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「それより、セリナちゃん。知ってるかい?」
「何をですか?」
「さっき聞いたんだけど、国王陛下が婚約者の伯爵令嬢フローラ様との婚約を破棄したそうだよ」
「婚約破棄……」
私自身は昨日、王宮で伯爵令嬢フローラと国王陛下のやり取りを目の当たりにしていたから、レオン陛下が「伯爵令嬢フローラの魔力ドーピングが確定すれば婚約破棄する」と発言していたのを知っている。
つまり今日、フローラが魔力ドーピングしていたということが確定したのだろう。こういう事態になることに関しては予想がついていた。しかし、想像以上に城下へも噂が広まるのが早くて驚く。
私が言葉を失っているのを見て、完全に初耳だと思ったらしいエマさんは声を何度も首を縦に振って、大げさなリアクションを見せながら顔をしかめた。
「伯爵令嬢フローラ様は悪女だと名高い寵姫ローザに濡れ衣をかけられて、陥れられたんじゃないかってウワサになってるよ。本当だったら恐ろしい話だねぇ」
「……エマさん。それは違います」
「え?」
「私、ローザとは学園時代に一緒だったから、よく知ってるんです。ローザは人に濡れ衣をかけて陥れるような子じゃあないです」
「でも城下じゃあ、寵妃ローザはとんでもない悪女で国王陛下に取り入って、女王の部屋に居座って我が物顔で振る舞ってるって評判だよ?」
「それも誤解なんです……。ローザが女王の部屋で過ごしているのは国王陛下のご意向です。ローザの意思ではないんです。むしろ、ローザは女王の部屋なんて恐れ多いから他の部屋に移りたいんです」
「そうなのかい?」
「はい。でも色々と事情があって……。少なくともローザの意思で女王の部屋に居座ってるなんて事実は無いです。状況的に第三者が誤解するのも分かりますけど……。それに寵姫という身分になったことはローザ自身、まったく予想してなかったことなんです。ローザは元々、家族のためにお金を稼ぐため侍女として王宮で働き始めたんです」
「何だか、私が聞いてた寵姫ローザのウワサとは随分とイメージが違うようだねぇ?」
眉間にシワを寄せ困惑顔で首を傾げるエマさんに、私は今こそ真実を伝えるべきだと目に力を入れて前を向いた。
「世間で言われてる寵姫ローザは悪女なんて話は嘘っぱちです。あんな根も葉もないウワサ、真に受けないで下さい……! ローザは病に倒れていた病床の国王陛下につきっきりで看病したり陛下が回復できるように、手を尽くしていた子なんです。悪女なんてとんでもない! 真逆ですよ」
「それは本当かい?」
「はい!」
自信を持って断言すればエマさんは軽く目を見開いた。
「セリナちゃんがそこまで言うなら、世間で言われてる寵姫ローザは悪女って話は国王陛下の寵愛をやっかんで捏造された物なのかもしれないねぇ……」
まだ半信半疑といった表情ながら、エマさんはひとまずローザについての悪評を頭から信じることはやめてくれたようで、私はホッと胸をなでおろした。




