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狼獣人は心に決めた相手と添い遂げたい性分だとヴォルフさんは言っていた。なのに祖国の王からハリエッタ姫という身分が上の姫君を勝手に婚約者にされた上、ハリエッタ姫の性格だとヴォルフさんが思いを寄せている相手に危害を加えられるかもしれないと心配しているのかと理解した。
「大丈夫ですよヴォルフさん! さいわいハリエッタ姫はヴォルフさんに好きな人がいるってことに気付いてません! なぜか私に敵意を向けてますから、こちらに注意をひきつけておきましょう! ヴォルフさんに好きな人がいる件をハリエッタ姫に気付かれないように私も協力しますから安心して下さい!」
「いや、違うんだ。そうじゃなくて……」
消え入りそうな震え声で銀狼獣人が何か言っているが、声が小さくてよく聞き取れない。というか外野で見守っているルルとララが「ああ……!」「何でそんな……!」とか言ってる小声の方が大きい。
「そういえば、ハリエッタ姫はなんであんなにも私に敵意を向けたのかしら? ちょっとありえない位に殺気だっていたように思えたけど?」
「それに関しては狼獣人が『序列』にこだわる習性があるのも理由のひとつだろう……」
「序列?」
うつむいていたヴォルフさんの言葉に私が小首をかしげると、銀狼獣人はようやく顔を上げた。
「狼獣人が一族ごとのリーダーが明確に決まっていて、そのリーダーの指示が絶対だ。俺の実家の場合はアルジェント公爵家の当主である兄上が序列が一番上で、同時に兄上の伴侶である妻も序列が高い。序列が上の者に対して、下の者が従うのが当然という感覚なんだ」
「ヴォルフさんの実家だと当主以外は子供が作れないっていうくらいだから、徹底してる感じですよね。でも、基本的な方針としては他国の王侯貴族や一般の家庭とも変わらないですよね。要するに家長の意見が絶対ってことですから」
「平たく言うとそうなるな」
「ハリエッタ姫の婚約者であるヴォルフさんが、私にカモ肉を贈っていたのは『序列』的に許されないことだったんですね?」
「俺は婚約者だと思っていないが、ハリエッタ姫が俺を『自分の伴侶』だと思っていたなら許容できないことだっただろうな」
なるほど。先日、第二の庭で蒼狼王国にいた頃からハリエッタ姫がヴォルフさんに好意を寄せていて婚約者になった時は嬉しかったと言っていたくらいだし、ハリエッタ姫の中ではすでにヴォルフさんは自分の伴侶という感覚だったのかもしれないと納得した。
「つまり、ハリエッタ姫の中では自分の方が序列が高いのに、平民で序列が低いはずの私が自分の婚約者であるヴォルフさんから贈り物をもらうとは何事か。立場をわきまえさせてやるという感覚だったんでしょうか?」
「まぁ、ざっくり言うとそうなる……」




