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「お義父さまはギックリ腰だったのですか?」


 母が驚いて尋ねると、おばあ様は肩をすくめて苦笑する。


「ギックリ腰なんて『情けないし命に関わることでは無いから、子供達には知らせるな』と言ってたから連絡しなかったけど、三日間ベッドからロクに起き上がれずにうなっていたわ」


「そう、だったんですか……」



 どうやら祖父は、私たちが来るのと入れ違いで外出してしまったようだ。ひとまずクッキーをくれた、おばあ様にお礼を言って、お母さまと共に自宅へ戻った。しかし、自宅に戻る馬車の中、お母さまの表情が暗い。



 そういえば、祖母の家に入った時から、顔色が悪かったように思える。どこか具合でも悪いのかと心配しながら帰宅すると、貿易商のところへ外出していた父が帰宅していた。



「あなた、戻っていたのね」


「ああ。商談の件がまとまったからな。今度、南の領地に行って現地で直接、貿易品や農作物の品定めをすることになった」


「領地に……。じゃあ船旅になりますわね」


「ああ。折角だから、おまえも久しぶりに、ご両親の墓参りがてら領地の視察に同行しないか? 」


「そうね……。セリナ、お部屋にもどってなさい」


「うん」



 母に自室へ戻るように言われて居室を出たが、顔色の冴えない様子の母が気になった私は、ドアのすき間から両親の会話を盗み聞きすることにした。


「あなた……。今日の事なんだけど」


「ん?」


「今朝、セリナが『おばあ様が夢の中で、真っ白い陶器製の入れ歯をしてた』って言ってでしょう?」


「ああ、そんなことを言っていたな」


「今日、お義母様に会いに行ったらセリナの言っていた通り、本当にお義母様が真っ白い陶器製の入れ歯をつけていたのよ!」


「えっ」


「おまけにセリナは『夢の中で見た』って言って、お義母様がなくしていた入れ歯をベッドの下から見つけ出したのよ!」


「それは……」


「しかも、セリナは前に『おじい様が寝込んでる夢を見た』って言ってたの」


「父さんが? しかし、ただの夢だろう?」


 戸惑い、信じられないという表情を浮かべる父に、母はわずかに顔をしかめた。


「私もそう思ってたんだけど今日、お義母さまに話をうかがったら、ちょっと前まで、お義父さまはギックリ腰で確かに寝込んでいたって……」


「それは父さんがギックリ腰で寝込む前にか?」


「ええ、そうよ。一週間前にセリナが『おじいさまが寝込んでる夢を見た』って言っていた後に、お義父様がギックリ腰で寝込んで動けない状況になってたのよ」


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