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 双子のメイドはすでに食事の用意もすませており、調理場からは肉や野菜を煮込んだ料理の食欲をそそる香りがただよっていた。


「美味しそうな香りね」


「お食事、いつでも召し上がれますよ!」


「それじゃあ、いただきましょうか」


 祖母の言葉に双子のメイドが「はい!」と返事をし、ダイニングの中央にある木製テーブルにカテラリーを置き、すでに出来上がって保温されていた汁物を白磁器のスープ皿に注ぎ入れ、てきぱきと食事の用意をする。


 真っ赤なトマトやルッコラなどの葉野菜に、ヤギの乳で作られたチーズを薄切りにし、その上からオリーブオイルがかけられた見た目にも鮮やかなサラダ。


 スープは鶏肉、キャベツ、ニンジン、ジャガイモ、玉ねぎ、ニンニクを細かく刻み、レンズ豆を入れ、塩とハーブで味付けされた物でじっくりと煮込まれた鶏肉や具だくさんの野菜が舌の上でとろける。


 メインとなる皿にはローズマリーやセージといった、香り高いスパイスと塩、コショウ、スライスしたニンニクをまぶした羊肉の香草焼きが鎮座していた。フォークとナイフで羊肉を切り分け、食べれば口の中で羊肉の旨味と芳ばしい香りが広がった。


「どれも美味しいわ!」


「本当ですか!?」


「よかったです!」


 双子のメイドが用意してくれた料理に舌つづみを打っていたが、ふと見ると祖母の表情がさえない。


「おばあ様?」


「この羊肉は少し、食べにくいわね……」


「えっ!」


「私は入れ歯だから。固い物はちょっと食べにくいのよね……」


「あっ」


 自身のほおを押さえながら、少しまゆをひそめる祖母に双子のメイドは顔色を失う。


「すいません奥様! 気がつかなくって」


「申し訳ございません!」


「でも、こちらのスープは食べやすいし、美味しいわ」


 平謝りする双子に祖母は優しくフォローした。羊肉は取り立てて固いと感じるほどではなかったが、入れ歯を使用している祖母にとってはいささか食べにくかったようだ。これを、まだ雇って日が浅い双子が配慮するというのは難しかったのだろう。



 祖母の家に住み始めて、献身的にメイドとしての仕事をしてくれる双子を見ていて思った。親に捨てられて、学校にも通えず住み込みで働いているこの少女たちに対して、何か私にできることはないだろうかと……。そして、ある考えが頭に浮かんだ。


「ルルとララは……。勉強したい?」


「え?」


「もし、二人が勉強したいなら私、教えてあげられると思うわ。学園で習った内容だけど」


「えっと……」

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