43
「おかえりなさいませ奥様!」
「おかえりなさいませ!」
こぼれんばかりの笑顔で出迎えのあいさつしてくれたメイドは、明らかに私よりも年下の少女二人だった。
同じ背格好の少女。というか、完全に同じ顔のメイドが二人いる。しかし、明らかに違う部分がある。二人の頭には、それぞれ黒色と白色の獣耳がついていたのである。
「ただいま帰りましたよ。留守中、変わったことはなかった?」
「はい! 特に変わったことはございません!」
「問題ないです!」
元気よく答える二人のメイドに祖母がうなづく。
「あの、おばあ様……。この子たちが?」
「ええ、そうよ。紹介しておくわね。この子たちが最近やとったメイドよ。ルル、ララ、私の孫のセリナですよ」
「はじめまして、セリナお嬢様! 私はルルです!」
「よろしくお願いします! 私はララです!」
「ルルとララね。こちらこそ、よろしく。……それにしても、二人は双子なのよね?」
「はい、そうです!」
「私たち双子です!」
「あと、二人は獣人なのよね? その耳は?」
白猫耳のルルと、黒猫耳のララが満面の笑みで答えてくれたところで、気になっていた疑問を口にしたところ、双子は自身の大きな瞳に影を落とした。
「私たち完璧に人間化ができなくって……」
「どうしても猫耳としっぽが残ってしまうんです……」
しょぼんと黒色と白色の猫耳としっぽが垂れさがり、二人が落ち込んでいるのが目に見えて分かった。
「あ、ちょっと気になっただけだから落ち込まないで! むしろ猫耳、可愛いと思うわ!」
「本当ですか!?」
「やったぁ! うれしいです!」
ルルとララは一転、表情を明るくし双子同士で手を取りあって無邪気に喜びをあらわにした。
「ひとまず、中に入りましょうか」
「はい、おばあ様」
居室に入れば、双子のメイドがお茶の用意をしてくれた。私は双子が用意してくれたお茶を頂きながら二人にたずねる。
「それにしても、ルルとララは私より年下よね? 学校は?」
「学校には行ってないです」
「そうなの? ご両親は?」
「私たちは捨て子だったので、孤児院で育ちました」
まさかの返答に私は驚がくした。
「あ、そうなのね……。ごめんなさい。無神経なこと聞いてしまって」
「いいえ。事実ですから」
「ぜんぜん気にしてないので、大丈夫ですよ」
本当にまったく気にさわった様子もなく、笑顔で答えてくれる双子に私は少し、泣きそうになった。
両親と祖父が立て続けに亡くなって落ち込んでいたけど、私より幼い双子のメイドは親に捨てられて、学校にも行かずに働いている。
この二人に比べれば、こうして祖母と暮らせる上、王立学園まで通わせてもらえた私は何て恵まれているんだろう。そして自分が恵まれていたという事実にすら、気づかず過ごしていたんだ。