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どうやらツノが出来るまで卵白を混ぜたことが無いようでララは困惑している。ルルもアーモンドを粉状にしながら驚きを隠せない。
「卵白に空気を入れるように混ぜれば、ツノが立つのよ」
「そ、そうなんですか……?」
「ツノが……?」
どうも、ルルとララは卵白でツノが立つというのが想像できないようで、半信半疑だ。そして泡だて器をまぜる手も遅い。普通の料理なら、この程度の混ぜ方で十分なのだが、卵白でツノを立てようと思ったら、これでは十分とは言えない。
しかし、先ほど栗の渋皮を包丁で剥いて疲れているであろうララに卵白をツノが立つほど早くかき混ぜさせるというのは、かなりの負担がかかることは私にも想像できた。
「それ、私が混ぜるわ」
「え、セリナお嬢様が!?」
「見本を見せる意味でもね。よく見ていてね」
「は、はい」
手渡された卵白入りの銅製ボールを泡だて器で、空気を入れるように素早くかき混ぜれば、卵白はみるみる内に泡立ち、真っ白いメレンゲが銅製のボールの中でふんわりと出来上がった。泡だて器でツノが出来るか確かめれば、ピンとメレンゲのツノが立ちあがった。
「この位かしらね」
「おお……!」
「確かにツノができてます……!」
双子は初めて見る、メレンゲのツノに感心しているようだが、ゆっくりしてはいられない。
「じゃあ、次は砂糖と卵黄を入れて」
「はい!」
黄白色になったメレンゲを泡だて器に絡めて、上から垂らすと今度はスルスルと帯状になった。
「その次は、ふるいにかけながら小麦粉を入れて」
「はいっ!」
双子に砂糖と小麦粉を投入してもらいながら、私は泡立ったメレンゲが極力、壊れないように、サックリと木べらで混ぜ合わせる。最後に溶かしバターを加えた後、バターを塗りこめた銅製の型に生地を流し込んで窯で焼き上げた。
窯の中で生地が熱されてふくらみ、ほどよく焼きあがった所で窯の中から取り出せば、黄金色のスポンジケーキが芳ばしい香りを放ちながら鼻腔をくすぐる。
「これも良い匂いがします!」
「美味しそうです!」
「じゃあ、これを冷ましてる間にクリームの用意をしましょう」
「はい!」
氷魔法で出した氷の入った銅製ボールの中に、一回り小さい銅製ボールを置き、そこに用意しておいたクリームを入れ、かき混ぜながら砂糖を加えれば乳白色の菓子用クリームができあがった。
さらに熱の取れたスポンジケーキに菓子用クリームを乗せて、その上から裏ごしをしたマロンクリームを乗せて形を整え、スポンジケーキの外側部分に軽くクリームを塗ってから、アーモンドパウダーをまぶした。これで簡単なモンブランが完成である。