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 呆然とする私にローザは苦笑いする。


「王宮のことだから、役職が色々あるみたい。まぁ、当分はしたっぱとして働くってことよ」


「そうなんだ」


「したっぱとは言え、王宮で働けるから市井で働くよりは、ずっと給金が良いの。王宮の侍女見習いは、ちょうど欠員が出て、おば様の口利きがあって決まったんだけどラッキーだったわ」


「そうなのね……。でも、大丈夫なの?」


「王宮内に住み込みで働くってことは市井で通いの働き口に通うより、ずっと安全だと思うわ」


「いや、治安面では安全だろうけど……。その、国王陛下に見初められたり……。みたいな」


 私が言いにくそうに呟くと、ローザは一瞬、目を丸くした後、薄紅色のくちびるに指を当てて笑った。


「ふふっ。後宮には千人以上の女性がいるのよ? それに、私は侍女見習いだもの。心配いらないわ」


「千人以上! そんなにいるのね」


「ええ。それに現国王のライオネル様はこの所、体調が思わしくないそうだから……。それ所ではないと思うわ」


「ああ、そういえば……」


 私は学園時代にダーク王子が、父王の容態が思わしくないと言っていたのを思い出した。


「とにかく、そう言う訳で王宮で働くことになったから、セリナと会いにくくなると思って、侍女見習いとして王宮に入る前に、セリナと会いたかったのよ」


「王宮で働くようになったら、自由に外へは出られないの?」


「配属される場所にもよるけど。警備の関係上、自由に出入りするというのは難しいと思うわ。住み込みだし」


「そうなんだ。じゃあ、手紙を書いたら良いかしら?」


「手紙……」


 直接、会うのが難しいなら手紙で近況を伝えれば良いだろうと考えたのだが、ローザは表情を曇らせた。


「なにか問題でも?」


「いえ、ただ……。手紙だと検閲官が、検閲すると思う」


「検閲」


 どうやら、王宮へ出す手紙は第三者が開封して内容を改めてから、ローザの元へ届けられるようだ。そこまで厳重なのかと、私は唖然とした。


「王宮だから……。他国のスパイが入り込んでないか用心して、王宮への手紙はチェックされるって聞いたわ」


「そ、そうなんだ。じゃあ、不用意な手紙は避けた方が良さそうね……」


「うん。まぁ、普通の手紙は大丈夫だとは思うけど……。私もセリナも変な疑惑をかけられたくないし、そこまで行かなくてもプライベートな手紙を他人に見られるのって、気持ちのいい物じゃないでしょう?」


「うん。そうね……」


 私が肩を落とすと、ローザは不意にアクアマリン色の瞳を見開いた。


「あ、でも……。弟のケヴィンと一緒なら」


「弟?」


「月に一回、身内が会いに来るのは大丈夫なの。弟と一緒に来れば会えるわ」


「そっか……。じゃあ、ローザの顔が見たい時は、弟君にお願いして同行させてもらうわね」


「うん、そうして。セリナなら、いつでも歓迎するから」


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