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翌日、雲一つない青空の下、私は双子をともなって街に出た。
「セリナお嬢様。今日はめずらしくズボンをはいてますけど、何かあるんですか?」
「何かって言うほどじゃないけど……。前回、空き店舗の下見をした時、見ることができない場所があったから、今日はそこを見たいと思ったの」
「見ることが出来ない場所ですか?」
双子と話をしながら目的のお宅に到着した私は、ドアをノックして家主が出てくるのを待っていると、きしんだ音を立てながら木製の玄関扉が開き、立派な白ヒゲの老人が顔を出した。
「また、突然すいません。ラッセルさん」
「おお、セリナお嬢ちゃんじゃないか! どうしたんじゃ?」
「たびたび申し訳ないですが、また空き店舗を見学させて頂いてよろしいでしょうか? 前回、上の方は見てなかったし、今度はこの子たちも一緒に見たいんです」
「ふむふむ……。かまわんよ。さ、着いておいで」
ラッセルさんに先導され、私たちは再び空き店舗に足を踏み入れる。私は前回、一通り見たので目新しく感じる物はないのだが、ルルとララは猫耳をピンと立てて興味津々といった様子で空き店舗の中をキョロキョロと注意深く見ている。
「上が見たいんじゃったな」
「はい」
私とラッセル老は早速、二階に上がる。そんな私たちの後を、双子がそそくさと着いてきた。
「セリナお嬢ちゃんの目的はあそこかな?」
「ええ、屋根裏部屋に上ってもかまいませんか?」
「おお。そりゃ構わんが、屋根裏は掃除しとらんからホコリっぽいし、ハシゴでしか上がることが出来んが……」
「大丈夫です。そのために今回はズボンをはいてきましたから!」
心配するラッセル老に笑顔で答えて、私は木製のハシゴに手をかけ天井裏に上がった。屋根裏部屋に入ると確かに掃除されていないらしくホコリっぽい。
そして暗い。わずかに外からの光がもれ入っているのが見えるが、これだけ暗いと屋根裏部屋がどのような状態なのか、よく分からない。
「灯りが欲しいわね。そうだ!」
私が右手をかざし火魔法で光源を作れば、屋根裏部屋は光に照らされた。屋根裏部屋の上の方を魔法で照らしながら見れば、いかにも丈夫そうな丸太の梁がむき出しになって組まれているのが見えた。
外から光がもれていた壁に向かうと、どうやら窓がちゃんとあるのが分かった。換気のためにも窓を開けようとすると、ガラス窓は無く雨戸のような木窓しかないということに気付いた。
「とにかく、窓を開けよう。ホコリっぽくて空気が悪いわ……」