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「二人の気持ちは嬉しいけど、あなた達をこれまで通りの給金で雇う訳にはいかないし」
「お給金はいらないですっ!」
「セリナお嬢様にお仕えさせてくださいっ!」
「二人とも……」
ルルとララが泣きながら私にしがみついてきた。私も彼女たちが、そこまで言ってくれることに胸が熱くなり、涙が込み上げてくる。
私を慕ってくれている二人の気持ちは嬉しい。私だって出来ることなら、ルルとララに一緒にいてもらいたい。私は泣きじゃくる双子を抱きしめた。でも、まさか本当に双子を無給で働かせるわけにもいかない。
それに無給だとしても、彼女たちは住み込みで働いている。つまり、彼女らの食費など、生活費は負担しなければならない。
仮にこの邸宅を売却したとして、双子の衣食住を面倒みるとなれば、やはりそれなりの住居を見つけなければならない。
私一人なら手狭な住居で細々とさほど生活費をかけずに暮らしていけるだろうけど、双子が一緒となれば生活費の負担が大きくなる。
心苦しいが、やっぱり双子を雇用し続けるというのは現実的ではないだろう。そんな私の胸中を察したのか、ルルは真っすぐに私を見つめる。
「セリナ様……」
「ん?」
「もし、セリナ様が本当に困っているなら私たち、外で働いてきます」
「は? 何を言い出すの?」
つまり、彼女たちは外で働いて給金を私に渡して、金銭的に困窮する私を助けたいというのか? いや、いくら何でも、そこまでしてもらう訳にはいかない。そう言おうとするが双子は泣きながら、強く首を横にふる。
「私たちはセリナ様に恩があります! お返ししたいんですっ!」
「え、返すって、そんな……。ん?」
「私たちが働いてお金を稼いで、セリナ様にご恩を返したいんですっ!」
「ちょっと待って……」
「はい?」
涙を流し、鼻をすする双子に私は思いついたことを提案する。
「私が働けばよくないかしら?」
「へ?」
「セリナお嬢様が?」
まさか、貴族令嬢が働くと言い出すとは夢にも思ってなかったらしく、私の言葉に双子は目を丸くした。しかし、よくよく考えれば私は前世でケーキ屋さんになりたかったのだ。
「あなた達、ケーキ美味しいって言ってくれたわよね?」
「はい」
「ケーキ美味しかったです」
「ケーキを作って売ったら、売れると思わない?」
「……思います」
「さっき、ちょうど街中の噴水広場前に空き店舗があったのよ。厨房付きの」
「え」
「それって……」