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銅製のボールにこんもりと積まれた白っぽい剥き栗に、私は思わず笑顔になる。
「全部、剥けたわね」
「はい!」
「じゃあ、次は渋皮が剥けた生栗を熱湯で茹でて」
「了解しました!」
双子が銅製のナベに生栗を投入し、加熱して茹で上げる。
「栗が柔らかくなったら、栗をザルにあげてね」
「はい!」
ザルに移された黄金色に茹で上がった栗は、ホクホクと白い湯気を出しながら、食欲をそそる美味しそうな香りを料理場に漂わせている。
「美味しそうです!」
「うん。このまま食べても美味しいけど、今度は牛乳で煮込むから鍋に牛乳を入れて」
「はい!」
双子は私に指示された通り、銅鍋に牛乳を入れ、茹で栗を牛乳で煮込んだ。
「次はそこに砂糖を加えて、木べらで栗をつぶしながら混ぜ続けてね」
「了解です!」
長時間、混ぜながら熱されたことで栗は形が崩れると同時に、砂糖を加えられたことで、より甘い香りを放ちだした。
「そろそろ良いわね。じゃあ、鍋を火から降ろしてよく混ぜてから、裏ごししておきましょう」
「はい!」
双子は用意した裏ごし器で、荒いペースト状になっていた栗を裏ごしする。すると、綺麗なペースト状のマロンクリームができあがった。私はスプーンでマロンクリームを少しすくって味見をする。双子にも同様に食べさせた。
「うん。上手く、マロンクリームができ上ったわね!」
「これ、おいしいです~!」
「もっと食べたいです~!」
「ぜんぶ完成したら、ちゃんと食べてもらうから、もうちょっと頑張ってね」
「はいっ!」
「がんばりますっ!」
一晩水にひたして多少柔らかくなっていたとはいえ、栗皮を包丁で剥くという地道な作業に少し、疲れが見えていた双子だったが、美味しいマロンクリームを一口食べたことで疲れが吹き飛んだようだ。ルルとララの猫耳がピンと立ち、二人はキリッと真剣な表情になった。
「あ、そうだ。アーモンドも使うんだったわね……。アーモンドを砕いて、粉状にしておいて」
「了解しました!」
ルルが早速、アーモンドを潰して粉状にしている間、ララに指示する。
「次は卵を卵白と卵黄に分けたら、卵白を泡だて器で泡立てて」
「はい!」
「この位で良いですか? セリナお嬢様」
さっと卵白をかき混ぜたララにボールの中を見せられたが、まだ卵白は液体状である。これでは理想とは程遠い。
「ううん。もっとよ。卵白はツノができる位まで泡立てて」
「ツノ……?」
「卵白にツノですか?」