表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/449

6

「まぁ! 信じられない! どこにあったの?」


「ベッドの下よ」


「ベッドの下? そこも探したつもりだったんだけど……」


「ちょうど柱の影になってる場所だったから見落としたんだと思うわ」


「そうだったのね……。そんな場所に。見つけてくれて、ありがとうセリナ! それにしても、よく分かったわね?」


「うん。夢で見たから」


「夢で? 不思議なこともあるのねぇ……。とにかく、お礼をしないとねぇ」



 おばあ様は不思議がりながらも、探していた入れ歯を見つけてくれたお礼だと言って、メイドに用意させて、たくさんのお菓子をくれた。と言ってもこの世界は、あまりお菓子の種類がない。基本的に茶色い焼き菓子。クッキーやビスケットが一般的なお菓子なのだ。


 前世は日本の女子学生であり、パティシエになるのが夢だった身としては、ふわふわのスポンジケーキや生クリーム。色とりどりの果物をふんだんに乗せた見た目も鮮やかなケーキがないというのは、物足りない気持ちだった。



 この世界にも果物はある。小麦粉も卵も砂糖もある。牛乳だってある。しかし、なぜか洋生菓子と呼ばれるような、ケーキは無いのだ。


 そう、定番のイチゴショートケーキや、魅惑のチョコレートケーキ、しっとりとしたチーズケーキなどが、一切ない世界なのだ! その事実を知った時、私は涙目になった。


 まぁ、無い物はしかたない。材料はあるのだから、本当は自分の手でケーキを作ってしまいたい気持ちもあるのだが、この世界では貴族令嬢は料理などしない。そういう家事全般は、メイドなどの使用人がやるものと決まっているらしい。



 そんな訳で、私はケーキを作りたい気持ちがありながらも、作れないという状態だった。もっとも年端のいかぬ幼女の身で、この世界で誰も見たこともないスイーツや料理などを作り出したら、周囲の人たちが驚くだろうと判断して自重している部分もあるのだが……。


 あと、それ以前に幼い貴族の少女に料理の火を扱わせるなんて、とんでもないことだろうから現状では自分の手でケーキを作るなんて現状、二重、三重の理由で不可能なのである。


 そんなことを考えながら、おばあ様が用意してくれたお菓子をもらったが、そういえばと祖母にたずねる。


「今日、おじい様はいらっしゃらないの?」


「そうなのよ。やっとギックリ腰が治ったから、出かけると言ってね」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ