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 以前、後宮でローザを背後から燭台で強打して意識を失った所で寵妃の部屋に火をつけた時。そのまま立ち去るつもりだったけど、ローザの首元に大粒のサファイアがあしらわれた首飾りが輝いているのが見えて、ローザはともかく、あれほど見事な大粒のサファイアを炎に晒すのは惜しいと思ってしまった。


 ローザの侍女が戻って来そうだと告げられ、慌ててローザから首飾りを取って寵妃の部屋から立ち去った。部屋を出る前にカーテンやソファ、木製テーブルなど複数個所に火魔法を放ったから侍女が戻った所でローザを助けられる訳が無いと確信したというのに、まさかレオン陛下が自ら火中からローザを助け出しているなんて想定していなかった。


 焼死したローザの遺体が部屋から出て、後宮が混乱している内に私の侍女に使いと称してサファイアの首飾りを持たせて実家に送り、首飾りから宝石を抜き取ってしまえば足はつかないと思っていたのに、まさかローザが生きていて首飾りの紛失にいち早く気付き、迅速に捜索されるなんて計算外だった。


 そもそも、あのサファイアの首飾りは先の王太后が王太子の妻となる者に贈るよう渡された物なのだから元々、私の為に用意された首飾りだった。それをあの忌々しいローザが横取りしていったというのに何故、私が盗んだなどと疑いをかけられないといけないのか。


 とはいえ、状況的に寵姫ローザが害された際の物証となりえるサファイアの首飾りを私が所持していたのは、まずかったのでとっさに「首飾りは廊下で拾った」と主張して難を逃れた。


 実際、ローザから首飾りを取った犯人がそれを廊下に落としていく可能性や、ローザ自身が歩いてる途中に首飾りを落としていた可能性だってあるのだと強く主張すれば、私を犯人だとは考えたくないリオネーラ王太后の手前、レオン陛下は強く追及できなかった。




 とにかく私が王妃になった後、レオン陛下とリオネーラ王太后の暗殺に関しては疑惑がこちらにかからないように、寵妃ローザがレオン陛下とリオネーラ王太后を殺害したということにすれば以前、後宮で殺害し損なった忌々しいローザも処刑できてちょうど良い。


 用意した赤子が大きくなる前に、私が獅子王族から王配を迎えて子供を作り、女王となった私と王配の子供を第二王子としてから時期を見て第一王子を殺害すれば、無事に私の子を世継ぎの王太子に出来る。


「あと一歩で王妃になれかどうか決まるんだから、打てる手は全て打たないとね」


 ソファに座りメイドの入れたお茶をあおって咽喉を潤した後、呟けば父と母も笑みを浮かべて頷いた。


「レオン陛下は寵姫ローザを王妃にしたいと主張しているが、重臣の多くが反対しているのだ。独断で寵姫ローザとの結婚を強行できるものではない。まして寵姫ローザには何の後ろ盾も無いのだからな」


「こういう事は根回しが大事ですもの。その点、私たちは宰相閣下と親戚関係という利点があるわ」

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