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「ああ、セリナは知らないでしょうけど獣人は、自分たちの文化や習慣を優先して暮らしてるのよ」


「具体的にどんな感じなの?」


「そうねぇ。なんて言ったらいいかしら……。肉食の獣人は肉ばっかり食べたり、草食の獣人は植物ばかり食べたりとかしてるらしいわ」


「ああ、食生活の違いは大きいわね」


「そうよ。それも氷山の一角なんだから! まぁ、結婚でもしない限りは気にならないと思うけど……」


「ふーん」


 まぁ、同じ人間同士でも国や文化が違えば、いさかいが起こることもある。まして種族が違えばその差は大きいのだろうと納得した。私としてもよく分からない獣人より、普通の人間が婚約者に決まったと聞いてホッとしている部分もある。


 両親は私とオブシディア侯爵家子息、クラレンスとの婚約を喜んでいた。まぁ、私を大事にしてくれてる両親がさんざん悩んだ結果、これぞと思う相手を選んでくれたのだから、貴族令嬢として生まれた以上は仕方ないのだろうなと、やや達観した気持ちでいた。


 ちなみにオブシディア侯爵家の子息クラレンスは国外に留学中ということで、本人との顔合わせは出来なかった。


 親同士の口約束とはいえ、私の婚約者が無事に決まって両親も一安心していたある晩、私は夢を見た。離れて暮らしている、おじいさまがベッドに寝込んで起き上がれず、苦悶の表情を浮かべているという夢だ。



「……なんで、こんな夢を見てしまったんだろう?」


不思議に思いながらベッドを出て、お母さまに「昨晩、おじい様の夢を見たんだけど……」と伝えると、母は少し困り顔で微笑んだ。


「あら、おじい様の夢を見るなんて、おじい様に会いたいの?」


「いや、そういうわけじゃ……」



 正直、夢で見るまで、たまにしか会わない祖父の存在をほとんど気にせずに過ごしていた。万が一、本当に祖父の身に何かあれば、祖母から連絡があるはずだが、それも無い。まぁ、離れて暮らす肉親のことだ。夢に見ることもあるだろうと思った。


 そんなことがあった一週間後、今度は祖母の夢を見た。夢の中のおばあ様は、まゆをしかめながら口に指を突っ込み、口の中から真っ白な入れ歯を取り出した。


 そういえばお婆様は、入れ歯をしていたことを思い出した。しかし、祖母が口から取り出した入れ歯は普段、使っていた物ではない。


 全部のパーツが真っ白の陶器製で、いかにも重そうな見たことがないタイプの入れ歯だった。陶器製の入れ歯を見つめながらため息をつく祖母の後ろにベッドが見える。


 そのベッドの下に、祖母が愛用していた『陶器製ではない入れ歯』が落ちている光景が見えた所で目が覚めた。

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