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私の提案を聞いた猫耳の双子は目を丸くして驚き、次におずおずと祖母の顔をうかがった。
「ルルとララが望むなら勉強するのは賛成ですよ。ただし、メイドとしての仕事をしてもらって、空き時間に勉強ということになりますが……」
「私、勉強したいです!」
「私もしたいですっ!」
祖母の言葉に双子は大きな瞳を輝かせた。その後、私は提案した通り双子に勉強を教えた。仕事に役立つように言語、計算。それに地理や歴史も。
何も分からないまま料理や掃除をするメイドとして働いていくより、文章や数字をしっかりと理解して仕事ができる方が、より重宝されるし重要な仕事をまかされる機会も増える。
重要な仕事を任されるということは、それだけ得られる賃金も多くなるはずだ。私はメイドをやっている彼女たちにとって特に有用と思われる物を優先的に教えていった。
双子たちは飲み込みが早く、私が教えることをどんどん覚えていった。二人とも本当は勉強がしたい気持ちがあったようで食い入るように私の言葉に耳をかたむけ、空き時間には自主的に本を読んで予習、復習をして教えている私がビックリするほど学力を伸ばしていった。
「二人とも熱心に取り組んでくれるから、教えがいがあるわ」
「セリナお嬢様の教え方が分かりやすいので!」
「勉強、楽しいです!」
黒色と白色の猫耳をピンと立てて、ルルとララが笑顔で返事をする。以前、祖母も言っていたが本当に明るくて元気な良い子たちだ。
「基本的な勉強は大体教えたけど、何か教えて欲しいことってある?」
「……魔法を教えてほしいです」
「私も魔法を覚えたいです」
「え、魔法使えないの?」
「はい」
「使えないです」
双子の大きな瞳にウソ、偽りを言っている様子はみじんも無い。私は信じられない思いだった。
「料理の時、火を起こすのはどうやってるの?」
「火打石を使ってワラに火花を落として、そこから火種を作って薪を燃やします」
「……火打石」
まさか、そんな道具を使って火を起こしているなんて夢にも思ったことがなかった私は、言葉を失った。双子は私の様子を見ながら不安そうな表情になる。
「魔法、教えて頂けないでしょうか?」
「魔法、教えてほしいです。セリナお嬢様……」
「うん……。教えるわ。魔法」
「やったぁ!」
「これで料理の時、手軽に火を起こせます!」
魔法を教えてもらえると無邪気に喜ぶ双子と裏腹に、私はショックを受けていた。てっきり、その程度の初歩魔法は誰でも普通に使えると思い込んでいた。