表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/449

76

 独り言ちながら木窓を開ければ外から、まぶしい太陽の光と新鮮な空気が屋根裏部屋に入ってきた。


「ふぅ……」


 新鮮な外の空気を胸一杯に吸い込んで、改めて屋根裏部屋を見渡す。中はちょうど三角形で屋根の形そのままだ。中心部分は高さがあるので人が歩くのに問題ない。


「うん。意外とスペースがあるわね。これなら……」


「セリナお嬢様~!」


「私たちも屋根裏部屋に上がっていいですか~?」


「あ、ちょっと待って! 一回、降りるわ!」


 私がハシゴを使って屋根裏部屋から降りれば、双子が入れ替わりで上にあがろうとするが、私はふと気付いて焦った。


「二人とも、スカートのままハシゴは……!」


「あ、大丈夫ですよ。セリナお嬢様」


「こうして、スカートのスソを縛れば中は見えません」


 ルルとララはメイド服のスカートのスソをぎゅっと縛った。確かにこれならスカートの中が見えると言うことはないだろう。こうして双子は無事にハシゴを上った。楽しそうに声をはずませながら、屋根裏部屋を見て回っているのが階下からでも分かる。


「それで、どうじゃ?」


「え」


 不意に話しかけられ、振り向くとラッセル老は立派な白ヒゲをなでながら、目を細めていた。


「この空き物件を買い取るか、決まったかの?」


「その件に関して、ちょっとお願いがあるのですが……」


「ふむ。なんじゃ?」


 首をかしげるラッセル老に私は、こちらの事情を説明する。


「実は祖父母が残してくれた家が売れたら、こちらの空き店舗を購入したいと思っているんです」


「ほうほう」


「でも、今すぐには祖父母の家を売却することは出来ないんです」


「む?」


「すでに不動産屋さんにお願いして、購入希望者がいたら売り渡したい旨は伝えているんですが……」


「その肝心の購入希望者がいつ現れるか、分からんという訳じゃな?」


「はい。その通りです」


「ふむ……」


「でも、こちらの空き店舗がとても良い物件なので買い取りたいし、ここで商売をさせて頂きたい気持ちもあるんです」


「ほぉほぉ」


 私が、この店舗を使うことに対して前向きだという意向を伝えると、ラッセル老は嬉しそうに何度も頷いた。


「それで、お願いなんですが……。祖父母の家が売れるまでは、こちらの空き店舗を賃貸契約でお借りできないでしょうか? 祖父母の家が売却できて、まとまったお金が用意できたら、この物件を買い取りたいんです」


「う~ん。ワシとしては買い取り前提の賃貸契約ということなら歓迎じゃが、良いのか? 賃貸料で高くついてしまうことになるが?」


「そこは……。まぁ、仕方ないと思ってます……。ただ、こちらの空き店舗に入る前にリフォームをしたいんです。その許可も頂けますか?」


「そりゃあ、買い取り前提の賃貸契約ということなら、好きなようにリフォームしてくれて構わんが……」


「ありがとうございます! それなら、ぜひ買い取り前提で賃貸契約をさせて下さい!」


 こうして私はラッセル老の許可を得て、空き店舗の賃貸契約をすることを決めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ