「リフォームをお願いするときは屋根裏部屋への階段設置は必須ね」
「私たちはハシゴのままでも構わないですよ?」
「そこは、私が構うから……。それに二人が屋根裏部屋に住むならベッドとか、家財道具も置かないと」
「そんなに気を使わなくても、私たちなら大丈夫ですよ?」
双子は恐らく、私の経済状況を心配して自分たちには、お金をかけて欲しくないと思っているのだろう。しかし、彼女たちの主張にうなずく訳にはいかない。私が立ち止まると、双子も不思議そうな顔をしながら立ち止まった。