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双子が火魔法を使えるようになった翌日、メイドの仕事が一段落したところで、目の前にあるテーブルにガラスのグラスを置いた私は、今日もルルとララに魔法をレクチャーする。
「じゃあ、昨日は火魔法を教えたから、今日は氷魔法を教えるわね」
「はい!」
「よろしくお願いします!」
「じゃあ、まず私がやって見せるわね」
私が両手に魔力を集中すると、手の周囲の温度がひんやりと下がる。そして両手の間でビキビキと音がすると同時に氷のかたまりが出現した。
「おお……!」
「氷です……!」
「うん。こんな感じで氷を作ってみて」
私が氷魔法で作った氷をガラスのグラスに入れれば、氷のかたまりは高い音を立ててグラスの底に落ちた。
「こういう風に、氷を作ることが出来れば温かい時期でも、生肉や生魚の鮮度を保つことが出来るから重宝するはずよ」
「はい!」
「やってみます!」
「む……!」
「くっ……!」
双子は手のひらに魔力を集中させて氷を出そうと必死になって長時間取り組むが、一向に氷魔法が発動される気配が見えない。
「うーん。昨日、魔法が使えたばっかりだし、まだ魔力を発動するのが慣れないのかしら?」
「すいません……」
「氷魔法は無理なんでしょうか……」
双子の猫耳がしょぼんとたれるのを見て、私は慌てた。
「あ、別に怒ってるわけじゃないし、無理って決まった訳じゃないから二人とも落ち込まないで!」
「セリナお嬢様……」
「ぐすっ……」
長時間の魔力集中で疲弊しているにも関わらず、一向に手ごたえが無いことに肩を落とし、涙目になる双子に心が痛む。
そして、彼女たちはメイドとしての日常業務もあるのだから魔法の勉強で、精神的にも肉体的にも、疲労困憊させるまで追い込むのは良くないと思いいたる。
「う~ん。とりあえず、実際にやってみるのが大事よね。昨日と同じように魔力の補助をするから、二人とも両手を出してみて」
「はいっ!」
「お願いしますっ!」
昨日同様、ルルとララが差し出した手の平に、私の手をかざして魔力の譲渡をする。
「温かい!」
「魔力が集まってる感じがします!」
「じゃあ、さっそく氷を作ってみてくれる?」
「はい!」
「むむむ……!」
ルルとララの両手に魔力が集まり、周囲の冷気がヒンヤリとしたと思った次の瞬間、ビキビキと音を立てながら二人の手から氷のかたまりが作り出された。
「やったぁ!」
「できました!」
「うん。ちゃんと出来たわね。おめでとう」
「セリナお嬢様のおかげです!」
「ありがとうございます!」
満面の笑みで感謝しながら、よろこぶ双子の様子を見ていると、こちらのほおも思わず緩む。